番外編:才とは何か
試験が終わり1日経っていた
「学院長、受験生の採点が終わりました。こちらが資料になります」
「ああ、そこに置いておいておくれ」
今年は豊作じゃな
魔術師だけではなく多くの魔戦士や魔剣士などもおるようだ
「失礼を承知でお聞きしますが、ノア・リクヴァという者についてですが」
「ああ、その子がどうしたのじゃ」
「彼は魔術が使えないと話していましたが本当なのですか…」
「じゃろうな。」
「ではなぜ、そのような者を」
「わしがあの子に可能性を感じた。それだけじゃ」
二人の間に沈黙が生まれる
「…まだ仕事があるので失礼します」
「ああ、ご苦労じゃった」
一人になった学長室では窓から入ってくる風の音のみがする
「…よかったのう。お主の弟子は試験を合格したぞ」
窓の方に目をやると鳥が動いている
「ふん、俺の弟子を横取りするような真似をしやがって」
「ほう、それも魔導具か?」
「話を逸らすな。ハヌス」
作り物の鳥からは懐かしい声がする
「だが、あの子の背を押したのはお前じゃろ」
「ノアには新しい環境も必要という考えだが、随分ジジ臭い喋り方だな」
「お主と違い、わしは純粋な人間じゃからな」
「別に俺もエルフの血が混ざっているとはいえ、人間の血の方が濃いぞ」
「それよりソルネンよ。何か用があるのだろう」
「ああ、ハヌスはあの子を…ノアをどう思う?」
「…魔術が使えぬが、知識も身体能力も悪くはなく人柄も良い…いい子じゃな」
「ふふ…あははは!」
「何がおかしい」
「お前はあの子を…その目で見たんだよな。それなのに気が付かないとは…くく、はは」
ソルネンは嬉しそうに笑っている
「お前が衰えたのか、あの子の隠すのが上手いのか。まぁどっちでもいい
お前でも気が付かないのだな。あの子の才…狂気を」
「…わしから見てあの子は普通の子だったが」
「そうだな…例えばの話だが、自身の腕に治しても魔術に影響が出る後遺症が残る傷ができるとして、
お前ならどうする?」
「…完全に治らぬのならせめて傷だけでも治すな」
「よかった、それが普通だよな。俺が間違えているわけじゃなかったよな」
「あの子はどんな選択を…」
「そうだな…ノアは後遺症が残ると知った次の日に自身でその腕を切り落とし、
腕の代わりになる魔導具を作ったってところかな」
「そんな事をなぜあんな子が…」
「例えと言っただろう。だが似た様なことはしたがな。」
「…そういえば、お主に手紙を送ったのだが」
「ああ、読んだとも、随分ふざけたことが書いたあったが…
返事は…まぁ今年は無理だが来年には引き受けてやれるはずだ」
「わかった、それでもう用はないのか」
「ああ、用はもう済んだが、最後に一つだけ
ノアの魔力は外部へ放出されてもすぐに消えるが、物体に対しての魔力付与が長期で安定している
どうやらあの子の魔力の性質はどうやら魔術より呪術に近いみたいだ」
「呪術?確か大昔の魔法の時代にあったという?」
「まぁあくまで性質だけな。そして面白い事にノアは自覚はないがその性質を最大限発揮できている
魔術師としては凡人以下だが、魔導具士としては天才だな。」
「それで何を伝えたいのじゃ」
「魔法は願いや意志に強く左右される。だがノアの魔法はまだ成長途中だ
あの子の成長次第でそれは呪いにもなり得るだろう。…つまりノアをしばらく預ける為の警告だ」
「任せてくれソルネン」
「頼んだ。それとこの魔導具はノアに渡しておいてくれ。じゃあな」
銀の鳥は動かなくなった。
今の時代に魔法を扱えるものは少ない
魔術の学院であの子はどの様な魔法に成長するのだろう。
読んでいただきありがとうございました。




