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だるまさんは転ばない 〜蜜柑山 博のリトプス1施工日誌〜  作者: 蘭鍾馗


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【改良ダリアン暦1年105月22日】 プロジェクト ダンジョン その4

「油よ。採取した氷柱の中に炭化水素が含まれていたの。」



 あの、それってもしかして。

「石油かもね。とりあえずフローレスに報告に行きましょ。」


 ◇


「今、アリ君に分析してもらってる所だけど、炭素数5~7位の炭化水素が含まれてるみたい。」


 アリシアさんと二人で、フローレス先生の研究室に押しかけて、この間のダンジョンで採取した氷柱の分析結果の速報を伝える。いや、僕要らなかったんじゃない?


「まさにナフサじゃないか。」


「そうなの。生物由来か地質由来かはまだ分からないけどね。」

「それはどうやって見分ける?」

「見分ける方法がある訳じゃないけど、含まれる物質の種類が少なければ生物由来の可能性が高くなるわ。」

「なるほど、生物が作る代謝物質なら、そんなに何種類も出来ないだろうということだね。」

「そういうこと。あとはさらに分析を進めて、生物の痕跡が出るかどうか。」

「痕跡とは、例えば?」

「一番良いのは生物本体。細胞の欠片ね。そうでなければ核酸の切れ端とか、アミノ酸とか。」


「なるほど、分かった。これは採掘計画は一旦中止だな。当分の間は、地質学と生物学の研究対象だ。もっとサンプル数を増やして、徹底的に調べて行こう。」


 ◇


 大変なことになった。


 もしかしたら、火星の生命が初めて確認されるかも知れない。

 生物由来でなかったとしても、火星の地下で石油が生成されたとなれば、これまでの火星の形成や環境の変遷のストーリーが大きく変わるかも知れない。


 とりあえず大発見だ。


 ◇


「ところで、ミッキーはなんでここに?」

 フローレス先生まで。

「ああ、なんか勢いで私が連れてきちゃったの。」

 勢いでかよ。

「そうか。まあでも君も今後の調査の当事者だからね。近々また調査の事で相談させてもらうよ。よろしくお願いします。」

 こちらこそ、よろしくお願いします。


 ◇


 その後、都合3回の調査をかけた。


 ダンジョンの奥は、狭窄部からさらに200mほどが確認できた。その先にも空間は続いているのだが、調査用ドローンが入れたのはそこまでだった。

 全部で12か所のボーリングを行い、そのすべてで厚い氷の層が確認された。

 油が混じっていたサンプルは、12か所中11か所。ほぼ全ての地点で油分が検出された。


 まあ、さすがにこれでは飲用にする気が起きない。生活用水に使うにも油分はいろいろと不都合を招きかねない。それよりも、この油分が流れてきた汚染源(?)があるはずだ。もしそこから石油が採掘できたら、色々なものの原料に出来る。プラスチックが作れるかも知れない。大気中に酸素がないから、さすがに土木機械や車両の燃料としては使えないが’(使える機械や車両もないけど)、コロニー内でガスコンロや給湯器が使えるようになるかも知れない。こうした熱源としては、電気はいささか効率が悪いから、代替の熱源として合理的な選択肢になりうる。


 ◇


 それで、生命の痕跡は見つかったのかって?


 残念ながら、今の所まだ見つかってはいない。

 でも、分析結果を見たアリシアさんは、炭化水素の種類数が少なく、生物由来の可能性は十分にあると言っていた。


 調査はまだ続く。

 もうすぐ、世紀の発見があるかも知れない。

 とりあえず、僕はそれを楽しみに待ちたい。



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