五十九話目
私達は廊下に出てすぐにあるエレベーターに乗って1階に降りた。私達はエレベーターから出て廊下を歩く。1階は2階の時と違ってガラス張りにはなっておらず普通の壁である。私達はそこを歩いていく。宮葉さんが扉になっているところで止まってドアノブに手をかけた。そして開けて中に入っていく。癒音ちゃんもその後に続いていったから私達も後に続いて入る。
「ここは見ての通り作業場となっております。主に技術職の方々が働いております。この階は各業種で分かれています。ここは主にアクセサリー関連ですね。実際にモノを作る部屋と設計を作る部屋と連結しております。他の作業場もここと同様のような形となっております」
宮葉さんが私達に見るように促してきてから説明してくれる。アクセサリーといったように私達の目の前には大きな機械がある。すると、宮葉さんが私達の前に完成したものを見せてくる。
「これは次出そうと考えいる商品の試作品となります」
それはネックレスにピアス。そしてイヤリング。試作品といったようにどれも1組しかない。私達が宮葉さんに渡された透明なケースに入っているそれらを見ていると声を話しかけられた。
「お嬢?お嬢じゃないですか!」
「・・・いつもやめてくださいって言ってるじゃないですか・・・・・・それに今は体験で来てるからちゃんとしてください」
「おっと、そうでしたね。その試作品について説明したらいいですかね?」
「そうですな。皆様、こちらの方はここ、アクセサリー部署の主任の牧野様です。牧野様、こちらは本日から金曜日まで職場体験に来ました学生方で、癒音様の御学友様でもあります」
『よろしくお願いします!』
私達は彼にペコリと一礼する。彼はそんな私達を見て軽く笑いながら言い放つ。
「そんな固くならんでもええんやが・・・。まぁ、よろしゅうな」
「それでは牧野様、ここの説明等をよろしくお願いします」
「おう。それじゃあまずはそっちの試作品からやな。そこにあるのは見た通りネックレス、ピアスにイヤリングや。今回のテーマは夏や。特に川をモチーフにしたから全体的に淡いブルーやろ?」
私達はそう言われてもう一度良く見てみる。確かに色は淡いブルーであり夏をイメージしやすい色である。
「ここから買った時に希望する物にはこの色に合う絵を彫ることができることにしてはるんや。これらを8月には出せるように今調整してる最中や。ちょうどこれかれ始めるし見ていくか?」
「えっ?い、いいんですか?」
「おう。問題無い。上司や社長からはうちの判断に任されちょるかんな。うちがいいと言うんならいいんや」
「そ、それでいいんですか・・・」
「ええのええの。それこそお嬢達にだって見てはるからな。今更や」
私達は癒音ちゃんの方に視線を向ける。癒音ちゃんは私達から逃げるように目線を逸らした。私達は一言お礼を言って牧野さんに着いていく。1番後ろに宮葉さんが着いてきている。
「おーい、お前ら〜。お嬢と学生らが来たぞ〜。制作過程を見せるから機械の前開けいや」
牧野さんがそう言うと機械の前に固まっていた社員の人達が退いてくれた。牧野さんは私達にそこへ行くように促してくる。私達は空けてくれた人達にお礼を告げて機械の前に立たせてもらう。
「そんじゃ誰でもいいから動かしてくれ〜」
「それなら私が。主任、これから作るのはリングですからね」
「おう。そんじゃあ頼む」
「は〜い」
すると機械が音を立てながら動き始める。輪状になっているリングに形が掘られていく。1つ何か形を作ったら上げて、また下ろして彫っていく。
「こんな感じで絵を彫っていくんや。絵はこっちで彫るんやが、形を作るんはあっちのデカイ機械や」
私達は顔を上げて牧野さんが指をさした方を見る。そっちにはこれの2倍くらいの大きさはあると思う機械だった。牧野さんはそれで形を作るといった。牧野さんはそっちの方に歩いていって完成したばかりのであろうものをとって私達に見せてくる。
「これが試作か外側になるやつや。これに彫ったり色付けたりしたものが商品になる。さっき見せた試作品が店先に並ぶ感じや。この際やし設計の方も見るか?」
「そうですな・・・せっかくなので見せてもらいましょうか皆様」
「そんじゃ着いてき」
牧野さんは奥の扉の方に進んでいく。私達も機械の前から離れて牧野さんの後に着いていく。彼の後について行って隣の部屋に入る。
「ここではパソコンのCADに設計を作っていっている。それこそ、今はほとんどがむこうに出っぱらってるがいつもならここで設計図を作ってるんや。今のだってここに・・・」
牧野さんはパソコンを叩いて、フォルダを開く。フォルダを開いてパソコンの画面を私達に見せてくる。その画面にはさっき作っていたであろうイヤリングの設計図があった。
「これがそうや。こんな感じで作って機械にデータを送ってつくるんや」
「そうなんですね・・・。これはどの部署も似たような感じなんですか?」
「せやな。どこもこんな感じで作ってるな。サイトが変わってるかもしれへんが」
「へぇ〜・・・。難しそう・・・」
「まぁ最初に見ただけやとそう思うやろうな。とはいえ入ってすぐに作れちゅーわけやないからな。流石に研修をしはってからやるから問題無い。それこそ工業出じゃないとすぐには作れんと分かってるから大抵の奴には研修をさせてはるんや。まぁ稀に即戦力になるやつもいるんやがな・・・」
「例えば、工業高校又は大学からの人や人数は少ないですが高専からですね。されど人数は少ないため基本は研修する人が主ですね」
宮葉さんが補足するように付け足して教えてくれる。私達はそれを聞いて少し驚いた。即戦力になる人がいるのもそうだけど研修があるから初心者でも自分の好きな業種につけるのだから。
「でもその場合って研修のお金とか時間とか結構とるんじゃ・・・」
「そうですね。ですが将来を見越したら少し研修させて使えるようにする方が最終的にメリットが大きいですからね。とはいえ最近はどこの支部も5月明けに退職する人が少なからずいて困っているのですが・・・」
「・・・・・・そんなブラックなんですか?」
「支部にもよるやろうがそれはないやろ。社長がそういうのを嫌ってるのもあるし、先代が時代に置いてかれるかってんでホワイトの最前を進んでいった会社やで。単に合わんかっただけやろう」
「それに西日本・東日本共に突発で支部に行っては確認したりしておりますから。抜け目はないと思います」
私達は徹底してブラック企業にならまいとする努力に驚いた。今でもここまでホワイトな企業はないのではないかと思うくらいには。それなのに何年間も続いてるのだからそれ程までに経営が上手いのだろう。
「牧野様、そろそろ・・・」
「次の部署か?」
「えぇ。時間的に次の部署に行く必要が・・・」
「分かった。それじゃあ他にも色々あるがその部署の言うことを聞けよ、若人よ」
『はい!』
私達は牧野さんの注意に応えて宮葉さんの後についてここの部署を出ていった。




