八十八話目
数週間後。期末テストも終えて、もうすぐ夏休みと言った日。私は外の様子を見て、部室で呟いた。
「鬱だぁ・・・」
「毎年毎年・・・いい加減慣れろ」
「でもぉ・・・」
私は机の上に突っ伏して零夜に返す。零夜の顔は見えないけど呆れられてる気がする。というか、声色がそう。少し離れたところでは千波弥と癒音ちゃん。亜未ちゃんが話しているのが見える。
「・・・いつもこんなんなの?」
「雨の日限定だけどね。千波弥と零夜は理由を知ってるみたいだけど私は知らない。いつからなの?あれ」
「顕著になったのはこの学校に来てから。反応自体は日常が無くなった日から片鱗は見えてたわ」
「雨だったの?」
「全く。ドーンってやつが起きたのは晴れ。雨どころか雲ひとつすらない晴天だったわ」
「尚更なんでなの!?」
「多分雨なのはもう一つの方だわ」
「もう一つ?もしかして・・・妹さん?」
「そうね。私達にも伝えられた日だったからよく覚えてるわ。あの日は雨だったしね。それもあって雨はあの子にとって忌み嫌うものになってるわよ。学校じゃなかったら家でカーテンを閉めて外に出ないようにするのと、見ないようにしてるから」
「・・・徹底どころの騒ぎじゃないじゃん、それ・・・」
三人はそんな会話をしている。私は座っているコロ付き椅子を前後に揺らしながら聞いている。頭の上から零夜がため息をついた音が聞こえた。
「なんなのー?だめー?」
「どうせそんなことだから行けてないんだろ?墓参り」
「うるさいなー。私の家庭なんだから口出ししてこないでよ」
「はいはい。その様子でよく分かったわ。あの日以降結局、行けずじまいだな」
「・・・ご想像にお任せしますー」
「それが答えじゃないかな・・・?」
癒音ちゃんが問いかけるような感じで話に入ってきた。私は体を起こして、背もたれに背中を預けて体を伸ばす。左手を上に伸ばして、右手を左腕の肘にあてて伸ばす。
「そんなこと言われても私は明言しないよ。そもそも踏み込まれたくないんだけど?千波弥も零夜も言ってくるけど正直うんざりしてるんだけど?」
「だとしても言うわ。流石にお世話になったんだしな。それともなんだ?向き合うのが怖いのか?」
「うっさいな〜。零夜には関係ないでしょ」
「関係ないな。でも実の子だろうが。行ってやれよ」
「いつかね。善処はする」
「それは行かないセリフでは?」
「由理子ちゃんまでそんなこと言うの!?」
「言動を振り返ってください。聞いているだけの私でもそう思うんですから。・・・千波弥ちゃんも零夜くんも大変ですね」
二人は由理子ちゃんの言葉に頷いた。
「てまぁ、優月先輩の家庭事情はおいておいて。優月先輩。夏合宿は今年もあるんですか?」
「へぁ・・・?夏合宿? 」
「はい。毎年してるじゃないですか。だから今年はどうなのかなって。それとどこ行くのかと」
「あー、それね。今年もあるー。確か岡山だったよ」
「岡山ですか・・・。今年結構近いですね?」
「だね。でもまぁ、これくらいの方が私はいいんだけどねぇ。バスの中、動けないってのは中々暇だし」
「それはそうですけどね・・・」
「それに璃空ちゃんが入ったことを考えたらいいでしょ。交流も兼ねてってのができるんだし・・・ね!」
私はいいながら零夜のことを見る。零夜はなんで見てるのか分かってない様子で首をかしげられた。私は水雫ちゃんに視線を戻す。そしてお互いに顔を近づけて話し合う。
「どうやら気づいてないみたいですね。璃空ちゃんの方はどうみますか?」
「自覚のない好きじゃないかな?あの様子だと。零夜もいつの間にか璃空ちゃんと連絡先交換してたみたいだし」
「そうなんですか!」
水雫ちゃんは器用に、小声で大きな声を上げた。私は水雫ちゃんの言葉に肯定する。
「このテスト期間の間に癒音ちゃんから聞いてそう言われたから璃空ちゃんが零夜に好意を持ってるのは絶対だよ」
「はー。そうなんですね。・・・付き合うと思いますか?」
「さぁ?少なくとも零夜からはいかないでしょ。零夜は多分仲のいい後輩程度にしか思ってないだろうしね」
「・・・そこも含めて楽しみですね」
「そうだね」
「・・・さっきから俺のことをチラチラ見てきながら話してるけどなんなんど?何か用事でもあるのか?」
「なんでもないよ」
私は咄嗟に近くに来て聞いてきた零夜に答える。零夜は不思議そうに私達のことを見つめてくる。
「ともかく!来週かな。みんなに説明するのは。怜奈先生からもそこで説明するように言われてるしね。運動部のほうも合宿と大会が被らないように調整したからね」
「流石にそうですよね」
「あ、それと水雫ちゃん。水雫ちゃんには今回の書類関連手伝ってもらうからね」
「え!?な、なんでですか!?」
水雫ちゃんが驚いたため大きな声をあげる。みんなこっちの方を見る。私は驚いている水雫ちゃんに分かりやすく説明する。
「だって引き継ぎのこと考えないといけないからね。来年は水雫ちゃんしか2年生いないし。だから教えておく必要があるじゃん。だから水雫ちゃんにも手伝ってもらうつもりだからよろしくね」
「うっ・・・分かりました・・・」
水雫ちゃんは渋々といったふうに頷いてくれた。私と由理子ちゃんは顔を見合わせて、水雫ちゃんのことを見て微笑みつつ頷いた。




