六十九話目
「・・・ここや」
藤宗さんに案内されてきたのは、廊下側の空いていた席。彼はそこに座るように促したので、私達は座る。
「さっきも言うた通り、書類を渡すから先月のと比べて異常がないか調べてくれや。何が不思議に思ったなら俺でも、近くのヤツにでも聞き。みんな、伝えてるから答えはる」
「分かりました。ありがとうございます」
「ええんや。それじゃあ、そういうわけで。俺は自分のデスクに戻るな」
「はい。ありがとうございます」
彼は手をあげて、自分の席に戻っていった。彼が去ったと同時に紙を、書類を二束渡された。
「先月の紙がこっち。指をさしてない方の束が今月分よ。順番は一緒になってるはずだから。それじゃあ、お願いね」
「分かった」
「癒音ちゃんは、いつもの感じで答えないの」
「はーい・・・」
渡してくれた彼女は、私達から見て右側の束を指さして言った。癒音ちゃんがタメ口で答えたため、少し強い口調で彼女は使わないことを促した。癒音ちゃんはバツが悪そうに返答した。
「改めてお願いね。分からないことがあったら私達の誰でもいいから頼ってね?」
「はい!」
「うん、いい返事ね。任せたわよ」
彼女は自分の席に戻って行った。私達は早速取りかかる。それぞれが2つの束の上から取って、確認していく。特に問題がなければ、束の隣に重ねていく。私達は、黙々と進めている。社員の人達は話しながら作業している。すると、隣に居た癒音ちゃんが話しかけてきた。
「どう?うちの事務は」
「・・・なんというか緩いね?」
「そうね。こうやって話しながら仕事していていいのかと考えてしまうわ。やっぱり会社は黙々と作業をしているイメージがあって・・・」
「実際、大抵の会社はそうっすよ」
私と癒音ちゃんとで話していたら、千波弥も話に入ってきた。千波弥は世間一般的な会社のイメージを出してきた。そしたら、急にうしろから男の人の声が聞こえた。
「ひゃっ!?」
「急に話しかけてこないでください!?」
「・・・何がしたいんですか」
千波弥が驚いた声を上げて、私が話しかけてきた人に抗議する。癒音ちゃんは、
ジト目でその人のことを見ていた。
「悪かったっす。でも少し聞き捨てならない言葉が聞こえたので」
「聞き捨てならない言葉ですか・・・?」
「そうっす。さっき君が言った、会社に関してのイメージっす。まさにその通りっす。僕もいろんな会社を見てきたから言えますけど、大抵の会社は黙々と仕事をやるっす。しかも、今でも昭和のようなブラックの会社も残ってますからねぇ・・・」
「その点、ここはありがたいわよね。昭和世代の人もしっかりと現代に合わせてくれるから。それこそ有給もとれるしね」
「他にも男女ともちゃんと育休もとれるし、飲み会も強制じゃないっすからねぇ」
「ただこの前、課長とかがぼやいてたんだけど、最近はハラスメントが多いじゃ無い?あれでどこまでがセーフなのか分りづらいって」
「それは・・・」
「まぁ、それでも私達、女性からしたらセクハラされないだけで十分メリットなんだけどね。この会社って」
私達を置いて、社員の人たちがメリットのようなものをずっと話している。私と千波弥はポカンと、展開について行けてない。そしたら、癒音ちゃんが話している二人の間に割って入った。
「はいはい。お二方、優月ちゃんと千波弥ちゃんが困惑してるからそこまでにしてよ」
「あら?それはごめんなさい。つい、この会社の良いところを知ってほしいばかりに・・・」
「申し訳ないっす」
「「い、いえ・・・」」
私と千波弥は、少し困惑しつつも大丈夫だと返す。二人はここから離れて行った。すると、入れ違いで藤宗さんが私達の元にやってきた。
「悪かったな、あの二人が」
「いえ、大丈夫ですけど・・・」
「そう言ってもらえるとありがたい」
「で、実際にそんな感じなんですか?」
「そうやな。さっきいった休みに関してはあっとる。だからなのか、長期で休みを取って旅行に行くヤツもいるな。でも大抵そういうのに使うのは社長主催の社員旅行に行くヤツくらいやな」
「・・・珍しいですね、今時社員旅行なんて」
「俺も思っとる。でも、案外一定数はいるから続けれるんやろな」
「たまに私もついて行くし」
私は驚いて癒音ちゃんのことを見る。癒音ちゃんは頷いて答えた。
「この会社の社員旅行って家族で参加して良いってなってるんだ。お祖父ちゃんがそうしたんだけど理由はわかんない」
私と千波弥は困惑の声を上げて、癒音ちゃんのことを見つめた。
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では次回の話しでお会いしましょう!




