10話:SFファンタジー系異世界トイレ事情 ~ 下の生々しい話 ~
『サキさんが装着しているスーツって、戦闘機械少女用のヴァリアブルスーツですよね?
だったら大丈夫です! ヴァリアブルスーツが排泄物やその他諸々を全て分解処理してくれます。ニオイもありません。肉体も定期的に洗浄してくれますから、体はずっと綺麗なままですよ。
排泄物が分解処理される感覚は、その、ちょっと、初めは慣れないですけど……』
「わかった」
サキは覚悟を決めた。
問題は、立ったままするか、機獣オーバード・ネメアTYPE2のコックピットの中でするかだ。
サキは立ったまますることを選んだ。万が一、スーツの分解処理機能が破損していた場合、コックピットが大惨事になるためだ。
サキはスーツの分解処理機能を心より信じ、排尿した。
「ん……」
サキは思わず眉を寄せた。
確かにこの感覚は慣れない。サキは「ふぅ」と溜息をついて、言った。
「これ、オナニーしてるみたいでなんか嫌」
『ブホォ!』
茶を噴き出したと思われる音が響き渡った。
『サキさん!? ダメですよ!? 公衆の面前でそんなこと言っちゃ!』
「周囲に人はいない」
「グォン?」
「ネメアは無性だから問題ない」
『そういう問題じゃないですよね!?』
何がおかしいのだろう。オナニーなど、快楽を司る神経をひねくり回す程度の作業だと言うのに。
自分と未来人とでは感覚が違うようだ。サキはそう感じた。
『あ、ひょっとしてサキさん、経験豊富なタイプですか? やりますね!』
「違う。私は処女。前世でも今世でも処女。第一、16歳で異性と遺伝子を交わらせることは法律で禁じられている」
『ブッ。う、うーん……。なんだか、サキさんの考え方って独特ですよね。しばらくこうして接してきましたけど、そのー、恥じらいが無いと言いますか』
「いやもうこのスーツ着せられた時点で大分吹っ切れたので」
サキは遠い目で明後日の方角を見つめた。未来の自分こと女神Xもろくでもないことをしてくれる。
『男性には絶対にオナニーとか言っちゃダメですよ! 男性の方はとっても繊細、ベリーベリー繊細で、女性の口からオナニーとか聞くと幻滅して、萎えちゃいますので!!』
「そういうエボニーは男性経験あるの?」
『えっ。無いですよ?』
「意外。26歳なら結構ヤってると思った」
『あのですね。それこそ偏見ですよ。26歳だろうと、出会いが無ければ男性経験は無いんです。
というより、未来の技術なら女性同士でも子供は作れます。これほど息がぴったり合う方と出会えたのも何ですので、サキさんと僕とで遺伝子交配パートナーとして登録してみませんか?』
サキは胸の奥がちくりと痛んだ。望まない出産。捨てられる子供たち。
嫌な記憶が蘇り、サキはエボニーの申し出を拒絶した。
「申し訳ないけど、遠慮しておく」
『そうですか。サキさんがその気になったら、いつでも人工子宮で子供を作れるようにしておきますので、楽しみにして下さいね!』
サキはエボニーとの会話の中で、猛烈な違和感を抱いた。
なぜ、エボニーはこんなにも気軽に子供を作ろうとするのだろう。セーフティネットが機能しているようで機能していない地球の日本とは隔絶された感がある。
(子供か……)
サキが地球にいた頃、子供を作ろうと思ったことは微塵も無かった。あまりにも暗い社会情勢、地方にまるで回ってこない予算。挙句の果てに、常識は崩れ去り、大人と子供たちの間に深い溝が生まれた。
子供が幸せになれる環境を、サキは想像することが出来なかった。
だから、サキは子供は産まない方針だった。
いつまでもこんなことを考えても仕方がない。サキは更に過去へと飛ぶことにした。
「タイムスリップする。時空ゲート、オープン」
「グォン!」
サキは機獣オーバード・ネメアTYPE2に乗り、聖皇歴1250年に向かった。
時間が空き次第、次話を投稿しますm(_ _)m
●ステータス
名前:サキ
性別:女性
年齢:16歳
ガーディアンランク:E
アイテム:ヴァリアブルスーツ、セーフティデバイス01D
カード化済みのアイテム:機獣ハイレシア・ドラゴン(遺体)、チンピラ(人間)
マイホーム:機獣オーバード・ネメアTYPE2(アイテム【街灯(中世風)】を設置)