六十七話目
私達は一度、学校に戻ってから先生に無事に帰ってきたことを報告した。それから、その場で皆と別れて私と千波弥が一緒に帰っている。
「・・・零夜に来るよう言った?」
「言ったわよ。貴方の家に着いたら連絡返してくれって言われたこっちの身にもなってくれないかしら?貴方のことなんだけど」
「・・・それはごめん」
「だとしたら自分でやってくれない?」
「無理。・・・こっちのことは分かってるでしょ」
「あの日以降、普通でいようとすればするほど機械に触れることが怖い・・・だったわよね?」
「・・・うん。私なら大丈夫なんだけどね。・・・でも、僕は無理」
「難儀な体というか、体質というか・・・ねぇ・・・」
「うっさい。俺も好きでこうなったんじゃない」
僕は千波弥を睨むように見る。千波弥は申し訳なさそうに視線を逸らした。
「・・・ごめんなさい」
「・・・別に。アイツは他になんか言ってた?」
「特に何もなかったわよ。短く分かったとだけ」
「そうか・・・」
僕達は、それ以降は話さず、無言で僕の家に帰った。僕達は家に着いてから、部屋の隅に荷物を置いた。千波弥がスマホを取りだして零夜に連絡する。
それから少ししてからインターホンが鳴った。僕は玄関に向かい、開ける。案の定、いたのは零夜だった。僕は零夜を家にあげる。零夜は家に上がって、リビングに向かい椅子に座った。
「で、天文部の、もっといえば今の職場体験のメンバーにバラしたというわけでいいんだな?」
「・・・うん。職場先に似たような人が社員にいて、そこから追及された。この際だからと思ってバラしたわけ」
「・・・・・・なるほどな。どこまでだ?」
「今日は事故から知奈が亡くなって、視野障害まで。知奈の名前は出してない」
「物語で言ったら序章の部分か」
「うん」
僕は零夜のことを見ながら頷く。零夜は大きくため息をついた。
「どこまで話すつもりだ?」
「・・・全部かな。今のところ」
「・・・・・・怪我は見せるのか?」
「大丈夫そうだと判断したらかな。多分癒音ちゃんは大丈夫だろうけど。亜未ちゃんと由理子ちゃんがなんとも言えない感じ」
「千波弥から見てもそうか?」
零夜が千波弥の方を向いて聞いた。千波弥は急に話しかけられて驚き、体をビクッと震わせた。千波弥は零夜のことを見る。
「そう・・・ね。癒音は大丈夫だろうけど・・・。亜未と由理子が少し不安ね。それか、見せるのなら癒音だけとか・・・」
「なるほど・・・。お前はどうする気でいるんだ?」
「さっきも言ったけど大丈夫そうならね。それこそ、皆が大丈夫だったらみんなの前で。一人・・・それこそ、癒音ちゃんだけだったら癒音ちゃんだけにって感じでね」
「今の感じだと琴吹のやつだけってことだろ?見せれそうなのは」
「そうね。優月が話していた時、そこまで驚いてなかったもの」
僕達は誰に、服の下の怪我を見せるか話している。話としては結構物騒。零夜や千波弥でさえ、見たくない程の怪我だからね。
青あざに古傷。二人には隠してるけど腕には今でもやってるリスカ跡があるし。
「分かった。お前が言いたいのなら俺は何も挟まない。けど、報告だけはしてくれ。じゃないと、こっちも困る」
「分かった。けど、基本は千波弥から行くと思う。・・・あまり触れたくないから」
「分かった。千波弥もそれでいいか?」
「仕方ないけどね。分かってるわ」
「それじゃあ、それで頼んだ」
僕達はそれから少しだけ、全く関係ないことを話し合った。
翌日。私は千波弥と学校に向かっている。零夜は先に行った。私達が学校に着くと、癒音ちゃん達がやってきた。
「昨日の続き、教えてくれるんだよね?」
「うん。教えるよ。いつがいい?」
「今といいたいけど、これからホームルームだし行きながらの時がいいかな」
「そうですわね。その方がまだゆっくり話せると思いますわ」
私達はホームルームのために一度別れる。ホームルームを受けて、外に向かう。外に出ると昨日と同じ人が待っていた。私達はその人についていって車に乗る。
「さてと・・・教えてくれないかな?」
「教えるけど・・・。大丈夫なわけ?昨日の時点で亜未ちゃんと由理子ちゃん、不安を感じたんだけど・・・」
「問題ないよ。覚悟はできてるから」
「問題ないですわ」
「そっか・・・。それじゃあ、千波弥。補足はお願い」
「えぇ。もちろん」
私は・・・。僕は一拍おいて、過去のことを思い出しながら話し始める。
「確か妹が亡くなったところまでだったね。その日から僕の身内はいなくなった」
「えっ・・・。祖父母は・・・」
「さぁ?少なくとも両親の祖父母共に会ったことがないね。たまたま聞いた話だと、両親は駆け落ちだったみたいだから絶縁でもされたんじゃないの?知らんけど」
「千波弥ちゃんもこのことは知って・・・?」
「知ってるわ。私達も優月の祖父母は知らないの。会ったことはおろか、話にさえあがったことがないのだから」
僕に身内がいないことを言うと、三人とも驚いていた。やっぱり普通じゃないよね。祖父母と会ったことが無いっていうのは。
「次行くよ?それから学校に戻ったけど、学校生活どうなったと思う?」
「えっ・・・。心配されたのでは?」
「アッハハ。実際はその真反対。心配なんてもってのほか。虐められたよ。2年間ね」
僕があえて、聞いて見ると由理子ちゃんが答えてくれた。僕は由理子ちゃんの回答を聞いて笑った。そして、僕が実情を言うと亜未ちゃんと由理子ちゃんは絶句。癒音ちゃんは目を伏せた。
「もちろん、私達も止めには入ったわ。けど・・・」
「流石に見てない所まではカバーできないからね〜。零夜や千波弥がいないところとかで虐められた」
僕は制服の上から怪我があったところの身体をさする。千波弥は顔を歪ませる。
「で、まぁもちろん先生とかに相談したよ?けど、案の定というかなんというか・・・。取り合ってもらえなかったね」
「ッ・・・やっぱり・・・」
「だからこそ、僕はほとんどの大人は信用できない。人の悪意ってモノにさらされたから」
「それは・・・」
「だからここに、この学校に逃げた。容姿も、声も何もかも偽って。それが今の私。女装している理由」
千波弥は目を伏せて、私から顔を逸らしている。亜未ちゃんと由理子ちゃんは悲哀の目を、癒音ちゃんは何故かこっちに近づいてきている。
えっ、なんで?車内なんだけど・・・。高速とかじゃないからシートベルトはしてないし、リムジンだから移動しやすいとは思うけど。
私が色々と不思議に思って考えていると、癒音ちゃんは私のことを抱きしめた。
「へ?な、なんで!?い、癒音ちゃん!?」
「辛かったんだね、優月」
「ッ・・・」
「!優月、涙が・・・」
「えっ・・・?」
僕は左手で顔に触れる。すると、こっちではもう、出ることがなかった涙が出ていた。




