八十三話目
最終日である金曜日。私達は今までと同じように、宮葉さんに連れて行かれてやってきた。昨日・一昨日と同じですぐに選んだ部署に向かうのではなく、今は社長室に居る。宮葉さんに聞いてみると、どうやら宮葉さんも詳しくは知らない見たい。でも、理音さん達から何か伝えることがあるみたい。宮葉さんもそれだけしか聞いてないから何を話すのかは知らないって。
社長室では今まで通り入った後にソファーに座っている。対面には理音さんと桜空さんが座っている。だけど、誰もしゃべらないから居心地が悪い。いつも話している癒音ちゃんでさえ黙っているのだから余計に。すると、桜空さんが隣に座っている理音さんのことを肘で突いた。理音さんはハッとして、腕組みしていた手をおろして少しだけうつむかせていた顔を上げた。
「さて、今日が最終日だというのは分かっているよね?」
私達は頷いて返す。理音さん達はそれを見て満足そうに頷いたあと、少し微笑んだ。
「それがどうしてここに集める訳なの?まさかそれだけのためにあつめたわけじゃ無いでしょ?」
「その通りだよ、癒音。ここに集めたのはちゃんと理由があるからね。ここに集めたのは少し伝えることがあるからなんだ」
「そして、その伝えることと言うのは・・・?」
「このあとは皆それぞれの部署に行って手伝ってもらうことになってるでしょ?」
「そう・・・ですね。それがどうかしましたか?」
「昼休憩まではそのままでいいんだけど、昼休憩のあとはこの部屋に戻ってきてほしいんだ。みんなにしてほしいことがあってね」
「なにをするんですか?」
「それは来たときに教えるよ」
「その・・・それってみんなで一緒に来た方がいいですか?」
「そうだね。そうしてくれるとありがたいね」
「よく分かりませんが分かりました。とりあえず昼に集まって揃ってからこちらに伺いますね」
「うん。お願いね。急なことで申し訳ないけどね。それじゃあ、また午後に。残りの時間も頑張って」
私達は立ち上がってから一礼をして社長室を出た。社長室を出てからはその場でそれぞれの部署に向かうために別れた。向かいながら私は癒音ちゃんに問いかける。
「癒音ちゃん、理音さん達の用事って何か分かる?」
「多分今回の感想じゃないかな?それで良かったのなら私達の学校や、各支部がある市区町村で一校だけ体験させるんじゃないかな?新規社員発掘を求めて」
「なるほどね。だから感想を聞くために集められる訳か。で、場合によったら範囲が広がると」
「多分ね。実際はどうかは知らないけど」
私達はそのあと何事もなく事務作業を終わらせた。最終日にハプニングとかも起こらずに安心した。私達は今、昼食を食べ終えて休憩室で皆が来るのを待っている。今回のメンバーだけでグループチャットを作った。そこにどこで待っているのかを送っているため見たのならくるはず。私達は雑談をしながら待っている。
「癒音ちゃんって璃空ちゃんと喧嘩とかしたりするの?」
「璃空と?なんで?」
「いや、仲よさそうだったから喧嘩とかしてたのかなって。私も下は居たけど自分とは性別が違ったからね。男兄弟だったら多分喧嘩してたと思う。私は。でも、私と違って癒音ちゃんは姉妹でしょ?だから喧嘩したことあるのかなって」
「う~ん・・・特にない・・・かな。喧嘩と言う名のじゃれ合いならしたことあるけど罵ったり手を出すようなことはしたことないね。お父さん達が言うには私達姉妹ってあまり手がかからなかったみたいだよ」
「え?そうなの?」
「みたい。夜泣きも少ないし、好き嫌いもそこまで激しくなかったとかで」
「それは・・・親からしたらありがたいね・・・」
「反抗期という反抗期もなかったし、余計にかな」
「それはすごいね。中々いないでしょ、反抗期がなかったって」
私達が休憩室ではなしながら時間を潰していると、前の椅子が引かれた。私達は顔をあげる。来たのは私の幼馴染である千波弥。千波弥は片手に自販機で買ったであろう紅茶が握られていた。
「2人で何の話をしてたの?」
「癒音ちゃん達のことだよ。癒音ちゃんも姉妹だから喧嘩とかしたことあるのかっていうね」
「なるほどね。うちも姉妹だけどそちらはどうだったの?」
「喧嘩、したことないってさ」
千波弥は少しだけ目を見開いた。千波弥のところは少ないけれど喧嘩が全くなかった訳じゃないからね。たまに私達が和解させるように動いてたし。
「そんなこというなら優月もなかったでしょう?」
「まぁね~。といっても私は違ったからね。生きていたらどうかは知らないけど、私達だけが生きていたら小学から波乱になってただろうね」
「・・・あながち否定できないのが痛いわね・・・」
「何する気なの・・・?」
「とりあえずはイジメられてるのならペン型のカメラを使って証拠を集めて裏で呼び出してボコると同時に教育委員会と保護者とかPTAに密告かなぁ。敵には容赦する必要ないしね」
癒音ちゃんが千波弥に視線を投げた。千波弥はそれに対して小さく頷いた。
「実際、卒業前に似たようなことしたし」
「やだ、思った以上に過激派だった・・・」
「今更よ。慣れなさい」
「大分理不尽なこと言うね!?千波弥ちゃんも!」
私達はどこ吹く風で癒音ちゃんから逃げる。そのあとも色々と問い詰められたけれど、お互いにのらりくらりと誤魔化した。




