四十六話目
私は特に行く場所も無く、次の出番まで時間が結構空くから校内をふらついている。周りを見ると、中等部・高等部関係なしに大概の親が来ていて学生達と話している。
(まぁ、私はもう身内がいないから羨むことしかできないんだけど・・・)
私は周りに少しの羨望を向けてから邪念を振り払うように首を横に振る。グラウンドの方では中等部の全員リレーをしているからグラウンドの外周にはその保護者が固まっている。
「いいよね〜・・・。あぁ、やって来てくれる親がいるっていうのは・・・・・・」
私がそう呟いた瞬間、後ろから肩をポンポンと叩かれた。私はビクッと体をふるわせて後ろを振り返る。私に後ろから肩を叩いたのは由理子ちゃん。
「ッ・・・!?ゆ、由理子ちゃん・・・!?き、急に後ろから叩くのはやめて!?怖いし、寿命が縮まるから!?」
「あまりそれは無いとは思いますが・・・。まぁ悪かったですわ」
私は顔には出してないけど心の中はバクバクだ。さっき呟いていた言葉を聞かれたんじゃないかと。由理子ちゃん達には私の小学校の時のことは全く伝えてないから、聞かれてたら少しヤバい。
「でっ、で?わざわざ私を呼び止めて何か用があったの?」
「そうですね。私の両親のこと覚えていますか?」
「確か・・・華道の師範でもある・・・?」
「えぇ」
「覚えてるけど・・・・・・。それがどうかしたの?」
私は首をかしげて由理子ちゃんに聞く。確かに私も何度かお会いしたことがあるけど・・・。それに、何度か天文部の私達の学年全員でお泊まりさせてもらったこともあるからお世話になってるけど・・・。
「その・・・・・・ですね・・・」
「由理子ちゃん?」
どこか言い淀むように由理子ちゃんは話す。私はそこまで言い淀むことを不思議に思い名前を呼ぶ。少しの不安と心配を含めた声で。
「お父様が優月ちゃんに会いたいと言いまして・・・」
「奏汰さんが?」
「えぇ。優月ちゃんが良いのなら会ってくれませんか?」
「橋本くんは居ないの?いつも呼んでるみたいだけど・・・」
「居ますけど・・・お父様はそれよりも優月ちゃんと会って話したいみたいですよ」
「よく分からないけど分かったよ。行くよ。由理子ちゃんに着いていけばいい?」
私が由理子ちゃんに聞くと、由理子ちゃんはコクリと頷いた。由理子ちゃんは私に背を向けて歩き出した。私も置いていかれないように着いていく。
私達は校舎の方に歩いていく。由理子ちゃんの親は分かりやすく校舎に入ってすぐの日陰になっているベンチに腰を下ろしていた。近くには橋本くん一家もいた。私達は近づいて、奏汰さんに声をかける。
「奏汰さん、何か私に用事があるみたいですけど・・・」
「・・・優月ちゃんか。悪いね、急に呼んだりして」
「いえ、その点はいいんですけど・・・」
奏汰さんは周りを警戒するように目線を走らせた。そしてベンチから立ち上がって私に告げる。
「ここでは話しづらいから少し場所を変えよう」
「・・・分かりました」
私達は人気のない、学校の図書館に向かう。図書館なら、体育大会の間は基本誰も来ないから。私達は向かい合うように席につく。
「それで・・・話とは?」
「・・・いい加減君には言おうと思ってな。優月ちゃん・・・いや、優月“くん”」
「ッ!?」
私は驚く。癒音ちゃんと同じようにあとから私に気づいたのかは分からないけど、くん呼びをしたってことは私のことを知っている。男の子であることを、知っている。
「驚くな・・・というのは無理な話か。君の父親と私は幼馴染でね。アイツは万が一死んだら見守っていてくれと言われててね」
「だ、だから私達が泊まることに対しても特に嫌悪とかなく・・・?」
「そうだね。君が、そうなったことに対しての心配とかもあるがちゃんと生きているかどうかを見るためでもあったんだよ」
「えっ・・・!?」
「アイツは学生の時から浮いててな。いつ死ぬか分からないとか言って親しいヤツらにお前のことを頼んでたんだ」
私はその事を聞いて驚く。あまりお父さん達の交友関係は知らないからどれだけの人が知ってるかは分からないけど何人か心当たりはある・・・。
「そ、それをどうして今・・・?」
「ある程度時間も経ったから話していいと思ったんだ」
「な、ならなんで・・・今になって・・・!」
私は八つ当たりだと分かっていながら奏汰さんのことを睨む。どうして今になって、それを言うのか。助けてくれるならあの時が1番良かったのに・・・!
そんな私の心情を知ってか知らずか、奏汰さんはフッと優しい笑みを浮かべて私のことを見つめる。
「確かに君の思いはご最もだ。だがな、私達はアイツらが亡くなってから知ってる人を集めて話し合ったんだ。そして、話し合った末に出した結論はに基本は関わらない。遠くから見守るだけにしようってなったんだ」
「ッ・・・そんなッ・・・!どうして・・・!」
「さぁな。今になってはそれすらも分からない。そもそも私が出した案ではないからな」
「ッ・・・!」
私は椅子を後ろに押し出して立ち上がり、両手を机に置いて聞く。奏汰さんに答えられて私は手を血が出るばかりに握りしめる。
『ただいまの結果をお知らせします。1位・・・』
そんな中、放送で全員リレーの結果が伝えられ始めた。
「・・・すみません、次なのでそろそろ行きます」
「・・・・・・あぁ」
私は奏汰さんに一礼してから椅子を元に戻して図書館から出て行く。そして、グラウンドの方へと走って向かって行った。




