六十五話目
「っと、時間やな」
「もうそんな時間なんですか?」
「おう。つーわけで、今日は終わりや。次は多分アソコか?ま、宮葉さん頼みましたわ」
「はい。では、皆様。移動しましょう。牧野様、ありがとうございます」
「ええんや。次の部署でも気ぃつけてな〜」
『ありがとうございました!』
私達は牧野さんにお礼を告げて、部屋を出た。さっきまで書いていたデザインは牧野さんが回収しているから手元にはない。とは言っても、写真にして収めておきたい人は撮っていいって言ってた。だから、由理子ちゃんは写真を撮っていた。
私達は次の部署に向かう。次は資格を持ってる人達の部署。
正直、私達って行く必要あるのかと思っている。
私達は隣の部署についたので、中に入る。中に入ると、朝の時と違っていた。みんな座っていてだべっている。
「本当にここの部署やるわけ?」
「理音様から言われておりますので」
「いや、確かに言われたけど実際することあるの?ここ。私が言うのもなんだけど時間も少ないしで無理よ、大抵のことが」
「ですが1時間は各部署やるようにと言われておりまして・・・」
「・・・社長にも困ったものね。とりあえず分かったわ。誰か、彼女達が座れるように椅子を持ってきてちょうだい!」
「俺行きますね。五つ・・・いや、六つか」
間宮さんの言葉に奥にいた男性が動いた。彼は奥からパイプ椅子を六つ持ってきて私達の前に置いた。私達はその人にお礼を言って座る。
「とは言ってもここの部署って本当にすることないのよね・・・。みんな専門の資格持ってるし、資格持ってないこの子達を行かせることもできないし・・・。誰か案、ないかしら?」
「適当に時間つぶしてもらえばいいんじゃないですか?どうせ、俺らもだべってるだけですし」
「そうね・・・5人ともそれでいいかしら?」
「私達はそれで問題ないけど・・・」
癒音ちゃんは宮葉さんのことを見る。癒音ちゃんの視線に気付いた宮葉さんが口を開く。
「理音様からはその部署に一任すると言われています。ですので、私からは特に」
「だったら時間になるまで自由にしていいわよ」
「わ、分かりました・・・」
間宮さんは他の人達の方へ向かって行った。宮葉さんは椅子に座らず、入口付近に立っている。
「それじゃあ、この際だしさっきのこと教えてよ」
「さっきのこと・・・?」
「あ、それなら私も気になりますわ」
「えっ・・・」
私は少したじろぐ。そして、千波弥のことを見る。千波弥は目を伏せて、少し俯いて首を横に振った。私は一度目を伏せてから、腹を括る。
「・・・千波弥、補足して。メインは話すから」
「・・・・・・分かったわ」
「ありがと。さて・・・どこから始めるべきかな・・・」
「アソコからじゃない?あの日、終わった日」
「まぁ、無難だね。それじゃあ説明するけど・・・・・・大丈夫?」
僕は三人のことを見る。やっぱり僕のこっちのことで驚いてる。まぁ、オンオフが激しいから仕方ないのかもしれないけどね。
僕は問題無さそうだと判断して話し始める。
「今から・・・確か八年前くらい?」
「そうよ。時期も今くらいよ」
「八年前・・・高学年入りたてくらい?」
「そうそう。それくらいだね。んで、その時に僕の提案で家族で出掛けたんだ」
「ちなみに優月の家庭は両親に優月。それと二つ下に妹よ」
「ん。それでね、出掛けたんだけどね〜・・・事故った。交通事故だった。相手のトラックの過失」
「「「ッ・・・!」」」
千波弥はサッと目を逸らした。千波弥も、零夜もあの日のことは僕の口から伝えていたから。それに、事故が起きた現場もあとから見に行ってる。
「そこで両親は即死。僕も頭から血が出てたっけ?唯一、僕と妹だけが息が残ってたんだ〜。僕と妹は近くにいた人に車から出された。その後のこともしっかりと覚えてる・・・!」
僕は右手で左腕を掴んで、あの日の事を思い出している。千波弥が僕の肩に手を置いた。それによって、少し落ち着いた。
「そして車からはガス漏れ。引火。火事。一瞬にして車が火に包まれたのは確認して、僕はそこで意識が落ちた」
「・・・・・・あとから見に行った私達でもあの日のことは嫌でもハッキリと記憶に残ってるの。鼻の奥に響く、火の匂いと血の匂い。規制線が張られていて、見えたのはブルーシート。その日のことを零夜と一緒に優月達から聞いたの・・・」
亜未ちゃんと由理子ちゃんは顔色が悪い。癒音ちゃんはよく分からない。理解してるけど、慣れているようなそんな顔。
「次に目覚めたのは病院。そこで零夜や千波弥達と会った。隣のベットに妹が横渡っていた。その日に警察がやってきて事の顛末を聞いた。それと同時に妹と自分の現状を聞かされた」
「妹ちゃんは手術しても生き残れるか分からない。成功しても人によってはすぐに死ぬ子もいるみたいで・・・。妹ちゃんはそっちになった・・・。優月も優月で今はちゃんと生きてるけど、代償ができた・・・」
「代償・・・・・・」
亜未ちゃんがつぶやいた。
僕は頷く。
「視野障害。今でも一部が見えてないわけ」
「まぁ、日常生活にとっても影響があるってわけでもないのだけど・・・」
「慣れた。だから言うほど不便に思ってない・・・かな?」
「な、慣れたって・・・それでいいですの・・・?」
「そうするしかなかった。だから慣れるしかなかった。正直、この話をしたら千波弥も零夜も顔をしかめるけどね」
「当たり前でしょう!?なんで平然のように答えられるわけなの!?」
「それが僕だから。それに・・・理由も分かってるでしょ?」
「ッ・・・」
「理由・・・?」
癒音ちゃんが首を傾げて聞いてくる。
僕は頷いた。千波弥は顔を、目線を逸らしている。
「でも、この話は今日はここでお終いっ!多分そろそろでしょ?時間的に」
「・・・分かってたのですか?」
「なんとなくだけどね。さっきの時間感覚で行くと私でも簡単に予測できるからね」
「なんか大切な話をしてたみたいだけどその子の言う通り時間よ。宮葉さん」
「えぇ。分かっております。それでは皆様、移動しますよ」
私が強制的に話を断ち切ったから、三人とも気になるような顔で見てきているけど私は続けない。
私がそんなんだから、聞くのを諦めた。
私達はお礼をしてから部屋を出た。




