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季節は神の悪戯か  作者: 迫る騎士鹿丸
第一章:静かな冬の森にて

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第二話

ひとまず、コタンの予定通り川に向かってから家へ行くことになった。

その道中。


「いくつか聞きたいことがたくさんあるだが、聞いてもいいか?」


「構わんよ。特に話してはならんこともないしの。」


「じゃあ、まず、なぜそんなにもボロボロなんだ?傷だらけで心配になるほどだ。」


「ああ、これはわらわを含めた神の仕事の一つで少しな。

 この世界に蔓延る魔という存在と戦わなくてならなくての。

 以前まではすぐに回復していたんじゃが、最近は少し力が落ちて、回復に時間がいるようになったんじゃ。」


「魔とはなんなんだ?俺はそのような存在に出会ったことがないんだが。」


「それはそうじゃ。魔が完全に目覚めて人里に降りる前に倒しておるからのう。」


そして、エトロンは魔について説明をする。


魔というのはこの世界に厄災をもたらす存在だという。

干ばつ、豪雨、地震などなど、魔が生まれると災害を起こし始める。

放っておくと世界を崩壊させかねないほど危険な存在で、四人の女神達が倒している。

生まれたばかりの頃だとまだ弱いから簡単に倒せるが、時間が経つにつれ成長していき、エトロンに傷を負わせたのも生まれてから半年ほど経った個体だった。


女神達は神器で魔の発生を感知すると、すぐさま発生場所に向かい、討伐する。

とはいえ、神器も完璧ではなく、先述のエトロンに傷を負わせたものは、うまく神器による探知を掻い潜っていたそうだ。


「それじゃあ、今、冬が終わらないのも、魔が起こした厄災によるものなのか?」


説明を聞いていて、ふと思ったことをコタンが尋ねると、エトロンは首を横に振って答える。


「違う。

 コタンや。お前はどのようにして季節が巡っているのか知っておるか?」


「いや、わからない。」


「季節というのは、我ら四人の女神が神器の受け渡しをすることで発生する気候の変化のことなのじゃ。

 春は風の女神、夏は光の女神、秋は火の女神、そして冬がわらわ、水の女神が司っておる。」


エトロンは一旦そこで言葉を切り、小さく何かを唱えた。

すると、エトロンの手元にお札が現れる。

大きさは腕の長さほど。表面には何かしらの文言が書かれている。


「これが神器じゃ。この神器を用いて我らは魔の発生を知る。

 これを他の女神と交換すると、この世界の気候がそれぞれが司る属性の特徴が反映されたものになり、そしてそれが季節と呼ばれているというわけなのじゃよ。」


「ということは、エトロンが春の女神と神器を交換できていないから、こうして冬が続いていると。」


「そういうことじゃ。物分かりが良いやつは嫌いじゃないぞ。」


「じゃあ、今の話からもう一つ。

 女神達が神器を交換するのは力を回復させるためか?」


「というと?」


「おそらくだが、女神達は人間からは考えられないほど絶大な力を持っているが、その力は無限ではない。

 今、エトロンの力が弱まっているのがいい証拠だ。

 だから、一年の一部をそれぞれが担当しているんだろう?」


「その通りじゃ。

 春の女神、キラとはここら辺で神器を交換しようと昨年約束したはずなのに現れなくてな。」


「そうか。早く会えることを切に願うよ。」


ちょうど会話がひと段落したところで二人は川についた。

透明な水が心地よい音を立てながら流れている。

コタンは腰を下ろし、持参した水袋に水を入れる。


それを待つ間、エトロンは川に膝まで浸かって魚を探している。

冷たい川の水を微塵も気にしないエトロンの様子に、コタンは彼女が本物の女神だと確信する。

魚を見つけたようで、捕まえようと腕も川に入れるが、やはり寒がる様子はない。


「あっ、逃げられてしまった。」


狙っていた魚が姿をくらませてしまったようで、残念そうな声をあげる。


「神の力を使えば簡単に捕まえられるんじゃないのか?」


コタンが正論を言うと、エトロンは顔の前で人差し指を立て、先を振りながら言う。


「それだと面白くないじゃろう。

 あくまで同程度の力関係で挑む真剣勝負が一番良きかな。」


「そんなものなのか。」


「そんなものなのじゃ。お前も永い時を生きれば分かる。」


彼女にとって永いとはどれほどの時間なのだろう。

少し疑問に思いつつも、水を汲み終えたので、


「それじゃあ、エトロン。俺の家へ行こうか。」



家に戻ってくると、雪は自然と落ちており、コタンの作業が一つ減った。

それを内心、少し喜びながら我が家の扉を開ける。


エトロンもコタンに続いて、家に入り、興味深そうに中を眺める。


広さは大きな熊が四頭ほど入るくらいだろうか。

決して広いわけではないーむしろ二人で入るには狭いーが、二人でいても居心地は悪くなさそうだ。


「何か食べるか?」


部屋の隅にある貯蔵庫に、今日の収穫物をしまいながら男が問う。


「良いのか?いつ冬が終わるかわからんと言うのに。」


「大したものは出せないが、せっかく女神様が来てくれたんだ。何も出さないのは失礼だろう。それに一人分であればそう変わるまい。」


「そうか。じゃあいただくとするかのう。」


その言葉を聞くと、鉄でできたボウルに二人分の雑穀と、今日とってきたキノコを入れて外にあるかまどに向かう。

エトロンもちょこちょことついていく。

それを見て、コタンは何か言いたそうな様子だったが、結局何も言わず、無言で外へ行く。


朝とあまり変わらず積もっている雪をかき分けかまどの前まで行き、火元を見るため、一旦ボウルをエトロンに持たせて腰を屈ませる。

かまどの横に置いてあった棒状の道具で、昨夜にくべた薪の灰をかき出し、バケツに入れたのち、まだ赤く光っているものだけを取り出して炉に戻す。

そして一旦立ち上がり、夏の間に用意しておいた大小様々な薪を手に取って炉に組む。

そこにしばらく息を吹き込むと、小さい炎が上がり火元の準備は完了だ。


ボウルに、先ほど入れたものに加えて雪を入れてかまどの上にのせて雑穀が煮えるのを待つ。

その間にコタンは先ほどとった灰をゴミ置き場に撒く。

ゴミ置き場には生ゴミなどが捨てられている。冬の間は寒いため、これらはほとんど分解されないが、暖かくなれば肥料になる。

これも幼い頃に両親から学んだ無駄のない生き方の一つだ。 


あとはすることもなく、雑穀が煮えるまで手持ち無沙汰のため、コタンはエトロンに話しかける。


「なあ、さっき『わらわの声が聞こえるものが次に生まれるのは一体いつなのやら』と言っていたよな。」


「確かに言ったのう。」


「最後にお前の声が聞こえたやつはどれくらい前にいたんだ?」


悠久の時を生きる女神が呆れるほど長い時間、自分と話すことのできる人間と出会うことができなかったと言うのだ。

どれほど珍しいのか気になったのだ。


その質問に、エトロンは黄金の目でどこか遠くを見ながら答える。


「そうじゃな。最後に出会ったのは千年ほど前じゃのう。」


「千年。」


言葉にすると軽いが、どれほどの長さなのか想像もつかない。


「その頃のわらわはもっと南の方に住んでおってな。」

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