第18話 ムシムシミッドナイト
遅番時の出玄寮へのバスは、食堂でゆっくり夜食を食っても十分間に合う。
しかしながら柴田は、このところ早めに行って窓側の席を確保する事を続けていた。
どういう話の流れだったか、若本が寮に興味を持って、柴田に色々聞いてきた。彼は自宅から通っているので、寮住まいが多い黒井班(仮)では珍しい存在だった。
「出発は零時十分なんですけど、バス自体は四十五分過ぎには来るんですよ。でも来る前から十人ぐらいは並んでるんです。最近は自分も、そこに並んで、窓側に座るんです」
柴田は、思い出し考えながら帰りの状況を説明した。
「やっぱ窓の方がイイとかあんの?」
若本は一般的な傾向として解釈したようだ。
「あー。そういう訳じゃなくて、バスは停車してるとエンジン切るんですよ。で、空調が止まるんです。で、暑いじゃないですか。なのに誰も窓開けないんです。だから空気が籠もっちゃって、人数が増えてくると湿度も増しちゃって。いや、暑いだろって思うんですけど、ホント窓開けないんです。だから、誰も開けんのなら、自分で開けるしかないっていうんで」
柴田は窓を開ける動作をしながら語った。
「ハハッ。なんで開けないんだろうね?」
「わかんないっす。なんか、皆、スマホ弄るのに忙しくて、温度とか湿度とか気にしてないのかも知れないです」
「ハハハッ──」
若本は笑っていた。
「いや、暑いと思うんですけどねー」
柴田は首を傾げるようにした。
「それで出発するときにエンジン掛ける感じ?」
「そうですね。一分前ぐらいですかね。それでやっと空調が動いて、窓を閉めるっていう」
「何分ぐらいで着くの?」
「十五分ぐらいですね。でも着いたら今度は降りるのが後の方になるという」
「なるほどねー。でも、だったらギリギリで行けば空調入ってて降りるのも早くなるんじゃないの?」
「だと、席のないパターンがあるんです。そうなると十分遅れの、もう一台の方に乗るしかなくなるんです。それで帰ってだと、すぐに風呂に入りたいんですけど、遅番帰りは風呂混むんですよ。で、風呂も一杯なパターンがあって、後発のバスにはあんまり乗りたくないという」
「ハハッ。色々あるんだー」
若本の感想に。
「はい。色々、大変ですよ・・」
柴田は、しみじみと言った。




