第17話 ブリブリトイレマン
「これ地元の限定品なんで、どうぞもらって下さい」
柴田は水谷から缶コーヒーを受け取った。
「あ・・ ありがとうございます」
「いえ。柴田さんには、お世話になってますんで」
神妙に返した柴田に、水谷は言った。
缶コーヒーは某有名メーカーの有名ブランドであるが、見ると確かに『北海道限定』の文字が書かれている。
連休中に実家に戻ってとか、そんなのだろうと思われた。
しかるに、そこは水谷である。
「どうっすかね? 今、ネットで何でも買えますからね」
チームの一人は歯医者の件に鑑みたか、不審の音を発していた。
「あー」
そう言われちゃうと、さもありなんではあるが──。それはそれで面倒にも思えて、柴田は曖昧な感じで返した。
休みのときの話を聞くに、地元民以外の者は大概、実家に帰ったみたいだった。
坂上などは、バイクで九州の実家まで帰ったらしく。
「それって千キロぐらいあるんじゃないですか!?」
「南の方だから、もっとあるよ」
「うわー」
なんかスゴい話をしていた。
黒井は仲の良い寮生と温泉に行ったそうだ。
皆、それなりに充実した休暇を満喫していたからであろう。
「部屋で、ずっとゴロゴロしてました」
柴田の言は、軽く顰蹙を買ってしまった・・
連休明けからしばらくは、それまで通りの感じで仕事をしていたが、ある日チーム内で配置換えが実行され、柴田のいる黒井班(仮)から水谷が抜け、若本が加わった。
水谷は、以前何度か応援に行った所の担当となったようだ。
──せっかく覚えたのにな。
柴田としては水谷に教えた手前、またアドレスや部品ごとの置き方など、覚え直しになるであろう彼を不憫に思った。
柴田は若本に教えることになったが──。
若本は柴田から見て、かなり年上で、同時に先輩でもあるから、何とも言えないやりにくさを感じていた。
しかし、この若本。事あるごとに──。
「ちょっとトイレ行ってくる」
と、トイレに向かう。
あまりに多いので黒井が。
「なに、頻尿なの?」
ド直球の質問をすると。
「いや、ウンコしてますから」
と返ってきた。
にわかには信じ難いことであったが、話しぶりから、本当にしているようであった。
若本曰く──。
「俺、ラインにいたときもよくヘルプ呼んで『またウンコですか』とか言われてた」
とのことだった。
そこで黒井が。
「もうトイレマンだな」
またしてもド直球の渾名を付けていた。
柴田としては。
──もう少し手心を・・
と思わんでもなかったが、若本は不思議と誇らしげにしていた。




