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二幕 裂ける声

 次に現れたのは――十人だった。


 焦点の合わない目。


 ばらばらに立っているはずなのに、まるで同じ糸で吊られているように見える。


 合図もないまま、一斉に動き出した。


 最初に踏み込んだのはコウだった。


「先手もらう!」

 低く身を沈め、そのまま懐へ潜り込む。


 刃が一人を捉え――確かに斬った。


 だが――倒れない。

血を流したまま、止まらず踏み込んでくる。


「っ!?」


 腹を打たれようが、肘が妙な方向へ折れようが、止まらない。


 一人の男の伸びた手が、コウの首を掴んだ。

「……く、っ」

 身体が宙へ浮きかける。


 戌助(いぬすけ)が割って入った。

急所だけを正確に打ち抜き、コウを引き剥がす。


 その後ろで、ムツの槍が揺れた。


「下がって」

 短く言い、自ら前へ出た。


(異常だ)


 悟った瞬間、戌助とコウは戦い方を変える。

三人が離れぬよう間合いを保ち、近づいた者だけを峰で沈めていく。


 倒しても、また起き上がる。


 重い身体が次々と押し寄せる。

引き離しても、沈めても、止まらない。


 気づけば呼吸は削られ、足も鈍り始めていた。


 消耗戦だった。


「逃げ回るだけか!」

「さっきの威勢はどうした!」

「血を見せろ!」


 上階から嘲る声が飛ぶ。


 コウが息を整えながら歯を食いしばった。

「最低……!」


 その横で、ムツは槍を構えたまま後退していた。

慣れない足取りで、囲まれまいと距離を取る。


 だが相手は、弱い場所を見逃さなかった。


 一気にムツへ雪崩れ込む。


「ムツ!」

 戌助が飛び込んだ。


 肩で一人を弾き、ムツの前へ出る。

しかし、そのまま二人まとめて押し包まれた。


 腕、肩、脚。

幾つもの手が絡みつき、押し倒される。


「……っ」

 手のひらが戌助の顔を押さえつけた。

口も、鼻も塞がれる。


 息ができない。


 さらに上から重みが乗った。

ひとりではない。二人、三人――もっと。


 骨が軋み、視界が暗くなっていく。


(まず……)

 もがこうとしても、腕が動かない。


 そのすぐ横で、ムツもまた組み伏せられていた。

両腕を押さえつけられ、脚を絡め取られ、身動きが取れない。


 だが、その目だけが戌助を見ている。


 押さえつけられたまま、戌助の呼吸が浅くなっていく。


 その瞳から色が消えかけた、その刹那――

何かが、ムツの奥でふっと切れた。


 身体を縛る手も、重みも、観客の嘲りも、どうでもよくなる。


 胸の底で、知っている声が響いた。


(お前が守れ)


 瞬間。


 肺の底から、声が裂けた。


「――若ぁっ!!!!」

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