八十五話目
「この一週間で結局どこまでいったんだ?」
千波弥と一緒に家に帰って、零夜を呼んだ。そして、互いに椅子に座ったところで零夜からそう尋ねられた。私は一瞬だけ千波弥のことを見て、零夜の方に向き直る。
「ほとんどかな。数日前に言ったことを含めてね。小学の事故から今の女装の理由まであらかた全部かな。あってるよね、千波弥」
「そうね。そこらあたりはすべて言っていたわね」
「それで?結局だれが知ってる状態なんだ?」
「私達はもちろんだけど、天文部の二年組だね。とはいえ、女子限定だけどね」
「他は?大人の方はどうなんだ?」
「癒音ちゃんのご両親と執事さん。あとは、あそこの会社にいた私と同じで女装している人だね。ついでに言うなら、癒音ちゃんの妹・・・璃空ちゃんも知ってるね。体育大会の時に言われそうになって癒音ちゃんが慌てて止めたけど」
「つまり、お前をのけて俺らを含めた人数だと十五人ってところか」
「あ、それなんだけど、どうやらもっといるみたい」
「はぁ?どういうことだ?」
私が零夜に言うと、零夜は驚いていた。隣にいる千波弥の雰囲気も少し驚いた様子だ。私はそんな二人のことを見て、体育大会の二日目に言われたことを思い出す。それを千波弥と零夜に伝える。
「由理子ちゃんのお父さん。あの人も知ってたみたい。あの人が言うには他にも多数の人が知ってるみたいな言い草だったよ」
「待て待て待て!?それはどういうことだ!?」
「あの人が言うには、私の両親からそれぞれ万が一お父さん達が亡くなった場合様子を見ていてくれって頼まれていたらしいよ。なんでそれを今になって言ってきたのかは聞けなかったけど」
「はぁ!?てことは大人の方は実際に何人居るか分からねぇな・・・」
「うん。だから少し困った状態なの。でも正直に言うと何で今更とはなったけどね」
「それはそうだろ・・・」
私と零夜が話している横で、千波弥は顔をうつむかせて何か考えている。私は不思議に思って千波弥に声をかける。声をかけると、千波弥は普通に顔をあげた。けど、その顔はどこか何かを言いたいような表情をしている。
「あのさ、今ふと思ったんだけどそういったってことは二人は自分の死期が近いことに気づいてたってことじゃ・・・」
「そんなことあるか?たまたまじゃないのか?あの人達常に最悪とか最低の考えを見越して動いてた気がするしな」
「だとしてもじゃない・・・?あまりにもできすぎている気が・・・」
「仮にそうだったとしてどう証明する?死人に口なしだ」
「そうだけど・・・」
「・・・今度三人で尋ねてみる?」
「誰にだ?」
「知ってる大人に。手っ取り早いのは理事長だし理事長から聞こ。由理子ちゃんのお父さんが言うには、私の両親と親しい間柄だった人達には伝えていたみたいだから」
「・・・分かった連絡しておく」
零夜が渋々といった様子で頷いた。私は礼を言う。零夜は肩をすくめた。
「そういえば優月。今回はイレギュラーで判明したけど他の子に伝える予定は?」
「イレギュラーっていうなら癒音ちゃんもそうじゃないかな?まぁ、それはおいといて、どうするかだって?」
「えぇ。それと癒音のことに関しては何も言えないわよ」
「それはそうだけど。今のところ考えてるのは天文部のみんなかな。伝えていいと私が個人的に判断したのは。二人から見てどう?」
「それは全員か?それともどっかの学年だけか?」
「全学年だよ。あそこならバラしてもイジメられることはないはずだからね。悪用されることもないだろうし」
二人は少し考え始めた。多分今は天文部のみんなのことを学年問わず思い出しているんだろうね。個人的に反応が分からないのが水雫ちゃんなくらいで。距離を置かれるのか、今まで通りなのか、はたまたより近くなるのか。なんとも言いがたいね。
「いいんじゃないのか?少し予想がつかないメンバーもいるが」
「そうね。あの子達なら大丈夫でしょう。水雫ちゃんの反応がどうなるか不安なくらいじゃないですか?あの子、優月にベッタリですし」
「そうなんだよねぇ。やっぱり二人から見ても水雫ちゃんがどうでるか分からないか・・・」
「あいつの反応はもうそのときに任せていたらいいだろ」
「・・・それもそうだね」
「それで、問題はどのタイミングで言うかだよな。もうすぐ期末のテスト期間に入るし開けてからか?」
「かな。夏休みに入る前に一度全員集合日があるし、伝達することを伝えてその後に教えようかな」
「根回しはしておく。先輩らには?」
「いらないでしょ。逆にいる?これから受験とかに入っていくんだよ?」
「それなら来た場合知ってもらう感じでいきましょうか」
「そうだね。それでいこう」
私達は話し合ってこれからどうするかを決めた。本当に水雫ちゃん以外の反応は大丈夫。驚かれはするだろうけどみんな受け入れてくれるから。でも、水雫ちゃんの反応だけがいまいち判断できない。
後輩の中では一番親しいとは思うけど、その分よくわからない。なつかれていることは分かるんだけど、このなつかれ具合がどうでるのか、どっちに揺れるのかが本当に分からないから。
「それじゃあ、その方向でいいな。二人も」
「うん。根回しはお願い」
「任せろ。それじゃあな」
零夜と千波弥は立ち上がって、私の家から出て行った。




