五十話目
私が零夜によって米俵抱き・・・もとい、お米様抱っこで運ばれていると右横から声をかけられた。千波弥は零夜の左隣にいるため零夜の体を挟んでヒョコッと顔を出して声をかけられた方を見る。私もお米様抱っこの状態で右に顔を向ける。顔を向けた先にいたのは青のハチマキを頭に巻いている詩雨先輩だった。
「詩雨先輩?どうかしましたか?」
「ううん、ただ見かけたから声をっと思ってね。あと今日話してなかったからついでにね」
「なるほど・・・そういう訳だったんですね」
「そうそう。優月ちゃんはそれ・・・・・・どうしたの?去年の体育大会の時と同じように運ばれてるけど・・・」
「詩雨先輩、今まで通りのやつです。毎度のごとく抵抗したのでこうしてます」
詩雨先輩は千波弥の言葉を聞いて苦笑い。なんとなくだけどまたなんだって思ってそうな表情に見える。私はそんな空気が、雰囲気が嫌になって逃げるように話題を変える。そのために私は、中等部・高等部ともに最後にやる種目について聞く。
「と、ところで詩雨先輩。最後のダンスの相方は決まってるんですか?」
「うっ・・・!い、痛いところついてくるね・・・」
「その反応的に決まってなさそうですが・・・・・・」
零夜の心配そうな声と視線が詩雨先輩に刺さったのか、また小さくうめき声を上げた。私と千波弥も心配の目で見る。
「というかそもそも何ですけど・・・詩雨先輩の代にも何人か天文部の先輩達いましたよね?なんで誘わなかったんですか」
「耳が痛い話です・・・」
「いやそういうことを聞いてるんじゃないですから。その先輩達に聞かなかったんですか?」
「そ、それがね私が誘おうとしたときには皆既に決まっていて・・・・・・」
「「・・・バカですか?」」
異口同音で私と千波弥が詩雨先輩に向かって言った。詩雨先輩は顔を歪ませる。
(その顔するなら早めに言えば良かっただけじゃ・・・こっちに顔出しする前に)
私は詩雨先輩を哀れむような目で見つめる。すると、詩雨先輩はとうとう崩れ落ちた。
「・・・どうするつもりなんですか?一応同性や下級生でも問題ないですけど・・・」
「うん・・・本当にどうしようかな?」
「いや私達に聞かないでくださいよ。あと数時間もないんですよ??」
「・・・・・・優月ちゃん出てくれない?」
「わ、私がですか!?」
私は詩雨先輩言われて驚く。確かに自分でも言ったとおり同性でも下級生でもいいけどまさかそうくるとは思ってなかった。私のそんな心境を知ってか知らずか詩雨先輩は言葉を紡ぐ。
「・・・・・・そもそも優月ちゃん、私に借りがあるよね」
「うっ・・・・・・そ、それは・・・」
「「え/は!?」」
詩雨先輩が言う借りっていうのはこの前の合宿の少し前のこと。合宿のための書類関連で借りとして手伝ってもらったこと。零夜達には他のことを任せてたから頼れるのが詩雨先輩しかいなかったから借りとしてなら手伝うという条件の下でやった。だから私は詩雨先輩に借りがあるからあまり強く言えない。
「わ、分かりました・・・。け、けどこれで貸し借りなしですからね!!」
「分かってるよ。それじゃあダンスの相方、よろしくね」
「・・・分かりました」
詩雨先輩はそういって去って行った。詩雨先輩が去ったところで零夜と千波弥は歩き始めた。私は変わらず運ばれている。運ばれながら2人がさっきの貸し借りの話を聞いてきた。私は特に隠すことでもなかったため嘘偽りなくすべてをそのまま白状した。私が白状しきると2人はため息をついたあと、私に告げてくる。
「まずは忙しくても最初は俺達二年組を頼れ。詩雨先輩だから良かったものの・・・」
「それともそんなに信用がない?」
「そ、そんなことないよ!」
「だったらまずは俺達を頼れ。分かったな?」
「・・・・・・はい・・・」
私は二人に言い聞かせられるように言われる。これに関しては零夜と千波弥が正しいため私は素直に聞き入れる。私が雰囲気から分かるように落ち込むと千波弥が零夜の左隣から右隣に移ってきて歩きながら私の頭を優しくなでる。私は急になでてきた千波弥のことを見る。
「優月は皆に負担にならないようにそうしたのよね。別に私達は責めている訳じゃないから」
「うん・・・・・・」
「ただもう少し相談してほしかっただけなの。それに・・・・・・優月は変わってないわ」
「変わってない・・・?」
「えぇ。誰かのために優しくなれるのは優月の長所で変わってないところよ。零夜もそう思うでしょう?」
「まぁ・・・な」
「・・・・・・そっか」
変わってない・・・ね。二人がそう言うならきっとそうなんだろうね。本当に私は二人に、幼馴染に恵まれている。だから、私はまだ保っていられる。




