第22話 ノンノンサウンド
ある早番の仕事終わり、柴田が帰寮し自室に入ろうとしたとき、隣の部屋のドアに張り紙がしてあるのを見つけた。
それには──。
『戻ったらチームリーダーに連絡を入れて下さい』
と書かれていた。
──何のことかな?
思った柴田は、自室でも隣の気配を窺った。
無論、収納スペースで仕切られた部屋だから、窺うまでもなく筒抜けなのだが・・
しかしそのまま夜となり、寝ようかという時間になっても隣人が戻った気配はなかった。
次の日も同じで、隣人は部屋に戻っていないと思われた。
柴田は仕事の休憩時間に、その事を皆に話した。
「それは失踪したパターンじゃね?」
坂上が言った。
「それいつからの話?」
若本が聞く。
「紙が貼ってあったのは一昨日ですけど、その前から静かだったような気もしますね」
柴田は思い出し考えながら答えた。
「あー、そういえば何か来なくなったって話聞いたわ・・」
黒井が、別チームの者から聞いた休んでいる者のことを話した。
あとで黒井が話を聞いてきて、件の欠勤者が柴田の隣の部屋の人物で、ほぼ間違いないだろうという結論となった。
柴田と隣人に接点は殆どない。
一度だけ──。
「割り箸とか余ってないですか?」
と、尋ねられて一膳譲ったことがある。それだけだ。
なんにせよ、それから柴田は壁のない出玄寮で、極めて静かで快適な時間を過ごしていた。
しかし十日ぐらい経って、隣人は突然戻って来た。
それを職場で話すと。
「いや~、そんなパターン聞いた事ないわ」
「すごい珍しい。普通、いなくなったら、それまでよ」
「たぶん。有給って事で処理したんじゃないですかね?」
などと、それなりによき話題となったようだった。
ともあれ──。
柴田としては快適生活が失われて、がっかりだった・・




