十一話目
「はっ・・・!」
目が覚める。見知った天井。自室の天井・・・。
「ゆ、夢・・・・・・」
僕はふらつきながら洗面所に向けて足を動かす。足取りが重く、壁に沿ってゆっくりと進んでいく。
洗面所に着き、鏡に写った自分を見る。そこには酷く魘されていたようで、とても人に見せられるような顔をしていなかった。
「ハァ・・・ハァ・・・・・・ハハッ・・・」
乾いた笑いが出た。それが何に対する笑いだったのかは自分でも分からない。自分の顔に対する笑いなのか、今でも過去に囚われている笑いなのか。はたまた、逃げようとしていることに対してなのか、偽っていることに対してなのか。
自分には検討もつかない。
僕は水を出して顔を洗う。顔を洗うと比較的マシになったが、まだまだ人に見せられるような顔じゃないと自分は思う。
「今日は・・・いつもよりメイクしないと・・・」
僕は呟いて、おぼつかない足取りでリビングに向かう。僕は冷蔵庫から水を取り出してコップに注ぐ。僕は意識を覚醒させるためにその水を口に含み飲む。
僕はさっきのことを思い出して、その場にしゃがみこむ。そうして呟く。自分に言い聞かせるように、自分を赦さないために。
「分かってる・・・分かってるよ、それくらい・・・。自分が言わなければ・・・僕があの時誘わなければ・・・」
思えば思うほど、昔の記憶が、あの日の記憶が。日常が崩れ去った日のことを鮮明に、声も景色も思い出す。
忘れたくても忘れられない。忘れてはいけない、1週間の出来事。
僕は今でも形見、遺影、お墓に向き合うことができていない。あるのは知っているし、自分が全て終わらせたから分かっている。けど、けど!未だに心の整理が着いていなくて何年も経った。
小学校では、その事でイジメられて、先生に相談したけど見捨てられて。親戚や祖父母もいない。頼れる人が居らず、先生という信用していた大人にも裏切られて。
「いつから・・・・・・素面で笑うことが、喜怒哀楽が無くなったんだっけ・・・」
いつの間にか人を信じられなくなって、人間不信になった。それから、女子にも裏でイジメられて女性不信に陥って・・・。いつからか、本当の自分を、男としての自分を偽って女として生きる方を選んで。
それが楽だと、中等部で対応が良くなって。だから、やめなければと思いつつも高等部でも続けて偽って、女装して、仮面を被っている。
ただ、そんな中でも小学校の頃から助けてくれていた人は居て・・・。小学校の校内だと零夜が表に立って、美雪さんが理事長をしているこの学校に入って。小学校のほとんどの奴らと離れて。
千波弥も千波弥で、日常生活・・・学校以外の方で助けてくれて。千波弥と零夜の家族、千波弥と零夜には頭が上がらない。だからこそ、唯一、人間不信になった後でも信じることが出来て。
だから、だから、親愛や恋慕とは違った感情を幼馴染の2人には抱いていて・・・。表立って言える感情じゃないものを抱いていて・・・。2人には悪いけど僕は・・・。
「2人に・・・零夜と千波弥に依存しているんだよね・・・・・・」
僕は冷蔵庫に水を片付け、買っていたパンをとりながら呟く。その言葉は誰にも気付かれずに闇に、電気の付いていないリビングに消えていった。
「だから・・・だからこそ、失いたくない・・・・・・んだろうね・・・。・・・それが本当がどうかさえの区別さえ・・・・・・つけなくなったけど・・・」
僕は素面での感情を失くしたためか、素面で考えると自分のことが分からなくなる。まだ、あっちなら取り繕って、笑って、怒って、泣いて、喜んで、楽しんで。これらを出来るのに・・・素面だと何もかもを忘れてしまった。
「ホント・・・どんな顔で過ごしてたんだっけ・・・」
そんな、不安定な情緒で過ごしてる。いつ壊れてもおかしくない、とても・・・・・・とてもとてもとても。2人には・・・たくさん迷惑をかけてしまっている。でも、やめれない。やめたいと思っても甘えて、沈んで、沼っている。
そんな自分が嫌になる。けど、やめれない。だから僕は・・・私は・・・・・・『依存』している。




