二十八話目
私達は棒倒しを終えて結果が発表されたからグラウンドから出る。私は出たところで零夜達とは別れた。その後すぐに後ろから守りに回っていた亜未ちゃん達が声をかけてくる。
「優月!!さっきのは何!?」
「確かに私達はやりずらいとは言いました。ですが、優月ちゃん?あれは違うと思いますよ?」
「か、勝てたからいいでしょ・・・」
私は亜未ちゃんと由理子ちゃんに問い詰められて、目線を2人から逸らしながら言う。すると、そこへ更に別の2人が私に追い討ちをかけてくる。
「あれには私も驚いたかなぁ〜」
「優月?」
別のふたりとは、癒音ちゃんと千波弥。私が千波弥に声をかけられて振り向くと、アハハと苦笑いしている癒音ちゃん。それと、私に笑っているけど目線は笑っていない絶対零度の目を向けている千波弥。
「ち、千波弥ちゃん・・・。お、怒ってる・・・?」
私は震えた声で千波弥に尋ねる。千波弥はとてもニコニコしながら答える。
「全く?全然怒ってないけど?」
「ひぇっ・・・う、嘘だ!」
千波弥は私にジリジリと近づいてくる。私はそれに合わせて少しずつ体を後ろに下げる。すると、私は後ろから急に拘束される。私は驚いて振り返る。
「!?ゆ、由理子ちゃん!?な、なんで!?は、離してよ!」
「ごめんなさい、優月ちゃん。こればっかりは私も寛容できませんわ。ですので・・・」
「え?ち、ちょっと!?」
振り返り、私を拘束した人物を見る。私を拘束したのは最初はやんわりと警告してきた由理子ちゃんだった。私は彼女に後ろから拘束される。
私が驚いていると、ジリジリと近づいてきていた千波弥が私の肩にポンッと両手を乗せる。
「ちょーっと、2人きりで話そっか?ゆ・づ・き」
「や、やっぱり怒って・・・!」
「怒ってない怒ってない。それじゃあ3人とも先に戻っておいて。私はコイ・・・優月と後で行くから」
「ねぇ待って!?今、私のことコイツって言おうとしたよね!?ねぇ!?何か言ってよ!?」
由理子ちゃんは私が千波弥に掴まれたことを確認してから拘束を解いた。そして、私は千波弥に抱き寄せられる。私のことを抱き寄せたあと、千波弥は3人に先に戻っておくように指示した。千波弥は私の言葉には何も返さない。
「それじゃあお先にね」
「しっかりと怒られてきてくださいね?」
「あ、アハハ・・・・が、頑張って?」
「3人とも!?特に由理子ちゃんはどういう・・・ひゃっ!?」
私は千波弥に横腹をツンツンとさせられて崩れ落ちそうになる。崩れ落ちそうになった私のことを千波弥は、私の片腕を持って持ち上げる。
「ち、千波弥ちゃん!私はそこが弱いってひゃんっ!や、やめてっ!ひゃっ!」
「ほぉら、ここが弱いんでしょう?」
「や、やめてっ!さ、3人も置いてかひゃんっ!」
私は千波弥に横腹を定期的に弄られて、上手く喋ることができない。いや、喋らせてくれない。私は喋っている途中に弄られているから、喋っている途中で変な声を上げている。
そんな私のことを放っておくかのように私達の元から詩雨先輩達がいる方に歩いていく。私は止めるけど千波弥に弄られて身動きが取れない。
「さてと、3人とも行ったわね?それじゃあ、優月。どうしてあんなことしたのかしら?」
「そ、それはぼ、棒倒しで勝つためで・・・」
「それは分かってるわよ。どうしてあんな方法をって聞いてるの」
「そ、それはう、上からなら空いてたし誰も邪魔できないって思って・・・」
私がバカ正直に答えると千波弥はため息をついて私の肩から手を離す。
「あのね、だとしてももう少し自分を大切にして。私と零夜は貴方から聞いてるから色々と知ってるけどそれでもよ」
「な、なんで・・・?」
私が問いかけると千波弥はさっきよりも深いため息をついて眉間に手をトントンと当てる。何か考えているのか、すぐに私に何か言ってくるわけでもなくただただ無言の時間が過ぎる。
すると、考えがまとまったのか千波弥は真剣な目で私のことを見つめる。私はそれに少したじろぎながら彼女の目を見る。
「私はというか、零夜もそうだけど。貴方のことが大事で、不安でもあるの」
「ふ、不安・・・?」
私は不思議に思って、頭を傾げながら復唱する。千波弥は頷きながら続きを、私の質問に答えてくれる。
「えぇ。優月。貴方、未だに不安定でしょう?だから私と零夜は今でもいつ貴方が今以上に壊れるか不安なの。それこそ・・・・自殺に走るんじゃないかとね・・・」
「そ、そんなことしないよ!」
「絶対に?」
「そ、それは・・・」
私は千波弥の真剣な目に、質問に断言できなくて顔を俯かせる。
「そうでしょう?だから私は、私達は不安なの。それこそ・・・・さっきみたいなことをされると余計に・・・」
「ち、千波弥ちゃん・・・」
私は顔を上げる。顔を上げたら少し悲しげな目をして私のことを見ている千波弥のことが目に入った。
「だから・・・だからあんまりあんなことはしないで・・・!」
「ッ・・・・」
私は泣きそうな目と泣きそうな声で言ってくる千波弥を見て理解する。理解させられる。
(そっか・・・。私、2人に心配されてたんだ・・・。私が楽しんでても心では・・・本心では楽しめてないことに気づいてるから・・・)
私は千波弥の言葉に考えさせられる。2人がどうしてここまで私のことを気にかけてくれるのか、頻繁に家に来るのかを。
「ごめん・・・」
「私は・・・!そんな言葉が聞きたいんじゃない・・・!聞きたいんじゃないの・・・・・・」
千波弥は私のことを抱きしめて、私の肩に顔を埋める。私はそれを抵抗もせずにただただ受け止めた。




