六十二話目
宮葉さんのあとをついて、社長室の前まで戻ってきた。宮葉さんは扉をノックする。宮葉さんは中からの返事を待たずに扉を開けた。私達は困惑しつつも宮葉さんが入って行ったからあとについて入る。癒音ちゃんは慣れているのか動じることなく堂々と中に入っていった。私達が入ったのを確認するために理音さん達は顔を上げた。
「メインの部署は回ってきたみたいだね」
「はい。旦那様方に言われた部署を回ってきました」
「終わったってことはちょうどお昼時な訳ね」
桜空さんがこの部屋にかけてある時計を見ながらつぶやいた。私も左腕につけている腕時計で時間を確認する。時刻は12:08。確かにちょうどお昼時といえる時間だ。桜空さんと理音さんは座っていた椅子を引いて立ち上がる。
「それじゃあ、食堂に行こうか」
「食堂ですか・・・」
「多分場所が分からないのよね?」
「そうだろうね。部署の説明は回って見てきながらしてくれたけど、3階と1階の受付付近は行って無いからね」
「そうなのね。それじゃあ、4人とも私達についてきて」
桜空さんが私達についてくるように促してきた。私達は一度顔を見合わせてから桜空さんのあとをついて行く。私達は桜空さんのあとに続いて行く。彼女はこの部屋を出てから隣のエレベーターの前に立ち上の三角マークを押した。理音さんと宮葉さんの男2人は私達の一番後ろからついてきている。エレベーターのついた音が鳴り扉が開いた。私達、8人はエレベーターに乗って3階に上がる。3階について、私達は降りてから少し歩く。既に食堂自体は見えており、そこを目指して歩いている。
「ここの階は主に社員の食堂と休憩場所。あとは一部社員のために禁煙室があるくらいね。あとは自販機とかもあるわね」
「一通りはあるって感じですか・・・」
「そうね。そういう認識で問題ないわ」
私達は桜空さんに連れられて食堂の中に入っていく。食堂の中に入るとさっき各部署で見かけた人の何人かが既に椅子に座って食べていた。私達は食券機の前に行く。
「あるのはここに書いてあるものだけよ」
「・・・種類多くないですか?」
「まぁ私達も多いとは思うけど今日は比較的少ない方よ?」
「えっ・・・・・・。これよりも多い日が・・・?」
「あるね。それにこれって僕達が多くしたわけではないからね・・・。父さん・・・先代社長がここまで大きくしたのと同時に昼食も多くしたようで・・・」
「先代は食に関してもいろいろとありましたからね」
私達は理音さん達の話を聞いている。これよりも多い日があると言うのも驚いたが、これが昭和の時からであったことにも驚いた。けれど、それよりもずっと気になっているものがあって、食券機には名前があるのは見慣れた通りだけどその下。金額がかかれてある場所の欄には何もない。
「あ、あの理音さん。ここの食券機・・・金額が書いてないように見えるんですけど・・・・・・」
「あぁ、それね。ここの食堂はなんだろうと無料だから」
『はい!?』
「基本的にどこの支店もそのようになっているわよ」
「ど、どうしてですか?」
「皆は倉庫に行ったでしょう?そこにあった食料品とか覚えてる?」
「あ、あったけど・・・まさか・・・!」
「多分、越智さんの思うとおりだよ」
千波弥は何か分かったように声を上げた。周りを見てみると、由理子ちゃんも分かっているみたいだった。亜未ちゃんと私は分かっていない。癒音ちゃんはそもそも知ってるだろうから例外。
「賞味・消費期限ぎりぎりになってるのを使うからフードロス削減を兼ねてここで料理に変えているってことですか・・・!?」
「そうですね。越智様のおっしゃるとおりでございます。ここはフードロス削減のために使っております。そのため各支店、本社含めて食堂はそのようになっております」
「えっ・・・・・・!?」
「他にもパンとかは一人暮らしや子供が居る家庭には優先的にあげたりしているわ。希望者だけだけどね。他にも子供がいる家庭だったらお菓子とかも優先してあげたりしているわ。そのせいか毎年毎年倍率が高いわけだけどね」
「それは高くなりますね・・・・・・」
由理子ちゃんが感心したようにつぶやいた。私達はようやく食券機で選んでカウンターに持って行く。宮葉さんと桜空さんはひつまぶし。理音さんと癒音ちゃんがざるそば。私と千波弥はこの地域のB級グルメの焼豚玉子飯。由理子ちゃんと亜未ちゃんが鯛飯。それぞれがカウンターから受け取って全員で座れる席に着く。私達は手を合わせて食べ始める。
「そういえば優月、さっき東野さんから言われてたけど何言われてたの?
「えっ・・・」
「そういえば何か言われてましたね」
「そ、それは」
私はさっきの東野さんの言葉を思い出して凍り付く。同類。東野さんに言われた言葉。東野さんは私に向かってそういった。私も彼女と似たようなものだったから何を言われるかだいたい理解できるからあまり言いたくない。だから私は言葉を濁して由理子ちゃんと亜未ちゃんからの言及を逃れた。そのときの千波弥の顔は我関せずといったようで少し憎たらしかった。




