エピローグ ヒホンジンは傭兵王子(中年)に抱き込まれています
一応、第一章完結とさせていただきます。
伏線も回収しきれてませんので、お時間をいただき、番外編等を挟んである程度書き溜めてから二章スタートを考えております。
えーと、いい天気ですね。
私は今日も中年筋肉美形王子殿下の腕の中です。
見上げると金髪に水色の瞳の色気過多王子がいます。
なんですか? お腹すきましたか?
美声に囁かれ腰砕けしそうですが、内容が……
本日も絶賛小動物ライフ中のヒホンジンです。
あの後、気がついたら金髪に包まれてハウデュアセの傭兵病院で寝てました。
えーと、病院って添い寝良いんだっけと美しくて色っぽすぎる中年王子の寝顔にドキドキしたもんです。
しかも髪の毛解いてます、実はグーレラーシャ男にとって超レアってノーラミフィエさんに教えてもらいました。
よっぽど信頼してないと髪の毛は解かないらしいです。
ということは信頼してくれるのかな? 不審人物なヒホンジンなのにさ。
なんか嬉しさと切なさが入り混じった気分で抱きつくとうめかれました。
私、力持ちさんですか?
「茉莉……そこは痛いです」
いつもの美声が聞こえた。
そういや肩になんか貼ってある?
「あの、すみません」
たぶん、私を助けてくれたときにできた傷だよね。
どうに償ったらいいんだろう……
「茉莉が無事で良かったです」
甘く微笑んでイェティウス殿下に頭を撫でられました。
あの、迷惑ですよね。
「そこ、怪我……」
「大丈夫ですよ」
茉莉は痛いところはないですかと筋肉中年王子殿下が私のあちこちを調べだした。
あの~痛いとこないです〜それにここは?
ジタバタなんとか逃れようと腕から出ようとすると上から殿下にのしかかられて、そのきれいな水色の瞳にドキドキした。
「茉莉……」
「ひ、ひゃい」
突然止まった殿下の両腕と金髪の隙間から病院の素っ気ない白い天井が見えた。
なんかカシュクールっぽい病衣から見える胸筋とか首筋とか色っぽすぎるですけど〜。
わーん、なんでそんなに熱っぽく見るんですかぁ〜。
肩は痛くないんですかぁ。
茉莉と熱っぽく呼ばれた次の瞬間、扉が開いた音がした。
「旦那〜、嬢ちゃん、生きてっか? 」
「ギアリウス……」
殿下が冷たい声を出して横を向いた。
イェティウス殿下は私から離れてそのまま素早くベッドから床に降り立った。
筋肉質の足が薄い病衣のズボンからまるわかりだ。
「うん? あいかわらず動きいいな、旦那」
「あなたは僕の大事な相棒です、今回も大変世話になりました」
ヘラヘラと笑うギアリウスさんに殿下がちかづいた。
「おお、いいってことよ」
「でも、いつもタイミングが悪いんですよ〜」
形のいい足がギアリウスさんの腰に入った。
いて〜旦那〜暴力はんたーいとギアリウスさんの悲鳴が響き、何事かと様子を見に来た看護師さんに病室で騒がないでくださいと殿下もギアリウスさんも怒られてた。
うん、私もそう言うかも。
思わず笑っちゃったよ。
看護師さんが私が起きているのに気がついた。
「嘔気は無いですか? 目眩は? 」
「はい、大丈夫です」
脈をとられて顔色を見られた。
どうもかなりやばい薬を使われてたらしく、ヴィヴィアーヌさんが中和剤を飲ませてくれてなかったら廃人になったかもしれないと後日、ドクターに診察された時に聞かされた。
違法薬物怖い、廃人って何さ。
まだまだ、人間やめたくないんですけど〜。
騒いだ殿下とギアリウスさんは病室から追い出された。
その後でバイタルチェックだの採血だの検査だのに車イス乗せられて、連れ回されて診察うけて、病室に戻って気がついた。
「えーと個室だ、特室だ……じゃなくて……またイェティウス殿下に迷惑かけちゃったよ」
立派なダブルサイズはあるベッドに腰掛けて顔を覆った。
迷惑かけないように、住むところ探しに行ったのに……変な組織に誘拐って超迷惑だよね。
それなのに助けに来てくれて、怪我して、どんだけお人好しなのさ。
扉が開いて誰かがきた気配がした。
顔を上げると美しい水色の瞳と目があった。
色気たっぷりの筋肉中年美形王子殿下はもういつも通りの黒いグーレラーシャの詰め襟長袖の長衣と細身のズボン姿で髪もきちんと三つ編みをしていた。
「茉莉」
「……この度は大変ご迷惑をおかけしま……」
立ち上がって頭を下げてよろけた私を安心する筋肉質な腕が支える。
迷惑なんかじゃありません、大好きです。
甘く耳元でささやかれ耳たぶをアマガミされた。
大好き? 大好きって?……たぶん 小動物としてだよね……ここで告白したら超痛いような気がする。
でも、一応言っておこう。
「私もイェティウス殿下のこと大好きです」
「茉莉」
そんなに甘い声で呼ばれたら誤解しちゃいそうだよ。
そのまま抱き上げられて真剣な眼差しを向けられた。
えーと、なんかいたたまれないな。
「イェティウス殿下、だから頑張って迷惑かけないようにしますね」
絶対に独立しますと拳を握って力説してみた。
「……これが異世界人の得意技ですかぁ」
イェティウス殿下が大きなため息をついた。
なんとかのナマゴロ……とかかすかに聞こえた気がしましたけど、別に必殺技なんてもってませんよ。
もっと積極的に行かないといけないですねと色っぽく微笑んで首にキスされた。
これからは僕の腕の中から出ていかないでくださいねと頭を撫でられてたら、今度は食事ですと若い看護学生さんらしき人がトレーを持ってきて、失礼しましたとあわてて去っていった。
えーとごはんは?
お腹が空いたと思わず抱き上げてる殿下を恨みがましい目で見上げた。
「ごはん優先なんですね」
「小動物ですから」
クスっと笑われて抱き上げられたまま廊下に食事のトレーを取りに行ったのはいい思い出です。
きっとナースステーションで噂になってるよ、わーん。
そしてその日も殿下の食事介助が止まりませんでした。
好きな人にされる小動物ライフ、楽しいけどきついかも。
御見舞にわざわざ来てくれた、激鬼のラミアシナ傭兵ギルド管理官さんにはご回復のあかつきにはハウデュアセでぜひ観光をとお世話になったのにいわれるし。
ヴィヴィアーヌさんには、あー気持ち悪いもん見せて悪かったなぁと全然違う口調で言われた、しかも服も落ち着いたモスグリーンだった。
あれは俺の趣味じゃねぇよと苦い顔のヴィヴィアーヌさんに似合ってたぜと、ギアリウスさんが失言大魔王を発動させてテメェと胸ぐら掴まれてた。
ギブ、ギブと騒ぐ恋人のギアリウスさんを自業自得ですわと冷たく見ながら、ノーラミフィエさんがなぜか定位置状態の殿下の膝上の私の両手を握って無事で良かったですわと涙を流してくれた。
今回、ヒフィゼ家の人たちにもすごく迷惑かけたよね。
ガイウスちゅんやハルリウス傭兵ギルド管理官長、あとすれ違ったことしかないデシティウス様? とかに……
それにもっといろんな人にお世話になってるはずだよね。
うん、少しでも恩返しできるように頑張ろう。
そして、先立つもんが手に入ったらお礼少しでもしよう。
だから、迷惑だろうけど……もう少しだけ。
そっと私を抱き上げる金髪の美丈夫を見上げた。
なんですかと言いながら微笑む顔にクラクラした。
一番お世話になってるのはこの人だよね。
「あの、お世話になります」
もう少しだけ一緒にいさせてくださいと思いながら頭を下げた。
その後、思いっきり抱きしめられて、殿下、だめですとノーラミフィエさんとハナウルスさんがあわてて止めてくれた。
教訓、大型ワンコに抱き上げられてる時は言動に気をつけよう……でも何がツボに入るかわかんないんだよ〜。
そして、ヒホンジンの異世界ライフが戻ってまいりました。
「茉莉、今度の夜会一緒にでてください」
「私がでても大丈夫ですか? 踊れませんよ」
イェティウス殿下がいつもの膝抱っこのまま依頼した、夜会って言えばダンスだよね。
悪女避けならいくらでもするけど無理なもんもあるもんね。
踊る必要があるんですか? 武器舞とかは本職がしますし……
とイェティウス殿下が首をかしげた。
グーレラーシャは踊らないらしい。
わーん華やかな舞踏会、憧れてたのにー。
出る気はないけど覗きたいじゃないですか。
考えてみりゃ、衣装からして舞踏会っぽくないもんね。
「それに私みたいな身分のない異世界人が出てもいいんですか? 」
「本当に茉莉は謙虚ですね」
異世界人ってみんな謙虚なんでしょうかとイェティウス殿下が手をなでた。
いえ、全然、謙虚じゃないです。
イェティウス殿下が綺麗な女性と笑ってるの見ると心がざわめきます、殿下は私のものじゃないのにね。
「私は茉莉にでてもらいたいんです」
上からイェティウス殿下に覗き込まれた。
水色の瞳にドキドキした。
「が、頑張ります」
うん、ちょっとくらいの見せ物状態くらいがんばるよ。
色っぽい中年美形筋肉王子殿下の隣に小動物な異世界人が並ぶなんて本来ありえないことだけど、恩返しに少しはなるよね。
自立できるその日までお世話になります。
きっと先立つものができたらお返ししますから。
「盛装の準備はノーラミフィエとジャスミナ様が手伝ってくれるそうなので今度、時間が取れる日を聞いてと言われてました」
「あ、お金がかかるなら、でない……」
遠慮しないでください、必要物品です、あと宝飾品とかも必要ですねと嬉しそうに殿下が自分の唇をなめた。
なんか寒気がしたんですが?
「そうだ、姉上様の退位式と姪の即位式にも使える正装と飾り武器も必要ですよね」
「か、飾り武器? 」
それなんですか? 武器なんて使えませんよとイェティウス殿下に訴えると正装用の武器で傭兵国の人は実用品に飾り付けてでも可能なんだけど、それ以外の人が正式な即位式とか退位式とかに出るときにつけないといけないんだってさ。
もちろん、招待客が自分の持ってればそれでいいらしいけど……普通武器なんて持ってないよね。
飾り武器自体は本当に軽くて飾りが華麗で実用に一応耐える品らしい。
「普通、そう言う儀式って武器持ち込み禁止なんじゃ……」
「武器があっても争いなく治めてみせるという、グーレラーシャ傭兵国の心意気というか誇りです」
ですから安心して出てくださいねとイェティウス殿下は私の頬を撫でた。
えーと……華麗な飾り武器作ってもらっても……迷惑のような……
というか、私、即位式、退位式もでるの?
そんなの出たら殿下に迷惑かけまくりじゃないですか〜。
「茉莉のぬばたまの髪にはどんな宝石でも似合いそうです」
うっとりと髪にキスされたところで、王宮管理官のアーリアさんがそっと時計を示した。
あ、ゆっくりしすぎたかもしれない。
「イェティウス殿下」
「イェットと呼んでください」
殿下がうっとりとした極上の笑みを浮かべた。
「お仕事行ってきます」
「え? もうですか? 」
殿下の腕の中から出てテーブルからショルダーバッグを持って背負って行ってきます〜と手を振った。
そんな、茉莉〜今日から復帰何て~行かないでくださーい。
情けないけどかっこいい、私の大好きな大型ワンコな筋肉中年美丈夫殿下の声が追いかけてくる。
でも、無理矢理連れ戻したりしないのはきっと私を尊重してくれてるからだよね。
今日も中庭、通りたい誘惑にかられながら王宮の長い廊下をなるべく早く歩いて通勤する。
いつか、日本に帰れる、その日が来たらもしかしたら殿下の腕の中から出たくないとか少しだけ思うかもしれない。
うん、盛大に思うだろ。
でも、殿下はおしとやかで優しくて殿下の事をわかってくれる高貴なお姫様がお嫁に来るはずだから帰るのためらっちゃいけないよね。
私はしがない異世界人で庶民なんだから、大好きでも殿下の幸せを邪魔しちゃいけないもんね。
そんなことを思いながら傭兵ギルドについた。
えーと、なんで皆さんびっくりするんですか〜
仕事なんだから来ますよ。
えー? イェティウス殿下の腕の中からよく出てこれたって?
別に出てこれましたよ。
男性の皆さん、殿下すごすぎる〜ってなんですか〜
殺される〜ってリリアナ事務員さん、殿下は優しいですよ。
教育が必要ですわねってノーラミフィエさん、どこに通信機を……
でも、裏口にこんなに集まることないもんね、きっと心配して出迎えてくれたんだよね。
皆さん、ありがとうございます。
深く頭を下げるとみんなびっくりした顔をした後に笑った。
みんないい人ばかりだよ。
私、いつか帰る……寂しいけど……その日まで頑張れそうです。
本当は筋肉中年美丈夫殿下、イェティウス殿下の腕の中から出たくない……けど自立大事だもんね。
玉砕覚悟で告白するにしても自立して恩返ししないと、それが日本人の心意気というものです。
お仕事、頑張るぞ〜えいえい、おー。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m
甘さが足りなくて申し訳ありません(^_^;)
まだまだ途中な二人でございます。




