九十六話目
───ワイワイ。
───ガヤガヤ。
私達は今、バスに乗ってしまなみ海道を通っている。私は窓側の席について外の景色をボーッと眺めている。ちなみに隣には癒音ちゃん。
「優月も話さない?」
私の後ろの席についていた千波弥が、椅子と椅子の間から声をかけてきた。私は外を見るのをやめて後ろを振り返る。
「なにを?話そうにも何も聞いてなかったから話しようがないんだけど・・・」
「恋愛話。特に璃空と零夜だけど」
「あんなのシレッと付き合ってるって絶対。・・・どっちも無自覚みたいだけど。いや、零夜はそもそもないか」
「えぇ。だから、いつ付き合いそうかって言う話しをしてるの」
「璃空ちゃんは結構押せ押せの感じですからね。逆に零夜くんは先輩後輩の一線を引いていると言いますか・・・」
「あの堅物だからそんなもんでしょ。あれでもまだ柔い方じゃない?」
私はどうだっけといったように千波弥のことを見つめる。千波弥は後ろの方で、反対側に座って本を読んでいる零夜のことを見た。零夜の前には璃空ちゃんが座って、椅子から身を乗り出して色々話している。零夜は時々相槌を打っている。
「確かにそうね。興味がなかったら無視するものね、零夜は」
「うん。だから少なくとも気にしている相手ではあるね。そこからどう発展するかは・・・私は然程興味ないかなぁ・・・」
「幼馴染なのに?」
癒音ちゃんが隣から首を傾げて聞いてくる。不思議っといったふうに。
「幼馴染だからってのはあるね。ぶっちゃけたら私は幼馴染に恋愛感情は湧かないし」
「っ・・・」
なんか後ろから息を飲む声が聞こえたけど、気のせいだと思って続きを話す。
「近い分姉弟とかだからね。感覚的には。それに、仮に私が千波弥と付き合えるとしてもそんな資格はないから・・・」
「それは・・・」
「だって今の現状は二人に依存してるみたいなものだからね。そんな相手と付き合えるのかって言われたら・・・私は罪悪感から付き合いづらいね」
「そういうものですか・・・」
「そういうものだよ」
私はポフッと、背中を椅子に預けた。
「それに私にそんな資格があるのかなって。そんな・・・幸せになって、誰かと付き合っていいのかなって思いがあるから私は積極的に付き合いたいとは思えないの。仮に好意を寄せられていたとしてもね」
「・・・臆病」
「なんとでもいえば?確かに臆病だとは思うけど、私は今は誰かと付き合うってのは考えてないよ」
「なるほどね」
私は背を伸ばしながら答える。すると、癒音ちゃんに脇をツンっと触れられた。
「ひゃっ!き、急になに!?」
「いや、ちょっと気になって・・・」
「なにが!?」
「・・・ちゃんと女の子の反応するんだなって」
「ち、千波弥〜・・・」
「そうね。優月って男の子のはずなのに案外女の子みたいな反応するから面白いのよね」
「追撃された!?」
「あの、二人ともその辺にしてあげた方がよろしいのでは・・・?」
「仕方ないか・・・」
「また可愛い反応が見れたから私は満足よ」
「千波弥は私の事なんだと思ってるの・・・?」
「可愛い妹ね」
「なんか漢字が違う気がする・・・」
「気のせいよ」
「気のせいか・・・」
私は千波弥の言い方に少し不安を覚えた。千波弥はあまり気にしてないみたいだけど。
「そういえば優月ちゃん。今向かってる科学センター?だっけ。そこに着いたらどんな感じになってるの?」
「基本は自由行動って。ただ、時間になるとプラネタリウム見るから時間が近づいてきたら入口付近にきてって」
「プラネタリウム見ることになってたのね・・・」
「うん。てか紙に諸々書いてなかった?」
「それはなかったわよ。時間と自由行動が基本としか」
「あちゃー。やらかしちゃったね・・・。失敗失敗」
「とはいえ、私の代わりで水雫ちゃんを入れてやってたのだから仕方ないのじゃないですか?」
「そうかな?」
「そもそもどっちが作ったのよ・・・」
「日程は水雫ちゃん。私は注意書きとか館内図を貼り付けてた」
「ならいい教訓になったでしょう」
「そうだね。来年、彼女に部長してもらうんでしょ?今回間違えたのは良かったことじゃん」
「・・・そう捉えるしかないか。あとで水雫ちゃんに言っておこ」
「それがいいですわ」
私達はそのまま、少し早いけど来年の話になった。私達が来年どうするかっていう。
「私は夏くらいまでは残るつもり。夏合宿には参加しないけどね」
「それは受験するかしないかにもよりそうだけどね。みんなはどうするつもりなの?卒業後は。ちなみに私は大学に進学するつもりよ」
「私は大学に通いつつあっちの方を本格的に始めますわ。継ぐために」
「私はお父さんの会社に入って、お母さんかお父さん直属の部下として動いていくかな」
「優月は?」
私は癒音ちゃんのことを見る。あのことを伝えていいのかと。癒音ちゃんは私の視線に気づいて頷いた。
「理音さんからスカウトされたから宮葉さんか理音さん直属になって学んで行こうかなって」
私が言うと、二人とも口を開けて驚いていた。そりゃあ、まさかあの人からスカウトされるなんて思わないもんね・・・。しかも社長自らだったからね。そりゃ驚くよね。二人とも、少し慌てたように聞いてくるから、私は癒音ちゃんに目で頼んで一緒に説明してもらった。
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では次回の話しでお会いしましょう!




