第15話 パンパンストック
柴田のやってる作業は部品供給であり、実際に車を作ってるラインとは、直接の関わり合いはない。
さはさりながら、このラインがきちんと動いているかどうかは、重要な問題となってくる。
早番のこの日、ラインが止まった。
通常、どこかでイレギュラーが発生したりすれば、ラインは止められ。
「○○取り付け工程にて、ラインストップしています」
と、館内放送で『コイツらのせいでっせ』と言わんばかりの周知がされる。
柴田としては。
──ある意味、羞恥違いじゃないか?
と、思わんでもなかった。
ともあれ。柴田の仕事は止まらない。彼はラインが止まっている間も、せっせと部品を運び続けた。無論、柴田のチームの皆も同じである。
いつものこと──、とまでは言うまいが、間間ある事でもあったから、柴田もこの状況を特に気にすることはなかった。
ところが、止まったラインがいつまで経っても動かない。
五分や十分じゃない。もうず~と動かないのだ。
それでも部品供給は止まらない。止められない。結果──。
「もう、置くところないじゃん」
供給先のストックスペースがいっぱいになってしまった。
それは柴田の担当箇所だけの話ではなく、チーム全体。おそらく工場全体として同じ事態になっていると思われた。
集積基地にも台車にガッツリ積まれた状態で部品がいっぱいである。
ラインが止まってるのだから、部品も消費されなく、減りようがない。
しかるに、部品の納入は止まらない。
向こうは決められた時間通りにトラックで運んできている。もうどんどん運んでくる。
こうなると柴田たちの仕事は部品を配ることではなく、大量の台車を整理することになってくる。ラインが動いた際に、本来の順番通りに供給するためだ。
所狭しと言うが、本当にあるスペースを無駄にしないよう、詰めて詰めて、集積基地はパンパンの状態になった。
そのままライン停止状態でプチ休憩の時間になり、休憩開け二十分ぐらいしてから、ようやっとラインは動き出した。
少しずつ部品を捌いていくが、同時に納入もあるので、常にストック過多な状態での作業となった。
──まるでデフラグだな。
ハードディスク時代のファイル整理を人間サイズでやってる感を柴田は味わった。
フルストックを維持したまま遅番との引き継ぎの時間になり。
「うわー。これやばいっすね・・」
現場に来た逆番の者もそう洩らしていた。
「でも、夜やる事出来たんで、そう考えればマシかな・・」
などとも言っていた。
このカオスから解放される意味で、早番で良かったのか? それとも暇疲れしなくて済みそうな遅番が良かったのか?
柴田には、どっちがいいのか判断が付きかねた──。




