九十八話目
私は千波弥から渡された分をチャチャッと食べ終えて、時間を持て余した。みんなはまだ食べているから話しかけるのは気が引ける。だから、私はポケットからスマホを取り出していじり始めた。
十分くらい適当に色々と見てたら、隣の癒音ちゃんに肩を叩かれた。スマホから目を離して机の上を見てみると、いつの間にか無くなっていた。
「移動?」
「そうよ。優月は先にフードコートから出ておいて。私達はそれぞれ返却口に返しに行くから」
「ん。分かった」
私は千波弥達と別れて先にフードコートから出る。私はフードコートから出て、みんなが来るのを待つ。
この休憩の間にお手洗いに行っておかないとな。
そんなことをボーッと考えていると、三人が戻ってきた。
すると、早速とばかりに水雫ちゃんに手を握られた。
「優月先輩、お土産コーナー見に行きましょう!」
「えっ?待っ・・・!」
私の静止の声は間に合わず、水雫ちゃんに手を引かれてお土産コーナーの方に連れていかれる。千波弥は苦笑いしながら私達の後を着いてくる。癒音ちゃんはどこか不機嫌そうに。
私の手を引いて水雫ちゃんはお土産コーナーにやってきた。
「急になに!?確かにサービスエリアに来てお土産コーナーが気になるのは分かるけど・・・!」
「だったらいいじゃないですか!それとも何か問題がありましたか?」
「うっ・・・。その体勢でその顔はズルいよ・・・」
「?何言ってるんですか?」
水雫ちゃんは私より背が低いからか、私のことを見ると大抵上目遣いで見つめてくる。しかも、その状態から目を潤ませてくるから余計に断れなくなる。
「諦めなさい、優月」
「えぇ・・・・・・。千波弥、そんなこと言わないでよ・・・」
「いいな〜、水雫ちゃん」
「何が!?待って、本当に何がいいの!?」
「・・・秘密」
「そこで切るのやめてくれない!?とても気になるから!」
癒音ちゃんは人差し指を口に当てて少し考えるような仕草をしてから、艶やかな表情で返してきた。
「先輩、先輩。やっぱりですけど、お土産となるともみじ饅頭とか饅頭系が多いような気がしますね」
「まぁ、広島と岡山はそれが多いからね。仕方ないのじゃないかしら?」
「岡山だと桃太郎伝説とか、広島といえばもみじ饅頭ってのはあるよね」
「ちなみに、そこら辺の教育はどうなってるんですか?大企業の娘さん」
「各県の主要なお土産とか有名なものは一通り言えるよ」
「流石・・・・・・企業の娘。根本が運送から覚えさせられたのかしら?」
「まぁ、そんなところかな。璃空も言えるよ。私と違って天才だからね」
私はあの子のことを思い出す。なんというか天真爛漫が合ってそうな子。少し関わった程度だけどそんな印象がある。
「帰りしにも下りの方のサービスエリアに行きそうですよね〜」
「行くだろうけど・・・どうしたの?」
「いや、いつものことどうしようかな〜と」
水雫ちゃんのそんな言葉を聞いて千波弥をため息をつき、癒音ちゃんはなんの事か分からず首を傾げている。
「あのね、観光じゃないのよ?いつも言ってるけれど」
「似たようなものじゃないですか?自由時間も多いですし科学センターとかも似たようなものじゃないですか。確かに合宿とかついてますけどあまり変わりないじゃないですか」
「それは否定はしないわ。けれどね・・・」
千波弥が水雫ちゃんに言っている間に、癒音ちゃんが私の服を小さく引っ張った。私は振り返る。
「どういうことなの・・・?」
「簡単に言えば合宿という形は名前だけでほとんど観光だよねって話し」
「えぇ・・・。実際どうなの?部長さんから見て」
「うん、否定できる要素がないね。二日目の日中は本当に何してもいいし、今日だって理科とか好きな子からしたらご褒美じゃん?しかもそれが部費から出るんだからね。ほとんど学校が払ってる状態だし」
「・・・なんでその状態でこの学校、伝統になるくらいっていうか有名になるくらい続いてるの・・・。私立の中高一貫校だよね?」
「今更でしょ。気にしたら負けだよ、癒音ちゃん」
「・・・それもそっか」
私が癒音ちゃんに教えるのを終えるのと同時に、千波弥達の言い合いも終わったみたい。その間、ずっと水雫ちゃんは手を離してなかったけど。私は腕時計で時間を確認する。
「皆、そろそろ戻ろう。時間が近づいてきたよ」
私が呼びかけると千波弥も自分の腕時計で時間を確認する。それを見て千波弥も呼びかけた。
「私はお花摘み行くから後で行くけど三人は?」
「私は行ってきたからいいわ」
「私も行ってきたので問題ないですね」
「私も大丈夫だよ」
「そっか。それじゃあ先に戻ってて。私、お花摘みに行ってから戻るから」
「分かったわ」
私は三人と別れてお手洗いの方に向かう。ふと後ろを振り返ると、三人はバスの方へと向かっていた。私も少し足を早めてお手洗いに向かい、終えるとバスに戻って行った。




