三十五話目
私はみんなの元に戻ってきて、亜未ちゃんと由理子ちゃんと手を合わせる。右手で亜未ちゃんと、左手で由理子ちゃんと。そして、千波弥の方に向く。
「私達の勝ち!」
「いい笑顔で言わないで。腹立たしいから」
私が満面の笑みで千波弥のことを見てピースサインで言う。すると、千波弥は怒った表情はしてないけど冷たくも目に怒りを宿している。
「流石に私も命が惜しいからこれ以上はしないよ」
「優月が私のことをどう思っているかよく分かったわ・・・」
千波弥はため息を吐いて眉間に手を当てる。私は嫌な予感がして冷や汗をかく。千波弥が私の方を向いて何か言おうとしたところで放送が鳴った。
『ただいまより昼休憩に入ります。生徒及び教師の皆さんはこの間に昼食をお取りください。次は13時20分から開始いたします』
私達は顔を見合わせる。千波弥は今の放送で毒気が抜けたのか肩を竦めた。
「どうします?どこか室内にでも移動しますか?」
「私はどっちでもいいけど・・・皆は?一応天文部の鍵はあるけど・・・」
「それならそこで食べようよ」
「そうだね。それじゃあ行こっか」
詩雨先輩の言葉で私達は立ち上がって天文部の部室に向かって足を進める。天文部は特別棟だから校舎より少し離れている。けど、あそこならエアコンを入れてるから外にいるよりかは涼しいと思う。
「そういえば蒼乃くん達を誘ってないけど大丈夫なの?」
「問題ないでしょ。もし来るなら来るだろうしね」
「そっか・・・」
私の言葉に癒音ちゃんは呟く。それでも少し罪悪感があるのか顔をしかめている。私達は向こうは向こうで食べると思ってるからあまり気にしてない。
これも今年入った癒音ちゃんだから思うことなんだろうね。
私達は特別棟に入って階段を上り天文部の部室に向かう。私達は天文部の部室の前に着く。私が前に出て鍵を取り出す。取り出した鍵を扉の鍵穴に刺して回して開ける。
───ガチャ
私は鍵を抜いて扉に手をかける。そして、横にガラガラッと開ける。私が中に入って、その後に続くようにみんなも入ってくる。
「涼しい・・・。どうして?」
「私と優月で入れておいたの」
「・・・・・・来ること分かってたのですか?」
「ううん。けど、あればくるだろうなって思ったからね。だから千波弥ちゃんと一緒にエアコンを入れておいたの」
亜未ちゃんが入ってみんなを代表するように言った。周りのみんなは頷く。それに対して千波弥が椅子を持ってきながら答えていた。すると、由理子ちゃんが机を運びながら聞いてきたから、私がエアコンの温度を調整しながら答えた。
「ありがたいけど使わなかったらどうするつもりだったの・・・?」
「その時はその時だね。正直言ったらあまり考えてなかったしね」
「部長がそれでいいんですか・・・?」
「それで回ってるんだから問題ないでしょ」
水雫ちゃんが恐る恐る聞いてくるのに対して私は今までのことから開き直る。その間に椅子や机の準備は終わったようで私は椅子を引いて座る。
みんな椅子に座ったり机がいる人は持ってきたりとバラバラ。私は椅子に座ってバックを膝の上に載せる。その中から登校中にコンビニで買ったパンを取り出す。
私がパンを取り出すと千波弥はとても驚いた顔をした。
(確かにいつもサプリとカロリーメイトあたりで済ますけど皆がいる時は違うからね・・・・・・)
そんな千波弥を見て私は頬を人差し指で撫でながら苦笑い。
「・・・優月ちゃん、それで足りるの?」
「大丈夫ですよ、詩雨先輩。足りますので」
詩雨先輩が私の昼食を見て驚き、聞いてくる。私はパン1つしかないからね。いくらダイエットしていようが、女子だろうとあまりにも少ないよね。やっぱり・・・。
「そ、そう?それならいいんだけど・・・」
詩雨先輩は驚きつつも納得してくれたのかそれ以上は言ってこなかった。
私達は手を合わせていただきますをして食べ始める。一部は弁当を、他は買ってきたパンやらおにぎりやらを食べている。
「そういえば詩雨先輩のクラスはこの後の全員リレー勝てそうなんですか?」
「私のクラス?私のクラスはなんともだね〜。最下位にはならないとは思うけどコケたりしたらどうなるかは分からないからね」
詩雨先輩は苦笑いしながら答えてくれる。私は食べながら声を上げる。
「後は全員リレーしてから部活対抗リレーして、中等部のダンスだっけ?」
「そうよ。癒音どうせ撮るんでしょう?」
「うん。撮らないと勿体ないからね」
癒音ちゃんはキラキラした目で言う。私はそれを見て少し苦笑いをしながら考える。
(私にはもういないけど・・・家族っていいよね。こうやって見てくれるんだから)
私は表情に出さないように取り繕ってみんなのことを見る。私はどうしても周りから一歩引いてしまう。未だに怖いのか、一定のラインを引いてしまう。
(まぁ、今はそんなことはどうでもいっか)
私は改めて皆と談笑する。
「優月は大丈夫なの?またリレーに参加するけど・・・」
「ただでさえ昼休憩で時間があるんですよ?問題無いと思いますよ。体力もちゃんと回復すると思いますし」
「それに零夜もいるから問題ないわよ。文化部しかいないのだから早い人は中々出ないわよ」
「・・・そうだね」
亜未ちゃんは水雫ちゃんと千波弥から言われて納得したようで声をあげる。
それから私達はある程度の時間が経つまで、食べ終わったあとも天文部の部室でだべっていた。




