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キカンコ  作者: テンチョウ


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21/23

第21話 オコオコバスタイム

「おはよございまーす」

 柴田が出勤して休憩室に入ると。

「おっ、おはよう──。いや~、見てないっすね。だって俺、向こうの風呂行ってますから」

 坂上が黒井に言っていた。

「あっ、そうか。あれ、柴田は見た事あるか? 風呂にさ、でっかい袋持ってくる奴」

 黒井が聞いた。

「ふくろ?」

「ビニール袋の中にシャンプーとか入れて・・」

 ここまで黒井が言って。

「あっ──。見ました! はい、でっかい袋。あの、あれ、ゴミ袋ですよね?」

 柴田はようやっと思い出した。


 黒井と柴田は認識を共有できたが、他の皆はポカーンとしているので。


「えっと、普通シャンプーだの何だのって、風呂桶とか、風呂用のプラ籠とかに入れて持ち運ぶじゃないですか。それをゴミ袋に入れて来る人がいるんです。それも、何か四十五リットルぐらいのでっかい袋なんですよ。で、それを風呂場の床にバサーッと置くんですよ」

 柴田は自身が見た、件の風呂場の人物について説明した。

「ええぇ・・ なにそれ」

 寮生じゃなくとも、その異常性は伝わったようだった。

「よしんば袋だとしても、もっと小さくて手頃なのがあるやろっていう」

 柴田は見たときを思いだし、ツッコみの言葉を入れた。

 それで黒井も思い出したのか。

「あれさ。サンタクロースがプレゼント配るみたいな感じでシャンプー取り出してたぞ」

 とか言うものだから。

「すげえなぁ」

 坂上も言って笑いが起きた。


「で、柴田は他になんか見た、そいつのこと?」

 黒井が問う。

「いえ。ほとんど入れ替わりぐらいで出たんで、袋しか見てないですね」

「そいつさ、桶もってねーのよ。で、どうすんだって思ってたら、風呂場の隅にあるゴミ箱あるだろ。あれ取ってきて、それ使ってバシャバシャやり出したんだよ」

 黒井の言葉に皆、眉を(ひそ)めた。

「俺も、もう上がるとこだったから何も言わなかったけど、あとで管理人に話したら、そんな人がいるんですかって驚いてたわ」

「そりゃ驚きますわ」

 また坂上が言って笑いが発生した。




 その日の帰寮後──。

 特に示し合わせた訳ではないが、柴田は黒井と同じタイミングで風呂に入った。

 しばらくは何事もなく時間が過ぎたが、例の袋男が入ってきて状況は一変した。

「オメエ! それゴミ箱だぞ! 何考えてんだよ! 頭おかしいのかよ!」

 黒井が袋男に対してブチ切れ出したのだ。


 柴田は職場での黒井の癇癖(かんぺき)を見ているから、慣れたものだが、風呂場にいた他の人達は戦々恐々としていた。

 それは袋男も同じで、黒井に対して恐縮して。

「すんません。忘れてしまって・・」

 言い訳してたが。

「オメエ、この間もゴミ箱使ってただろ! 何が忘れただよ。それ目当てにしてんじゃねーぞ!」

 益々、ブチ切れてしまった。


 以降、男の証言から部屋には風呂桶(寮、備え付けの品)があることが判明し、今度忘れたらタダじゃ置かんぞという黒井の脅し文句が出て、説教は終わった。




 その後、袋男は、ちゃんと桶を持ってくるようになった。

 柴田は。

──黒井さんみたいな人も必要だな。

 強面(こわもて)の喧嘩っ早い人も、寮のような共同生活体には重要かも知れないと思ったりした。


 しかるに、袋男は何故かゴミ袋だけはやめず・・

「オメエ! その袋もいい加減にしろよ!」

 また、黒井がブチ切れていた。

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