第13話 ホラホラデンティスト
遅番の朝礼。いや、正しくは昼礼になるのだろうが、作業前の出勤確認と連絡事項のとき、サブリーダーが。
「えー。水谷は欠勤です。なんか歯医者に行きたくて、予約が取れないからとかいうんで、休みたいと連絡がありました」
と報告した。
──う~ん・・ なんだかな~。
柴田は首を傾げる。
歯医者など午前中なら割と簡単に予約が取れそうな気がする。よしんば午後のみしか無理だったとしても、あらかじめチームに相談してしかるべき話である。
このちぐはぐさというか、要領の悪さが、頑なに台車を逆向きに押そうとする水谷の姿とダブって。
──らしいといえば、らしい・・
妙な納得感をもたらしていた。
とまれ──。一人いないのねって話で終わるかと思ったら・・
チームの一人が。
「俺、パチンコ屋で見ましたけど──。水谷のこと」
と、言い出した。
「それって、いつ? 今日の話?」
坂上が聞く。
「今日です。一時ぐらい。俺、もう帰ろうって思ったら見かけたんで。たぶん間違いないです」
「オイオイ、マジかよ──」
「あの野郎~、サボりか?」
言ったのは黒井だ。彼はやや癇癖なところがあり、サブリーダーも黒井の機嫌か何かを察したのか。
「まぁ、それはまだわかりませんから。このことについては、時間を作って聞いてみますんで。とりあえず今日はいないという事で、よろしくお願いします」
なだめるような感じで言っていた。
黒井の方も、気を使われてるのがわかったのか、それ以上何かを言う事はなかった。
後日、水谷に聞き取りが行われたようで、パチンコ屋で見たという証言があることを指摘すると、歯医者に云々というのは嘘であったと吐いた。
サブリーダーが黒井と話してるのを柴田も聞いたが、そこで。
「魔が差したって言ってました」
「なにが、魔が差したよ。ふざけやがって──」
「まぁ、厳重注意ってことで」
そんなやり取りがなされていた。
──休んでもいいみたいな、あれかも。
柴田は思った。
このところ、チームの人間が休んだり、遅刻したりというのが続いた。
無論それは理由があることであるが、どこか、理由さえあればOKみたいな認知が形成されてたのではないかと考えた。
斯くいう柴田も薄ら感じていた程なので、トンチンカンな水谷ならば、なる可くしてなったという感であった。
なんにせよ。この日は別班に有給をとった者がいて、水谷はそっちの応援に行って柴田たちとは絡みはなかった。
柴田は密かに。
──黒井さんと接点作らないようにしてんじゃないのか?
サブリーダーたちが、トラブらないよう配慮した可能性を想像していた。




