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キカンコ  作者: テンチョウ


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第19話 ミズミズシャワー

 ある日、出玄(デゲン)寮の風呂がぶっ壊れた。

 正確には、シャワーが水しか出なくなってしまった。


 今更ながらになるが出玄寮は二棟建てである。その内、柴田のいる建物にある風呂でトラブルが発生したわけだ。

 急遽、寮では別棟(べつむね)にある風呂を使うよう通達が出た。

 しかし、浴槽の追い炊きのようなシステムは顕在で、シャワーなしでいいなら入ってもいいよという、何ともいい加減なお知らせでもあった。


 多くの者は、別棟の風呂に向かった。

 また今更になるが、風呂に入っても入浴しない者は結構いる。彼らはシャワーだけで済ませるのだ。彼らは必然的に一択となった。

 柴田の知る者では坂上がそうで。

「向こうから戻ってくるとき、なんか温泉行ってきたような気分になる」

 と、よくわからな事を言っていた。



 一方少数派、シャワーなしを選んだのは柴田と黒井だった。

 シャワーなしでどうするのかというと──。

 湯船に対して椅子を置いて座り、風呂桶でお湯をすくってバサーッと掛けてシャワー代わりにしているのだ。

 頭や体を洗って、またバサーッと掛けて流す。とても原始的な方法である。

 そんなことをすれば湯船のお湯がどんどんなくなるので、水道の蛇口は常に軽く開いた状態にされていて、追い炊きのそれで温度をキープしている感じである。



 いずれにしても、湯船に浸かって疲れを癒やすなんて事はできなくなった。


 で、壊れた物がいつ直るのかというと、ボイラーを丸ごと交換するとか何とかで、三週間近く掛かるという話だった。


 柴田としては、とんでもない貧乏クジに当たった感だったが、怪我の功名か?

 共に、かけ湯風呂をするようになった黒井と、割と話すようになった。

 黒井は、よく怒鳴る感じの人で、ぱっと見も強面(こわもて)であり、柴田は正直なところ少々苦手としていた。しかし、同じ境遇を体験することで、互いに不思議と親近感を持つようになったようだった。

──まぁ、こういうのも悪くない。

 柴田は、頭からお湯を被りながら思った。

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