九十四話目
「それで?わざわざ先に俺らに言ったのはなんか理由があるのか?」
「少なくとも中等部の子達よりも関わり深いし、皆で遊びに行くことも多かったからかなぁ。多少、気を抜ける相手が欲しかったてのもある。今までは零夜と千波弥しかいなかったし」
「そうね・・・。あとは・・・理事長を含めた学校の教員と、私と零夜の家族くらいかしら?」
「多分。癒音ちゃんは・・・うん・・・うん・・・」
「ちょっと!?いや、確かにあんなにぶっ込んだから気を抜けるとは言い難いけどさ!?そんなにいい悩むことある!?」
「ある。だって、恋文のような感じで靴箱に入れてたくせに行ったら、女装してるんでしょって言われるんだからどちらかと言えば警戒したし」
「それ言われたら何も言い返せない・・・」
癒音ちゃんが少し項垂れる。私はあの日のことを思い出しながら言う。あの日はあの日で驚いたんだからねぇ・・・。
「なるほど・・・ね。それでも中等部の子らにも言うんだろ?琴吹の妹がいる時点でそうだと思ったんけど・・・」
「そう。さっきも言ったけど合宿のときに伝えるつもり」
「なるほどな。いつ伝えるつもりなんだ?」
「最終日かな。向こうでなのか、バスでなのか、はたまた学校かは決めてないけど」
「あれ?そうだったの?」
「うん。最終日ってのしか決めてない。もうその時のノリに任せようかなって」
「相変わらずの楽観主義だな・・・」
「それが私だし。それに今までそれでどうにかなったんだし学生?生徒?の間はこれで大丈夫でしょ。流石に大学あたりからは変えるけど。・・・進学するかどうかは別として」
私のよくやる、未来の自分に全て丸投げをして今やることに集中する。
「とりあえず、それはそれとして置いておいて・・・。優月ちゃん、水雫ちゃん。書類関連はちゃんと終わったんですか?注意事項や持ってくるものはこちらで作って送っておきましたが」
「終わってますよ、由理子先輩。ひーこらひーこら言いながら終わらせましたよ・・・。この先輩鬼畜過ぎます・・・。鬼や悪魔ですよ」
「ちょっと水雫ちゃーん?もっとされたい?」
「ひぇっ!ごめんなさーい!」
私達のやり取りに対して、一部で笑いが起きた。多分いつものメンバーだから放置でいい。
「それと水雫ちゃん?来年の部長は水雫ちゃんにするつもりなんだよ?」
「・・・えっ?」
「だって来年の2年生って水雫ちゃんしかいないし。他の幹部については水雫ちゃんで決めてよ。まぁ、それもあって今回一緒にやってもらうようにしたけど・・・」
「アレを来年は水雫ちゃんと副部長に選んだ子でやる必要がありますからね。優月ちゃんは今までの何人かの部長と親しかったから手伝いと称して色々してましたから去年、やる必要がなかったですけど」
「そうね・・・。よく呼ばれてたわね」
「懐かしいな。中等部の頃からそうだったよな、お前」
「優秀・・・」
「とは言い難いはずなんだけどねぇ・・・。成績も、順位も高い訳でも低い訳でもない、中間くらいなのにね」
「ちょっと、亜未ちゃん!?私の成績公開しないでよ!?」
私は亜未ちゃんに掴みにかかる。亜未ちゃんの肩を掴んで前後に動かす。亜未ちゃんのことを揺らしながら訴える。亜未ちゃんは揺られながら謝ってくるので、ある程度のところでやめておいてあげた。
「この子リーダー気質ではあるからね・・・癒音とかは比較的分かるんじゃないかしら?」
「あー、うん。なんとなくそういうのは分かる。立場上色々と見てきたから言えるけど会社とかでも上に立つ人の雰囲気があるもん」
「言われてみればそうですね。一部の上役の人達と雰囲気が似てます」
「そこらの企業ならいい役職につけるとは思うね。やるかどうは別として」
「良かったじゃない、優月。企業の娘達からのお墨付きよ」
「嬉しいようであまり嬉しくないんだけど、それ・・・」
「でも嬉しいんだろ?珍しく顔に出てるぞ」
「えっ!?」
零夜に言われて咄嗟に両手を顔に当てる。少し顔がニヤついていた。私は慌てて元の顔に戻す。
「・・・写真撮っておけば良かったわね」
「だな。最近は珍しいし、もったいなかった」
「二人は私のことなんだと思ってるの・・・」
零夜と千波弥は顔を見合わせる。そして、私の方を向いて異口同音の言葉を発する。
「「手のかかる弟」」
「思った以上に辛辣な答えが返ってきた!?それに弟ってなに!?いや、確かに誕生日のこと考えたら私が1番遅いけどさ!?」
「だって・・・ねぇ?」
「あぁ。そうだもんなぁ・・・。絶対何人かは思ってるだろうし」
「嘘!?ていうかだからたまにあの人達の目線が暖かい目をしていたわけ・・・!?」
「多分な・・・。ちゃんと聞いたことないから分からんけど」
「そんなぁ・・・」
私は二人の家族にあったときのことを思い出す。大人四人はたまに優しいような、暖かい目で私達の見ている時がある。それがまさかのそれだったとしたらちょっとショック。千波弥のところの姉妹に関しては仲良くさせてはもらってるけども。
「えっと・・・どんまい?」
「やめてー、癒音ちゃん・・・。その心配が今は余計に刺さるからぁ」
私は顔を俯かせて、癒音ちゃんに返す。千波弥と零夜が言ってきたのに、二人は我関せずといった感じで余計にイラつく。癒音ちゃんはどうしたらいいか分からないなか、私の背中をポンポンと叩いてくれる。
今の私にはそれが少し重たく感じた。




