闇の国の王子様
ライトは闇の中を駆けていきます。
闇の中、3体の精霊の力か、ライトの足元を赤い光と青い光と黄色の光が照らしては消えていきます。ライトは下へ、下へ降るように走り抜けます。精霊の導くままに闇の中を駆け抜けて、そんな中で闇の向こう側に薄ら夜色が見えました。夜色は弱い光です。夜色の中には建物が見えました。ライトは駆け抜けます。夜色の光へ。そここそが目指す場所だと思って、駆け抜けます。そして、夜色の光にライトは辿り着きます。闇から、夜色の中にライトは飛び込みました。ライトを迎えたのは、一つの国でした。光の国と似ていて、だけど穏やかな夜のような闇の国。ライトは踏み出します。此処にお兄ちゃんを助ける手掛かりがある。ライトはそんな感覚を抱いていました。言葉には出来ません。ただ、その感覚を信じる事が出来ました。
ライトが向かっていく中、黒く輝く宝石が無数に現れました。黒く輝く獣の形をした宝石達。ライトは剣を構えます。
「私は……お兄ちゃんを助けるんだ!」
ライトがそう叫んだ時。
突如、彼女の前に一人の少年が現れました。
ライトは吃驚しますが、少年は構わず黒く輝く宝石達に立ち向かいます。少年は剣を振るい、黒く輝く宝石を砕きます。ライトはその姿を見て、助けてくれるのかな……と思いながら、同じように黒く輝く宝石達に剣を振るい、宝石で攻撃します。
二人の手によって黒く輝く宝石はすべて砕け散りました。もう襲いかかってくる敵は居ない、そう判断したライトは少年の方を見ます。少年もまた、ライトの方を見ました。少年は美しい金髪を靡かせ、黒い剣を持ち、赤いマントと黒い装束を身に纏っていました。
「助けてくれてありがとう!」
「君はこの国の人間ではないな。君は何処から来た?」
「私はライト。お兄ちゃんを助ける為に光の国から来たの。貴方は?」
「光の国から?光の国から森を抜けて此処まで来たのか?私はアレス。この闇の国の王子だ」
闇の国の王子、アレスはそう名乗りました。
ライトは笑顔でアレスに手を差し出します。アレスは一瞬首を傾げましたが、理解してライトの手を握りました。握手を交わしてから、ライトはアレスに質問します。
「闇の国……って何?」
「光の国から来たのに、闇の国を知らないのか?闇は光と対を成す存在だ。地上に光が輝く中で、闇は地下で眠る。此処は穏やかな時間が流れる穏やかな闇の中だ……った」
「だった?」
アレスの言葉に、ライトは首を傾げます。アレスの言葉では、闇の国は過去形になってしまうからです。アレスは、そうだとライトに告げます。
「闇の女神が悪しき女神になったんだ。闇の女神は私の妹の体に取り憑いて、闇の国の民を皆宝石に変えた。闇の国をそうやって支配した。更に闇の女神は光をも侵略するつもりだ。自分以外のすべてを宝石に変えるつもりだ」
「もしかして、私のお兄ちゃんを宝石に変えたのは、その闇の女神?」
「光の国の民を宝石に変えたのか?なら、いよいよ時間は無いな。もうすぐ光の国へ闇の女神の侵略が始まるだろう」
「貴方の妹に取り憑いてるって、貴方も兄弟を闇の女神に奪われたの?」
「ああ。今や妹は闇の女神の意のままだ。闇の女神の依代として選ばれてしまった。私は闇の国と妹を助けたくて頑張っているが、力不足だ」
「ほっとけないわ。私、貴方に協力するよ!闇の女神を倒せばきっとお兄ちゃんも闇の国の民も貴方の妹も助かる筈!一緒に皆を助けよう!」
ライトはアレスにそう持ち掛けました。アレスは吃驚していましたが、優しく、ありがとうと言いました。協力してくれるなら、是非協力して欲しい。自分も君の兄と光の国を守る為に協力するから。アレスはそう言いました。ライトは、宜しく!と元気に返しました。
「闇の女神と戦う為には3つの宝石が必要なんだ。闇の国の秘宝。哀と不幸と過去の3体の精霊が宿った宝石が。だけど3体の精霊も闇の女神の支配下にある。取り返す為に頑張って戦っているが、努力も虚しく……と言ったところだ」
「3体の精霊……?もしかして、こんな感じの宝石?」
アレスの説明に、ライトは宝石を取り出します。ライトの傍らを漂う3つの宝石に、アレスは吃驚しましたが。
「君は光の国の王族か?だが、それは光の国の秘宝だ。愛と幸福と未来を司った3体の精霊が宿る宝石は光の国にあると聞いている」
「旅立つ時にお母さんが授けてくれたの。私と共に戦ってくれる素敵な精霊よ。これとよく似た宝石を探せば良いの?」
「ああ。私が取り戻したいのは、闇の精霊だ」
「じゃあ、一緒に闇の精霊達の許へ行こう!闇の精霊を助けて、6体の精霊が一緒に戦ってくれたら、きっと闇の女神を倒せるよ!」
「ああ、そうだな。ライト、共に戦おう」
「アレス、一緒に頑張ろう!」
ライトはアレスの手を引いて、穏やかな夜のような闇の国を駆け出します。闇の女神を倒す為に。闇の国を、アレスの妹を、お兄ちゃんを救う為に。
穏やかな夜のような闇を、迷いなく突き進んでいきます。




