第11話 ピッピッキャッシュレス
食堂の脇には売店とカフェ?がある。
売店はお菓子やティッシュみたいな雑貨が売っていて、カフェの方はコーヒーとかそれ系の飲み物を提供するコーナーである。
支払いは現金の他、社員証を使って決済する。要は給料天引きというやつだ。
ちなみに、今更ながらになるが、食堂のメニューも社員証で決済する仕組みだ。
どういう流れだったか、給与明細の話になり。
「これでピッとやるとさ、明細から引かれるじゃん。で、かみさんが『何か減ってんだけど』とか言うからさ、焦っちゃって。色々引かれるんだよって誤魔化してさ──」
妻子持ちの先輩がそんな事を言っていた。
彼はお小遣い制で、手持ちの現金を節約するため、社員証決済を利用し、お菓子とアイスコーヒーを日々確保していたのだ。
「あー。でも、毎月微妙に違うだろうから、気付かれちゃうんじゃないですか」
柴田が言うと。
「あっ、確かに・・ その辺も気を付けるわ」
などと返していた。
その先輩がある日、休んだ。
理由は、娘さんがスケボーで転んで、それで病院に連れて行くとかだった。
翌日聞くと、痛い痛いと泣いて大変だった話をしていた。
工場ではマニュアルというか、禁止事項として、台車の上には乗らないことが定められていた。柴田はふと、それを思いだし。
──どっかのアホが遊んで転けたとかじゃ・・
スケボーの話を聞いて、ルールが出来た理由として、そんなことを想像した。
なんにせよ。この日も先輩は、お菓子とアイスコーヒーを決済していた。




