三十四話目
あの後、大玉送りを見て水雫ちゃん達の学年の全員リレーになった。でも、さっき水雫ちゃんが言ったように水雫ちゃんのクラスが1位で終わった。次は2年生である私達の番。
「勝てると思う?零夜くん」
「さぁな。リハの時も結構接戦なことが多かったしあまりじゃないか?」
「・・・・・・確かに」
「私はあまり勝ち負け気にしないけど・・・零夜。優月。2人に負けるつもりはないから」
私が零夜と話していたら千波弥が横から声をかけてくる。千波弥も含めて、私達3人はあまり勝ち負けに関してさほど興味は無い。
けれど、千波弥から、幼馴染からそう言われて何も思わないわけじゃない。
「私だって負ける気はないよ、千波弥ちゃん。それに忘れたの?50m走だと私の方が早いんだよ」
「優月は何か一言言わないと済まないのかしら?それに、今回はリレーよ。個人の速さも大切だけどあまりあてにならないわよ」
「だとしてもだよ。私が早いことに変わりないんだから」
「はぁ〜・・・・・・ホントああ言えばこう言う・・・」
「まぁまぁ、2人ともその辺で・・・な?それはこの後決着を付けたらいいから」
私達の言い合いに零夜が止めに入る。私達は零夜に止められて、少し距離をとらされる。けれど、私と千波弥はお互いのことを見つめあっている。
「なんか火花が見えるんだけど・・・。ここ現実だよね・・・?」
「シッー!亜未ちゃん、そこに触れてはダメですよ」
少し離れたところから亜未ちゃんと由理子ちゃんの会話が聞こえた。どうやら私と千波弥の間に火花が見えるみたい。
「とりあえずそろそろ始まるからそれくらいにしておいてくれ」
「はーい」
「これはリレーで」
「もちろん。負けないから」
「それはこっちのセリフよ」
私達はそう言ってお互い目線を外して前を、グラウンドを見る。そうして、少し待機していると放送が流れる。私達の番を促す放送。私達はそれを聞いてグラウンド内に向かっていく。
「さて、零夜と私はこっち側だね」
「あぁ。確か琴吹のやつもだろ。後は全員向こう側だな」
「結構偏ったよね」
「そんなもんだろ。俺達が決めた訳じゃないからな」
「それもそうだね」
私達は第一体育館側に並ぶ。残りのみんなは海側・・・もとい学校外の方のグラウンド内に並ぶ。
「勝ちたいね・・・!」
「だな。やるからには全力で・・・!だろ?」
「うん。と、そろそろ始まりそうだね」
私の言葉に零夜は反対側を向く。私も反対側を向いてどうなっているか見る。第一走者がクラウチングスタートの状態になっている。
すると、何故かピストルを打つ教師が第一走者4人が並んでいる前に歩いていく。そして、何故か砂の上にうつ伏せで転がってピストルを走者の方に向ける。
───パァンッ!
───ズザザッ!
教師が打ったピストルに合わせてクラウチングスタートの状態で待機していた4人の走者が同時に胸を押えて倒れたフリをする。
すると、まぁ案の定周りで見ていた学生はドッと笑う。私も声には出してないけど笑いそうになったしね。
そんなことをした教師は立ち上がってノリに乗ってくれた4人の走者に礼をしてからグラウンド内に戻る。それを確認したのか走者の4人はクラウチングスタートの状態に戻る。
───オンユアマーク、セット!
静寂がグラウンドを包み込む。
───パァンッ!
第一走者がスタートした。周りを含めた学生は走者のことを応援する。私も例外に漏れず走者のことを応援する。
私達の全員リレーは男子が1周走って、女子が半周する。私の場合は、この学校で女子として通っているから半周である。
「さすが第一走者。特に問題はないけど4人とも早いね」
「あぁ。これなら途中でコケないかどうかが決めてになりそうな気がするな」
「そうだね。まぁ、誰もコケずに怪我がないのが一番なんだけどね」
「それは言うな」
零夜はそう言って前に詰める。私もそれに習って前に詰める。今は半分の二十走者目。今の順位は4組が1位で、1mくらい離れたところで私達3組。そこから5m程離れて1組がいて、そこから3mくらいの場所に2組がいる。まだまだ逆転が可能な範囲。
この間に私達の中で走ったのは、亜未ちゃんと由理子ちゃん。癒音ちゃんに橋本くん。この後に零夜が走る。だから零夜がレーンに入っている。
零夜はやってきた走者からバトンを受け取る。そして、一気に加速する。未だに4組とは少し距離があるけどその差を零夜はドンドン詰めていく。
「はっやいな〜」
私は零夜の速度を見てそう呟く。こっち側には私以外もう誰もいないから独り言でしかない。
「私も準備しないとね」
そう呟いて零夜が4組の子抜いたのを確認する。それからすぐに次の走者に渡す。私はアンカーの1つ手前。だから結構大切なところなんだよね。プレッシャーがあるのが嫌だけど。
私は応援しながら自分の番になるまで待機する。そうしてとうとう自分の番になる。私は外周の白線を引かれているところに立つ。私達のクラスは今のところ1位。私は走ってくる子を見て走り出す。
私は後ろに手を出してバトンを受け取れるようにする。私のひとつ前の子が渡してくる。
「頼んだ!」
「うん!」
私はバトンを受け取ってから一気にスピードを上げる。特に落とすこともなく、コケる感じもなく外周を走っていく。私は皆が少し距離を離していたおかげで、距離を詰められることなく走りきる。
「トップスピードで頼んだよ?」
「任せろ!」
私はアンカーの男の子にバトンを渡す。その子はいい声で返してくれる。私はそれを見届けて一度グラウンド内に入る。
アンカーの子はそのまま詰められることなくゴールテープを切った。
私はそれを見届けて息を整えるために歩きながらみんなの元へ戻って行った。




