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季節は神の悪戯か  作者: 迫る騎士鹿丸
第二章:喧騒の街中にて

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第三話

「次の人。」


 長い列に並び始めてしばらく。

 下ってきた山に隠れていた陽光が背中をさすようになった頃に、コタンの検問の番になった。


「はい。」


 呼ばれて小さな小屋の前に行く。

 小屋の中にいたのは鼻が赤い、たいそう髭を蓄えた中年の兵だった。

 コタンが自分と違う人種だと気づいたようだが、ただジロリと見るだけで何も言わず、しわがれた声でコタンに質問をする。


「目的は?」


「交易です。山で狩っていた動物からの皮を売ろうと思い。」


「分かった。ちょっと待っていろ。」


 小屋の中にある棚から小さな紙を取り出し、そこに何やら書くと、


「これが通行証だ。」


 と、通行証を渡してくれた。

 手続きは以上のようで、コタンは受け取ると城壁の内部へ歩き出した。



「あの門番は良い奴じゃったのう。」


「そうだな。」


 コタンも拍子抜けしていた。

 家族、そして集落の人々を殺されたため、多少の恐怖感を抱きながら検問に挑んだのだが、特に何事もなく無事通ることができた。

 この事実が意外で、いまだに心がふわふわしている。


「まあ、この都市の人も変わろうとしているということよ。」


「そうなのかもな。」


「そうじゃよ。」


 コタンはその言葉の声色が真面目だったため、これが、エトロンが数多の人類が作った国家の盛衰を見つめてきて出した結論だということを感じ取った。

 エトロンの表情こそ笑顔だが、茶化せる雰囲気ではなくコタンは黙ってしまう。

 二人はそのまま黙って通りを歩き続けた。


 少し広めのこの道は真昼間だというのに人通りが多く賑わっている。

 通りのすぐ横に並んでいるお店では明るい声で呼び込みをおこなっており、商売が活発なことがよくわかる。


「よく賑わっておるな。」


 先ほどまでの雰囲気を感じさせない調子でエトロンが呟く。

 左右を見渡し、目を輝かせる様子はまるで子供のようだ。


「そうだな。」


 そう返答しながらエトロンの方を見ると、エトロンの体は他の行き交う人の体を透過させながら歩いていた。

 それを見てコタンは目を丸くする。


「それは、どのように体を透けさせているんだ?」


 その質問に、まるでなんでもないことのように答える。


「ああ、これか。わらわの能力、というか神は皆使える力なんじゃが、対象を選ぶことで、その対象物をわらわの体に干渉させないことが可能なのじゃ。」


 例えば、と言いながらエトロンはコタンの体に右手を伸ばす。

 すると、驚くべきことに右手はコタンの胸あたりを貫いた。


「どうじゃ?すごいじゃろう?」


「すごいな。道理で一般人が神の実在を微塵も感じ取れないわけだ。」


「うむ。

 ところで、先ほどからあそこの店から非常に良い香りが漂ってきているんじゃが、寄るわけにはいかんかや?」


「いいだろう。」


 二人は人通りの多い道路を笑顔で並んで歩いて行くのだった。

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