【改良ダリアン暦1年118月25日】明けない夜のために その3
砂嵐の届かないオリンポス山中腹に設置された大型太陽光発電施設「ブルーローズ」のおかげで、例の「明けない夜」の間も、内構工事については工事の実施が可能になった。だから、「明けない夜」の間もスフェア周りの工事は粛々と進んでゆく。
だが、工種によっては、わざわざ「明けない夜」を待って実施される工事もある。採光ドームと採光窓をつなぐ光ファイバー束の設置工事だ。
何故わざわざ「明けない夜」にこの工事を行うのか?
◇
「何でですか?」
新任の内構工事担当、ラルフ君が僕に質問をする。
何でだと思う?
「えっ?何でかって……うーん。わかりません。」
ギブアップ早いな。もう少し考えようよ。
「うーん………………もしかして、太陽光の明るさがかえって邪魔になるから?」
はい正解。
「えっ正解ですか?」
あー、理由まで考えずに当てずっぽうで答えたな?
「はい正解です。」
…………。
しょうがないな。じゃあ説明してあげるよ。
光ファイバー束の末端から入った光は、ファイバー内で全反射して全部反対側の末端に届くでしょ?そうすると、設置が進むにつれて、受光側の採光窓に沢山の光が入ってくる。その光量はかなりのものだから、採光窓周辺が明るくなりすぎて、かえって作業がしにくくなるんだよ。その点、工事用照明は設置が進んでも明るさは変わらないし、明るさも向きも好きなようにコントロールできる。
「なるほど。」
まあ、光ファイバー束の末端に蓋をするとか、採光ドームを何かで覆うとかして太陽光を遮ることもできるけど、それをやると工程がひと手間増えてしまう。ただでさえ工程が予定より遅れてるからね。だから夜間工事をするのがいいんだけど、夜間工事が連続すると作業員の負担が大きくなってしまうでしょ?だから、昼間も暗い「明けない夜」は、光ファイバー束の設置工事には都合がいいんだよ。
「そうか!」
というわけで、光ファイバー束の設置工事が「明けない夜」の期間中にできるように、工事工程を今調整している所なんだよ。
「さすがミッキーさん。」
褒めてもなんにも出てこないよー。
◇
となると、明けない夜が来るまでに、光ファイバー束の設置工事が始められる準備をしなければいけない、ということになる。では具体的に何を準備しなければいけないか?
それは「足場」だ。
と言っても、必要な足場を全部組んでしまうと、クレーンや高所作業車なんかが動くためのスペースがなくなってしまうので、まずはスフェアのてっぺん近くにだけ足場を組んで、その上に平らなデッキみたいなヤード兼用の作業スペースを作る。そしてこのデッキの一部は、完成後も巡視路として残される。
◇
という訳で最近暇なラウラさん、再来週あたりから足場を組み始めるよ。
また忙しくなるんじゃないかな。




