第12話 ジコジコクラッシュ
早番のある日、柴田のチームの一人が遅刻した。
朝礼のときに交通事故にあったという連絡が来たという報告があった。
業務開始から三時間ぐらい経ったころ彼は出社したが、首にコルセットを巻いており、曰く。
「出会い頭にぶつかった」
と、車同士の事故で、エアバッグが出るほどの衝撃があり、首を痛めたとの事だった。
「もう廃車。完全に廃車」
と、自身の車が駄目になったと語っていた。
数日後、先の事故を受け、安全教育という名のグループディスカッションが行われた。
この自動車工場では定期的に施行されており、実在の事故記録を元に、あーだこーだ言って、その意見を用紙に書くのだが──。
今回は、実例も実例。チームメンバーの実体験がその事故資料となった。
どうやらここで働いている限り、事故った内容は、斯様な形で情報共有される運命のようだ。
──もしかして、これまでのも?
過去、柴田がやった安全教育の資料も、ひょっとしたら過去の従業員の実例が含まれていたのかも知れないと想像した。
「でも今回は過失低いから良かったよな・・」
柴田と同グループになった先輩が言った。
──保険の話かな?
とか、思うのが精一杯だったが。
「これ過失あると、契約更新できなくなるからな」
──!
「それって、自動車会社的なアレですか?」
「たぶんそーだと思うよ。知らねーけど。相手死んだり、歩行者が~とかだと百パーアウトって感じだな」
「あー。さもありなんですね」
たぶん社員だと解雇には出来ないだろうが、そこは期間工だ。次の更新が無しになるだけという、世知辛く、不安定な現実がある。
柴田は交通事故の話から、社会の縮図の一端を見た思いがした。




