五十六話目
体育大会が終わって、振替休日が明けてからの平日の日。珍しく部室には私一人。だから、私は一人自分のパソコンを立ち上げて学校から送られてきている部活関係の仕事を片し始める。
ただ1人の部室、静寂だった空間にパソコンを叩く音だけが響いている。部活関係の書類を書き上げているだけだし、今はそこまで多くないからあっという間に終わった。
私はパソコンを開いたまま立ち上がってこの部室にある写真を纏めたファイルを取り出す。このファイルには歴代の天文部部員の集合写真や所属していた生徒名が乗っている。これを一人で見て想いにふけるのが最近の私の楽しみ。
毎年撮っているからここ数年分のには私も入っている。私はファイルを開いて1枚1枚ゆっくりと開いては見ていく。たまに文化祭でOB・OGの人達が訪れてくれるから知る意味も兼ねて。
このファイルの存在は部長と副部長にしか伝えられていない。なんでかは知らないけど最初に始めた部長達がそうしたからそうなってるんだと思っている。
この写真の中には毎年の合宿先での写真や、文化祭での写真。体育大会の部活動対抗リレーで1位になった時の写真。体育大会の写真はトロフィーをとった時しかないから多分取れなかった年のメンバーのはない。少し悲しいかな。
私は次々と捲っていき1番最近のページになる。1番最後の写真はつい先日の体育大会でトロフィーをとったときの写真。私はその後いちばん最後のページまで一気に飛ばして目を通す。
そこには歴代の天文部部長の名前がフルネームで、何年間務めたのか書かれている。名前の上には平仮名で読み方が。そんな先輩方の1番下にあるのが私の名前。
私はそれを指でなぞっていく。少し上には先輩の中でも特に親しかった人が。私が物思いにふけていると部室の扉がノックされた。
私は慌ててファイルを閉じる。そして元にあった、周りからじゃ見えない場所に置き直す。私はパソコンを弄っていた机、椅子に戻ってから扉の方に告げる。
「ど、どうぞ!」
少し慌ててたから声が上ずった。私が言うと扉が横にスライドして開けられた。廊下の光が入ってくる。私は入ってきた人物を見る。
「・・・癒音ちゃん」
「うん。それと・・・」
「体育大会以来ですね、優月さん」
「璃空ちゃん!」
入ってきたのは癒音ちゃん。その後ろからヒョコッと顔を出してきたのが璃空ちゃん。2人は部室に入ってくる。先に癒音ちゃんが入ってきて、璃空ちゃんが続いて入ってくる。璃空ちゃんは中に入ったあと開けた扉を閉めた。
「入部届けかな?」
「うん。体育大会の日に言って通りね」
「分かったよ。少し待ってて。取り出すから」
「分かりました」
私は椅子を後ろに下げて机の引き出しから入部届けの紙を取り出す。私は入部届けの紙を持って立ち上がり璃空ちゃんの元に向かう。
「はい、これが入部届けの紙だよ。この部は兼部も可能だからね」
「分かりました。ありがとうございます、優月さん」
「・・・プッ・・・・・・」
璃空ちゃんが私が差し出した紙を両手で受け取っていたら急に癒音ちゃんが吹いた。私と璃空ちゃんは不思議に思って彼女のことを見る。
「い、いや・・・その、ね?璃空がね・・・・・・」
彼女は笑いを堪えながら私達に告げてくる。笑いながら告げているから私は何を言いたいのか分からなかった。けれど、璃空ちゃんは分かったようで慌てて癒音ちゃんに詰めて行った。
「お、お姉ちゃん!?」
「私と違って璃空はボロが出やすいから素でいたらいいじゃん。現に今まで助っ人で入った部活には知られてるんだから」
璃空ちゃんは癒音ちゃんのところで狼狽えていたら、癒音ちゃんに言われたあと小さくため息をついて肩を竦めた。
「分かったよ。ということで、お姉ちゃんがあんなこと言うので言う通りにします」
「え?あ、う、うん」
「優月先輩、諸々教えて貰っていいですか?」
「あ、うん!」
私は雰囲気がガラッと変わった璃空ちゃんに驚きつつも説明を始める。
「火曜日は部員全員が集まる日でそれ以外は自由だよ。今日は火曜日じゃないから私だけだったわけだけど」
「なるほどなるほど・・・ホワイトボードにあるのは今年の文化祭の?」
「そうそう。天文部は毎年合宿でやったレポート的なのと小規模のプラネタリウムをやってるからね。ホワイトボードにあるのらプラネタリウムに何を映すかってのを書いてもらってるの。もし璃空ちゃんもあったら書いていいよ」
「何か思いついたら書かせてもらいます!」
璃空ちゃんは元気よく私にそう返した。私はそんな璃空ちゃんのことを見て妹感が否めなかった。多分、私にも妹がいたから余計そう見えるだけなんだろうけど。
「あとは・・・癒音ちゃんにも関係あることだけど夏休みになったらどこかのタイミングで合宿をやることになってるから。夏休みは県外ね」
「おっけーおっけー。日にちが決まったらまた教えてくれるんでしょ?なるべく開けるようにはしておくから」
「うん、お願い。そして、先に璃空ちゃんにだけ伝えておきたいことがあって・・・」
「?私にですか・・・?」
璃空ちゃんは私の方に振り返って首を傾げながら聞いてくる。私はそんな璃空ちゃんのことを可愛く思い、微笑みながら頷いた。
「私達は来年で3年でしょ?だから夏合宿で誰を次の幹部にするか話し合うの。もしかしたら璃空ちゃんもなるかもね」
「つまり私が部長かそこらの幹部職につけるかもしれないから心構えだけしといてってことですね〜」
「さすが“中等部の天才(天災)”。話が早いね」
「・・・・・・なんか言葉のニュアンスに違和感を感じますが、まぁ分かりました。その時はよろしくお願いします」
「うん。さてと・・・・・・入部届けはもう書ける?」
「あ、少し待ってください。今から書きますから」
璃空ちゃんはカバンの中から筆箱を取り出して、ボールペンを取り出した。そのボールペンを使って彼女は入部届けの紙に名前と日付を書いていく。彼女は書いたあと私に渡してきた。
「ありがとう。それじゃあ、時間も丁度いいし今日は私もこれで帰ろうかな。ここも閉めるから2人も出てね」
彼女達は私が言うとカバンを持って廊下に出ていった。私は窓の鍵やエアコンがついてないかの最終確認をして、部屋の電気を消して廊下に出る。廊下に出て部室に鍵をかける。癒音ちゃん達はまだ廊下に残っていた。
「それじゃあまたね。璃空ちゃんは近いうちに部活で自己紹介お願い」
「は〜い。せーんぱいっ、それではですっ!」
彼女はニコッと私に笑顔を見せて癒音ちゃんの方によって靴箱のほうへと歩いて行った。私はそれを見届けて職員室に向かった。




