百六話目
千波弥が着替えを持ってお風呂に行くために、部屋を出て行ったから部屋には私と零夜だけになった。私はお湯を沸かして、コップに緑茶を入れて、特にすることもなくパソコンを立ち上げた。
「零夜ー、お前璃空ちゃんのことどう思ってるの?」
「急にどうした・・・?」
「いや、あんだけ絡まれてるんだから何かないのかなーって思ってるだけ。何もないならそれだけだし。こっちからしたら見てて面白いだけだから楽しませてもらってるけど」
「おい!?見世物じゃないんだよ・・・。てか、それ女子・・・お前を含めた高等部組の女子だけだろ?」
「多分。橋本くん達の方は知らないし。あまり個人的な用事で話すことないからね・・・。精々、クラスで事務連絡的なことだったり、部活の方で教え合うときくらいのはず」
「まぁ、たしかになぁ・・・。そもそもの話し男子だって言ってないのもあったからなぁ」
「そそ。だから関わりは薄いよ」
ズズズッと緑茶を飲みながら零夜に答える。零夜も零夜で持ってきていたペットボトルの麦茶を野ながら頷いている。
「それで琴吹妹のことだっけ?」
「・・・その言い方どうにかしたら?流石に璃空ちゃんの前では言ってないよね?」
「言うわけないだろ。琴吹姉と間違えないように下の名前で呼んでる。アイツといる時はな」
「ならいいんだけどさ・・・。それで実際何か思ってるの?」
「特にこれといってはないな。精々、可愛い後輩くらいだ」
「それでも珍しくない?零夜がそう思うのは」
「そうか?」
「そうだよ。だって今まで後輩達のこと聞いてきたけどそんなこと言わなかったじゃん。というかコメントを避けてきたじゃん。関わりがないとか薄いとか言って」
「はてさてなんの事やら」
私はパソコンから顔を上げて零夜のことをジト目で見つめる。零夜は私の視線は全く気にならないようでお着き菓子に手を伸ばして食べ始める。
「でもまぁ、周りと違うタイプだとは思ってる」
「あー、まぁそうだね。零夜って結局、上でも下でも理事長の子としてしか見られてなかったからね・・・。特に異性の子からは。私達の部活の高等部はもうそんなのないけど、中等部の子達は少し入ってるよね。理事長の息子ってのが」
「あぁ。特に関わりが薄いところがな。纏めてくれてるあの子は比較的話すから全然そんなことないんだがな・・・。まぁそれもあって一目置いてはいるぞ。琴吹妹にはな」
「恋愛感情とかはないわけね」
「あるわけないだろ。あっても友愛とか後輩愛だぞ」
「それもそっかぁ・・・。ちなみに告白されたら?」
「ないとは思うが、告白された場合?どーだろな。向こうの立場とこっちの立場としたら向こうの方が上だろうが何も言われることはないだろうし・・・別に問題は無いと思ってるな。つか、なんでこんなこと聞いてくるんだ?」
「なんとなく。気になったからなぁ」
「なんでだよ」
「見ててちょっとね」
「なんだよ、それ」
「なんでしょうね〜」
私もお着き菓子に手を伸ばす。零夜の言及からは逃れながら。案外恋愛ってのは外から見る方が分かりやすいんだよねぇ・・・。
見る分にはいいけど、する分に関しては私はまだ少し抵抗があるからね。
「千波弥が戻ってきてから風呂に行くか?」
「そうだね〜。ついでに夜鷹先生も誘ってみる?あの人居たら話しかけられるようなことはないでしょ」
「おいおい・・・。流石にそれは夜鷹先生に迷惑だろ・・・」
「て言っても今更じゃない?」
「・・・否定できないのが痛いところだ」
「ということで千波弥が戻ってきたら教官の部屋に凸って夜鷹先生を誘うってことで」
「それで行くか・・・」
零夜は渋々と言った感じに頷いた。
と言っても、本当に今更感はある。だって、今までの合宿でも周りの牽制として一緒に来てもらってたしね。夜鷹先生には申し訳ないけど。
まぁ、その分怜奈先生よりかは親しくなれた・・・気がする。同性ってのもあるし、異性とはしない話しとかも出来るからね。
私達はまたそれぞれ好きなことをしながら、千波弥が戻ってくるまでの時間を潰した。




