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五十一話目






私は零夜に運ばれて駿人さん、麻波さんがいるところに連れて来られた。連れて来られた場所には駿人さんと麻波さんの他に私達より少し年上の美人な人と、小学生高学年くらいの女の子、そして眼鏡をかけている男性の三人が居た。私は朝に挨拶を済ましている駿人さんと麻波さんには軽く会釈だけする。

会釈したあと私は零夜に言って下ろしてもらってから、まずは男性の元に行く。


「お久しぶりです、零翔(れいと)さん」

「久しぶり、優月。ちゃんと生活できている?」

「はい。特に困ることなく生活してますよ」


私は零翔さんに聞かれたことに対して笑顔で答える。これは偽ってない、本当に心から感じていることだから。けど、その言葉に対して後ろから否定するような声色で千波弥が声をかけてきた。


「何が困ること無く・・・よ。それはサプリだけで済ましている日もあるからでしょう?この前行った時に見たけどそんなに多く料理してないでしょうに」

「な、何のことでしょうか、千波弥さん・・・」


私は目を逸らしながら答える。


「まだそのサプリ癖抜けてないのね・・・」

美玲(みれい)さん・・・」

「そうよ、玲姉。優月ったらまだサプリを飲んでるみたいなのよ。ちなみに優月が週に何日間サプリだけで済ましていたか覚えてる?」

「アタシが最後に聞いた時は週に2回。平日は朝昼晩、ちゃんと食べてたはずだけど・・・あぁ、たまに朝だけ抜くことがあるって聞いたわね」


私は美玲さんが言ったことを聞いて、今と比べたらそりゃいろいろ落ちるよねとは思ってしまった。確かそれくらいの頻度だったのはまだこの学校に入学する前の小学校の時だ。あのときは虐めが一番ひどかったからちゃんと食べる必要があった。怪我とかを治すために体力が必要だったから食べてきた。


けど、この学校に入ってきて虐められる心配が無いから最初は跡とかをなくすために食べて居た。けれど、今はあまり食べる必要を感じれなくなったから減っていった。それに今では治ったといえ、古傷のような形で至る所にあり、治らないと分かっているから余計に。


「今は週の半分近くサプリだけで済ましているみたいよ」

「はい!?半日を!?サプリだけで!?」

「みたいよ。優月自身がそう言ってたわ。ね、優月」

「・・・・・・そうだけど?」


私は美玲さんの驚きをよそに千波弥の質問に肯定と何か悪いといった風に返す。実際私はサプリだけで済ますのに対して全く悪気がないため悪びれる様子もない。


「だとしてもいいかげん元に戻せよ」

「はぁ・・・」

「零夜兄、どういうこと?優月兄がどうかしたの?」

紫水(しすい)ちゃん・・・」


零夜が千波弥の妹である紫水ちゃんを腕にぶら下げた状態でこっちにやってくる。紫水ちゃんは零夜に私のことを聞いてくる。私は紫水ちゃんのことを見てから顔を逸らす。さすがに紫水ちゃんに私のことは知ってほしくないから。この子には皆そう思ってるからかそこは誰であっても濁す。


「何でもないよ。ただ皆がわ・・・僕のことを心配してくれてるだけだからね」

「優月兄どこか悪いの?」

「ううん、そうじゃないよ」

「ならどうしてなの?」

「そ、それは・・・」


私は千波弥達に助けを求める。すると、少し離れたところでこっちの様子を見ていた麻波さんがこっちにやってくる。


「紫水、お姉ちゃん達は大事なお話をしてるからこっちにこようね~」

「は~い」


紫水ちゃんは麻波さんの方にタタタッと走って行った。私は麻波さんに向けて少し頭を下げる。麻波さんはジェスチャーでこの話をするなら少し離れたところでって言ってきた。私達は無言で頷いてこの場から離れる。私達は校舎に行って2階の通路で話す。ここならグラウンドの様子も見れる。それに基本的に校舎のほうは誰も来ないし見ない。だから、内緒話をするにはちょうどいい。


グラウンドでは中等部の全員リレーをしている。そんな中、さっきの続きをするように美玲さんが聞いてきた。


「優月、怪我の方は・・・?」

「・・・・・・この通り」

「ッ・・・・・・!!」

「・・・治りそうにない。多分跡になる」


僕は体操服の上半身を下着と一緒に少しだけあげる。めくれた服と下着の下から見えるのは小学生時代のいじめの跡。縦・横・斜めそれぞれいろんな形で線のような跡があったり、他にも一部が円のようになって青くなっている青あざがチラホラと。特に目を引くのが右の脇腹付近にある一際大きな青あざ。


こうなったのもあの日から。両親を失い、妹も失って、虐められるようになってからできたもの。自分が一番嫌いな、一番消したい過去。黒歴史というよりも生理的に受け付けない、少しの間見ているだけでフラッシュバックする、忘れたくても忘れられない記憶。私は服を下ろす。


「・・・・・・この際だから言うけど今は食べるのさえつらい」

「えっ・・・・・・!?」

「小学生の時に虐められるようになって食べ続けていた日々が、あの日以降に感じるようになった恐怖と絶望感が作っているだけで、食べているだけで思い出すから。だから僕はサプリの頻度が多くなってるわけ」

「・・・・・・そうか・・・」


この場はとても重苦しい雰囲気に包まれた。僕たちは誰も話さない。ただただそこでグラウンドの様子を見ているだけ。そんな空気の中、昼食のための休憩時間になるまで誰も話さずに時を過ごし、放送が入ってこの校舎から僕たちは去った。


「・・・・・・優月先輩にそんな過去が・・・!?」


この話を隠れて聞いていた人物に気づかないまま。






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