十四話目
「・・・・・・そんな顔しちゃ笑えないや・・・」
───ジャリッ・・・
「「やっぱりここにいたな(のね)」」
「零夜に千波弥?」
私はお気に入り登録している曲をコテージから離れたところで聴きながら、歌詞を声に出していた。すると、足音がして後ろを振り返ると2人がいた。私がここに来ることが、ここにいることが分かっていたように
「2人とも何かあったの?」
私が2人に、誰に聞かれてるか分からないからこっちの話し方で聞くと2人は顔を歪ませる。
(?なんで2人がそんな顔するわけ?)
「まだ・・・・・・その事を考えてるのか?」
「まぁ、それを持っているってことはそうなんでしょうけど・・・」
「・・・・・・悪い?2人は私の感情は、私が何を思ってるか知ってるでしょ?」
「知ってる。知ってるが、それとこれとは話が別だろ・・・!」
「?アハハッ!面白いこと言うねぇ・・・」
私達の間に険悪な雰囲気が流れる。私と2人が睨み合う。私もこの2人だけだから少し、素を出すことができている。
「2人も分かってるでしょ?私の時間は“あの日”から止まったまま。“あの日”に壊れたから今の私だよ?」
「「ッ・・・!!」」
「忘れたとは言わせないよ?なんてったって・・・・・・私の方から2人には伝えたんだからねぇ・・・」
私はコロコロと笑いながら、いい笑顔で答える。2人は苦虫を潰したように私のことを見つめる。
「そもそも私のそっちの片鱗は小学校の時から出てたでしょ?それが表面化したきっかけが“あの日”だからね〜」
「確かにそうだけど・・・!」
「言ったでしょ?私は救われたい、助けて欲しいとは思ってるけど、そんな人間じゃないって。だから諦めたって言ったよね?忘れたの?」
「忘れてるわけないだろ・・・!だけどな・・・!」
零夜は隣の木に左手を叩きつける。私はそれに少し驚きながらも、無関心のように見せる。
「それじゃあ私は戻るから。2人も遅くならないようにね〜」
私は2人の横を通ってコテージに向かっていく。
さっきまでの暗かった、重かった雰囲気はどこへ。そう思わんばかりの明るさで優月はコテージに向かっていく。
私は鼻歌交じりでコテージに向かっていく。あの場に私達3人以外の人がいるとは思わずに。
私はコテージに戻ってきて、コテージの扉を開ける。私達のコテージは6人用。私の他に、千波弥に零夜。詩雨先輩と癒音ちゃん。そして伶奈先生の6人。私がコテージに入るとちょうどお風呂から上がった詩雨先輩とソファーに座ってマッタリしていた伶奈先生に出迎えられる。
「あ、優月ちゃん、おかえり〜。優月ちゃんが最後だから入ってきなよ〜」
「はーい。ところで癒音ちゃんは?」
「私は見てないよ〜。部屋にでもいるんじゃないかな?」
詩雨先輩がタオルを首にかけた状態で、髪をドライヤーで乾かしながら伝えてくる。そこにソファーでまったりしていた先生も教えてくれる。
「ちなみに私も見てないよ〜」
「なるほど。それじゃあ、まぁ入ってくるね」
「いってらっしゃーい」
「のぼせないようにね〜」
私は詩雨先輩と伶奈先生に見送られて荷物を置いてる場所に向かう。私は荷物から服と下着、タオルを取り出してお風呂場に向かう。
私は脱衣所にきたら内側から鍵をかけて、服を脱ぐ。流石に私の姿は見られたらヤバいから。服を脱ぐと、男子高校生にしては低身長で小柄な身体が晒される。
「ッ・・・」
私は脱衣所にある全身鏡を見て、自己嫌悪に陥る。私の至る所には古傷に傷跡が痛々しくある。どれも小学校高学年以降につけられた、つけた傷。身体の横腹には丸い形の跡が、腕などの手が届く場所には直線に引かれた線が。
それもつい最近切ったばかりのリスカ跡とかも痛々しく残っている。
「ハァ・・・」
私はため息をついて、お風呂場の扉を開ける。誰も居ないことは確認済みだから。私は中に入ってシャワーを出す。自分に合っている温度に調整して、身体を洗いながす。
私は身体をお湯で流して頭も濡らす。一度お湯を出すのを止めてシャンプーを使って、頭を洗う。洗い終わると、トリートメントとコンディショナーを使って洗う。流したあと、ボディタオルにボディソープをつけて泡立てる。そして、身体を丁寧に洗う。
全ての工程を終えた私は泡を流して、お風呂に浸かる。
───チャプン・・・
「はふぅ・・・・・・」
私は背中を浴槽の壁に預けて天井と壁の境目付近をボーっと見る。明日のことを考えながら、癒音ちゃんの対応についても考える。
「とはいえ・・・・・・出来ることなんて知れてるよねぇ・・・」
私は考えたけれど相手は企業の娘さん。やろうと思えば私の過去なんてアッサリ調べはつけられるし。私自身があまりそういう素振りを見せないようにするしかないよね・・・。
信用は正直・・・できない。この信用が“今は”できないのか、“これからも”信用出来ないのかは分からない。ただでさえ、人間不信を患っているから、信用できるかと言われたらなんとも言えない。
ただ、彼女の・・・癒音ちゃんの行動によったら信用できるかもしれない。なんなら、私の事を助ける・・・救ってくれるかもしれない。そんな、可能性の低い、けど宣言した癒音ちゃんなら・・・・・・。
「まぁ、流石にない・・・よね・・・・・・」
そう考えても、私は既に諦めてるから。そう思っていても、幼馴染の2人が無理だった。だから、もう無理だと私は考える。けど、それでも、宣言したから期待してしまう。それが、信用してない人でも、勝手に、低い可能性に縋ってしまう。
だから、だから、私は・・・・・・弱い。




