八十二話目
私と癒音ちゃんは戻ってきて事務室にいる。東野さんから、今日の昼戻ってきたら事務室に居てくれと言われたから。だから、私達は言われた通り事務室で待機している。
とはいっても、癒音ちゃんは事務の人達と話していて私は手持ち無沙汰だけど。なんなら、周りからの視線がいたたまれない。正直に言うと居づらい。
私がポケーっとして時間を潰していると、後ろから肩を叩かれた。私はハッとして、叩かれた方へと振り返る。振り返ると、東野さんが呆れながら癒音ちゃんのことを見ていた。
「全く・・・あの子もあまり変わってないわね」
「ど、どういうことですか・・・?」
「・・・こうやって放ったらかしにすることがよ。璃空ちゃんと一緒にいる時は問題ないから私もとやかくは言わないわ。それは他の部署も一緒だとは思うけど。でも、貴方のような友達や他人でも自分がしょっちゅう来てるからっていうので少なからず交流がある」
「だから、放ったらかしにされる子が多いってことですか・・・?」
「有り体にいえばね。だからごめんなさい。この場に居づらいでしょう?」
「え、えっと・・・それは、その・・・」
私が言い淀んでいると、東野さんは苦笑した。そして、私が言い淀んでいるのを止めて分かっているような感じで言った。
「いいのよ。別に気を使わなくても。単純に聞きたいだけだから」
「それなら・・・正直、居づらい・・・です・・・」
「でしょうね。全く・・・癒音ちゃんも癒音ちゃんだわ。いくらここの人達と親しいからってお友達を放置するのは頂けないわね」
「そ、それは・・・あまり癒音ちゃんを責めないでください・・・。私が言わなかったのも悪いんで・・・」
「そう?だとしても・・・普通はあの子がどうにかしないといけないのに・・・。どうして放置するのかしら・・・」
「ま、まぁまぁ・・・」
私が宥めていると、東野さんは肩を竦めたあと癒音ちゃんのことを呼んだ。癒音ちゃんは事務の人達と話していたのをやめて、こっちに向かってくる。こっちにきた癒音ちゃんに東野さんの雷が落ちた。
「なんで彼女を放置したのよ?ここには貴方達二人だけなのよ?それなのに貴方が話に行くとこの子は居づらいでしょうが。毎回毎回、来たらそうだと困るのよ」
「・・・ごめんなさい」
「いい加減気をつけてくれない?基本的に言うのは私だけだけど他の部署の人達も思ってるみたいよ?」
「・・・はい」
癒音ちゃんが萎れている。東野さんの言葉を私も聞いてるけど、怒ってるけど怒ってないようなそんな言い方に聞こえる。まるであやすような感じだ。
「流石にここまでにしておくわ。それで、午後からなんだけどね、ここで働いてもらうことにしたわ」
「あっちの方はいいんですか?」
「えぇ。色んなことを経験させるべきだと思ってるからね」
「分かりました」
「それじゃあ説明するわね。ここでは、入ってくる無線を聞いて、何を入れたか記載するの。あとは、なにが注文されたかを報告するのもね。16時を超えるまでは注文が入ったらすぐに倉庫の人に伝えて入れてもらうこともするの。要は司令塔的な立ち位置の場所よ」
「なるほど・・・」
私は頷きながら周りを見てみる。確かに無線機らしきもので何か連絡を取り合っている。何か連絡を聞いてからパソコンのエクセルっぽいのにうちこんでいる。
「見て何か分かるかしら?」
「なんとなくは。無線機で言い合って、入れたものはエクセルに打ち込んでる感じですよね。パッと見でしか言えませんけど」
「そこまで分かってるのなら問題ないわ。早速だけどやってみる?」
「わ、分かりました・・・」
私達は空いてる席につく。すると、近くにいた事務の方が私達に無線機を手渡してきた。私達は受け取り、無線機の電源を入れる。
『24番』
無線機をつけてすぐにそう、受信した。それを後ろで見ていた東野さんが教えてくれる。
「言われたら、パソコンの画面にエクセルがあるでしょう?そこに言われた番号があるから探して、見つけたらその横に丸をつけるの」
「分かりました」
私は言われた通り探す。言われた24番とかかれた商品を見つけて、商品名の横の枠に丸を付けた。すると、そのタイミングでパソコンに通知が入った。それを見ると、商品番号と商品名が書かれていた。
「丁度タイミングよく注文されたわね。それで、1番下を見てみて。そこに今さっき注文されたものが書かれているわ。そして、無線機を使って向こうに番号を言って、「入りました」的なことを言ってちょうだい」
「『49番、注文されました』」
『了解』
ブツっと言って無線機が切れた。私は後ろを振り返って東野さんにこれで良かったのかと聞く。
「えぇ。それで問題ないわ。その調子進めてちょうだい。分からなかったら癒音ちゃんや、ほかの事務の人に聞いてもらえばいいわ。分かった?」
「分かってますよー。東野さんはどうするの?」
「私もすることがあるからここで別れるわよ。それじゃあ、残りの時間も頼んだわよ」
「分かりました」
東野さんはそう言って私達のもとから離れていく。私達はそれを確認して、パソコンと向き合って次の情報が入ってくるまで待機する。




