七十三話目
私達は休憩時間になったけど社長室にいる。私達はソファーに座っている。私は手のひらで、私の血が入った小瓶を転がしている。千波弥は見慣れてるから特になにも反応がない。けど、他のみんなは少し引いてる感じがある。
「・・・優月、やめたらどうなの?」
「えぇ〜」
「『えぇ〜』じゃないわよ。私やここには居ないけど零夜は慣れてるわ。けどね、ここにいる皆は慣れてないのよ。わかったのならさっさとそれをしまう」
「・・・は〜い」
私は千波弥になだめられて、渋々内ポケットに仕舞う。空気が少し柔らかくなった気がした。
「それで、どうするつもりなの?この場で見せるつもり?」
「理音さんや桜空さんが見せてもいいって言うのなら。それと同時に見ても大丈夫なら。そうじゃないとこの場で見せないよ。そもそも私は見せようが見せまいがどっちでもいいし。で、どうするの?3人は」
私は前にいる3人に聞く。私と千波弥が3人と向かい合うようにソファーに座っているから。私は彼女達から目を逸らさない。誰か一人でも見たくないって言ったら私はこの場では見せない。3人は少ししたら口を開いた。
「私は見る。それが、私の・・・」
「はいはい。理由はどうでもいいから。亜未ちゃんと由理子ちゃんはどうする?」
「・・・見ます。見せてください」
「私も・・・向き合いたいから」
3人は私のことを見返して告げてきた。隣の千波弥をチラッと見ると、頷いて返してきた。私は理音さん達の方を見る。
「理音さん、この場で見せてもいいですか?」
「問題ないよ。だよね、宮葉」
「問題はありませんが、床を汚さないようにしてください。汚さないのであれば問題はありません」
「だ、そうだよ。優月くん」
「分かりました。ありがとうございます」
私は理音さんにお礼を告げる。理音さんはにこやかな顔で頷いた。
私は着ているカーディガンを脱ぐ。そして、軽くたたんで千波弥に渡す。
「千波弥、お願い」
「仕方ないわね。ジュース一杯で手打ちね」
「りょーかい」
カーディガンを脱いで、隠していた腕を見せる。隠していた腕には線がいろんなところに。また、ところどころに青アザも残っている。3人が息を飲んだ音が聞こえた。
「説明すると、線がリスカ跡ね。比較的分かりやすいかな?」
「じ、じゃあそのアザは・・・?」
「これはね〜、普通にぶつけたのもあるけどほとんどはイジメの時のアザだね。だよね、千波弥?」
「そうね。普通にぶつけた跡は2箇所くらいじゃなかったかしら?」
「多分ね。私もアザのほとんどはイジメでできたって認識だし」
私は苦笑いしながら答える。私もアザに関してはあまりちゃんと記憶してないから。理音さんと桜空さんの視線も感じる。
「で・・・下も見る?まだ腕はマシな方だよ。これよりも酷いけど本当に見るの?」
前にいる3人は頷いた。私は千波弥の方を向いて聞く。
「これ、どーする?脱いだ方がいいかな?それともあげるだけ?」
「あげるだけでいいでしょ。上の方は比較的マシだったでしょ」
「だね〜。んじゃ、あげよっか」
私はシャツを出して裾を持つ。私は捲っていく。私の肌が顕になる。肌にはアザや、傷跡。その他にも火傷跡とかもある。
「え・・・・・・?」
「とりあえず、肌が白いのが火傷跡ね。で、線はリスカ跡。アザがイジメね。特に酷いのが横の青アザだね」
「本当にこれはね・・・」
「んんっ・・・」
千波弥が私の青アザの部分を撫でてくる。私はくすぐったくて声を出す。
「ち、千波弥っ・・・。くすぐったいからっ・・・」
「ホント、弱いわね。やめてあげるけど」
「・・・それがほとんどが小学生のときに?」
「そう。殴る蹴るはされたけど、まさか火傷がくるとはびっくりした。しかも、たちが悪いことに零夜と千波弥もいる中でやったからね」
「あの時は零夜が凄かったわね・・・」
「だね。あれから零夜の前なら大丈夫だったし」
「なにしたの・・・」
亜未ちゃんが不思議そうに私達に聞いてくる。私達は顔を見合わせる。
「ま、いっか。簡単に言えば報復?だね。しかも、最初にやってきた奴らの体に腹パンしてから言葉責め。しかも正論だからあの子たち精神だいぶやばかったよね」
「そうね。そこへ先生も止めようとするけど、まぁ、今まで見て見ぬフリしてきたのに俺がやる時だけ言うのかって言い返してたわね。先生は案の定なにも言えなくなってたけど」
「だから、あの学校じゃ零夜には手を出すな〜なんて暗黙のルールができてたね。懐かしい〜」
「イジメられてたのに呑気ね・・・」
「もう過去の出来事じゃん。クラス全員と学校には然るべきところへ連絡して制裁したし」
「なにしたのですか・・・?」
「え?教育委員会に密告。速攻で第三者委員会が敷かれて、確かクラスの中学受験した何人かは中学側から入学取り消しとは聞いたね」
「他にも担任は教師免許剥奪だったかしら?校長や教頭も降ろされてたわね」
「怖っ!?」
「怖って言われても向こうが悪いからねぇ・・・」
私は服をおろし、中に入れながら言う。千波弥からカーディガンを返してもらい、着る。
「ま、そういうわけだね。中学入る前の大きな出来事は」
「本当に最後の最後で優月がハッチャケたわ・・・。お陰で私達のクラスは最低最悪の卒業式とちうね。卒業式後は優月に親が子供連れて謝りに来るしで。イジメていた組の親は特に酷かったわね・・・」
「あ、もしかしてニュースになってた・・・」
「多分それですね、理音さん。結構大事になったみたいで〜」
「他人事みたいに言いますね!?当事者ですよね!?」
「でも実際、最後の方はそんな感覚だったんだよね〜。だから、特に何も。私も制裁できたしそれ以上は何も望まなかったけど、示談金でお金がバカみたいに入ったくらい?」
「そうね。それくらいね」
千波弥も肯定する。亜未ちゃんと由理子ちゃんは少し引いている。癒音ちゃんは同情するような目で。
同情してくれるだけでも、今では充分ありがたいんだよね・・・。
「そろそろ休憩時間終わるからね」
桜空さんが呼びかけてきた。私達は返事を返して、この暗い話をするのはやめた。




