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三十二話目







「私もそろそろ準備しないとね」

「そうですね。もうすぐ代表リレーも終わりますからね」

「うん。だから皆、さっきも言ったけど応援よろしくね」


詩雨先輩に言われて私達は返事を返す。それを聞いた詩雨先輩はしきりに頷きながら入場門の方に歩いて行った。


「勝って欲しいね」

「そうですね。けど、私達からしたら負けて欲しいって気持ちもなくはないんですけどね」

「水雫、それは言ってはダメよ」

「でも千波弥ちゃん。私達からしたらそう思うのは仕方ないんじゃない?」


癒音ちゃんが千波弥に言う。実際に紅白の分け方だと私達3組と詩雨先輩の1組は一緒だから勝ってほしい。


けれど、癒音ちゃんや千波弥の2組、水雫ちゃんの4組は紅白だと相手になるからそう思うのも仕方ないと思う。


「それはそうですね。私達は一緒ですが、鷲峯さん達は相手になりますからね」

「そればっかりは仕方ないよ。みんなクラスが違うんだしね」

「とはいえ私達の学年が1番多いけど団体とか個人とかでは真剣にだけどね〜」


亜未ちゃんがコロコロと笑いながら言う。それに対して私達、高等部2年組が頷く。そこに水雫ちゃんが口を挟む。


「でも、実際多いですよね。先輩達の学年に。その分なんかこういうのだと仲違いとかありそうですけど実際どうなんですか?あったりするんですか?」

「少なくとも私と千波弥ちゃん、零夜くんはないね。元々小学生からの幼馴染ってのもあるけど・・・」

「私を含め、3人があまり勝ち負けを気にしないっていう性格なのもあるわね」


水雫ちゃんに聞かれて私と、継ぐように千波弥が答える。千波弥が答えたら水雫ちゃんも含めた何人か驚いた表情になった。その中で代表して水雫ちゃんが答える。


「えー。意外です。特に千波弥先輩は。千波弥先輩って勝手なイメージですけど結構気にする気がしてました」

「え?みんなの千波弥ちゃんのイメージってそうなの?」

「まぁ、雰囲気だけでいえばそう思うのも仕方ないわよ」

「ちゃんと知ればあんまり気にしてないことが分かるんだけどね」


千波弥が自虐のような感じで自分のことを言うと、癒音ちゃんがフォローするように言った。正直雰囲気のところはあまり否定できないからね・・・・・・私も。


「と、そろそろ詩雨先輩達が走るね」

「そうですね。後で詩雨先輩にも聞いてみてもいいかもしれませんね」

「ですね。でもまぁ、一旦応援しましょう」


私達が話しているうちに先輩達の学年の準備が終えて何グループかが足を紐で繋げて待機している。教師がグラウンドの外に下がって、代わりに委員の子が前に出て笛を鳴らす。


それと同時に第1走者になっているグループが動き始めた。


「やっぱり息を合わせる必要があるから展開はゆっくりだね」

「それはそうでしょう。中々テンポよく行けることはないと思うわよ」

「確かにね。・・・・・・来年、私達もこれやるんだよね・・・」

「特に何も変わらないければそうですね。先輩達はそうなりますね。まぁ、私も2年後にはやりますけど」


私達は来年やることに対して憂鬱になりながら話す。今はまだ詩雨先輩は動いてないからこうして会話できている。


けど、多分詩雨先輩が動くことになったらしっかりと皆見るんだろうね。詩雨先輩は最後の7組目。団体種目だからアンカーになっている。


各グループ、グラウンド内をコーンに沿って1周することになっている。基本的にゆっくりだから最初の組はあまり差ができない。差が顕著に出てくるのは3組目あたりから。


「正直に言って最初の2組は前座だよね」

「否定はしないけど言ったらダメだよ?それは。ね、亜未ちゃん」

「でも亜未ちゃんの言うことも分かるな〜。実際あまり見どころないからね」


私達は思ってたけど言わなかったことを言ったせいで少し雰囲気が沈んだ。そんな状態でグラウンド内を走っている様子を見ながら詩雨先輩の番になるまで会話はなかった。


「あ、詩雨先輩の番だ」

「詩雨先輩がアンカーの服着てるんだ・・・」

「いや、それは先頭だからでしょう?」

「それはそうなんだけどさ〜」

「それに分かってましたよね?最初の段階から。見てなかったんですか」

「あーと、その〜、え〜っと・・・・・・」


私は水雫ちゃんから言われて視線を逸らす。見てはいたけど少しボーッとしてた。だから気付いてなかったというか、しっかりと見てなかった。だから今気づいた感じになったの。


「ほ、ほら!詩雨先輩が順調に進んでるよ!」

「話を逸らした・・・」

「言わないであげて。癒音」


私はそう後ろで言ってくる4組メンバーをジト目で見る。そうすれば、癒音ちゃんは慌てて目を逸らしたけど千波弥はため息を吐いて私のことを見返してきた。


「うっ・・・・・・」


私はそれに狼狽えて千波弥から目を外して詩雨先輩の方を見る。詩雨先輩のクラスの今の順位は三位。一位を走ってるのは2組の色である緑。その次に4組の黄色、詩雨先輩達1組の青色。そして最下位に赤色の3組。


その後、詩雨先輩達も息を合わせて進んで行った。けれども、その努力虚しく順位は変わらずで各組がゴールして行った。


それを終えると先輩達は退場門から退場して行く。退場した後、少ししたら詩雨先輩がこっちに戻ってきた。


「お疲れ様です、詩雨先輩」

「惜しかったですね」

「ありがとう、優月ちゃん。千波弥ちゃん。いや〜、白組強かったね」


詩雨先輩はタハハと笑いながら私達にさっきの競走の感想を言う。私はそんな詩雨先輩にさっき話題で出た千波弥ちゃんのことについて聞く。


「ところで詩雨先輩。千波弥ちゃんって勝ち負けとか気にする子だと思いますか?」

「うん、唐突だね?急にどうしたの?」

「いいですから。答えてくれませんか?」

「えぇ・・・」


詩雨先輩は苦笑いしながら考える仕草をとる。それから少しして答える。


「う〜ん・・・・・・雰囲気だけだと気にしそうだけど優月ちゃんや零夜くんと一緒にいるからあまり気にしないんじゃないかな?」


詩雨先輩の言葉に私達は驚く。私は詩雨先輩が当てたこともそうだけど、私達のことも当てたことに驚いた。


「その理由はどうしてですか?」

「だって優月ちゃんと零夜くんってあまり勝負事に関しては気にしてないでしょ?だとしたらその2人の幼馴染である千波弥ちゃんもそうなよかなって・・・。違ってた?」

「・・・・・・当たってます・・・」


千波弥は珍しく驚いた顔で、ほとんど当てられたことに手を口に当てている。私も似たような感じで絶句状態。


あまり千波弥が勝ち負けを気にしてないって言うことを当てられることがないのも相まって。それこそさっきの皆みたいな反応が普通過ぎて。


「やっぱりね。ちなみに優月ちゃんと零夜くんは?」

「合ってます・・・。言ったことありましたか?」

「ないよ〜。だけど、2人はなんとなくで。で、あとは関係性からの予測でかな」

「人間観察が得意・・・?」

「かもね。まぁ、なんとも言い難いんだけどね」


癒音ちゃんが呟くように言って、それに詩雨先輩が答える。そして、最後に〆までしてくれた。










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