第四話
コタンの交易も無事終わり、二人は先ほどよりも街の中心の方にいた。
「ここでは何を売っているんじゃ?」
「食料品が多いみたいだな。
城壁の近くでは金物や革製品などの工芸品のお店、それから飯屋が多かったんだが、ここら辺の方は住んでいる人が多いからな。そういった人向けの食料を取り扱っているんじゃないか。」
「ふうん。」
「とりあえず、当面の食事のためにここで買いだめしていこうと思ってな。
何か作って欲しいものとかあるのか?」
「またしても難しいことを聞くのう。あまり人間の食事を食べたことがないからな。」
「すまん。悪いことを聞いたな。」
「いや、良い。それじゃあ、とりあえず美味しいものを作ってくればなんでも良いぞ。」
「分かった。」
コタンは冷や汗をかいた。
軽い聞いた質問がことごとくエトロンにとって失礼な内容になってしまう。
気をつけないとな、と心に言い聞かせている間にエトロンは面白そうなものを見つけたようだ。
通り過ぎる人々の体を透けさせて一軒のお店の前で足を止めた。
コタンもそのお店の前へ歩いて行き、エトロンに問う。
「どうしたんだ?」
「これはうまそうじゃな。わらわはここにあるものを使った料理を食べてみたいぞ。」
そのお店は八百屋だった。色とりどりの野菜、果物が置かれており見ているだけで心が満たされそうだ。
「いいぞ、どれがいいとかあるのか?」
「そうじゃな、これとかどうじゃ?真っ赤でうまそうじゃろう?」
ブホッ
エトロンが手に取った野菜を見てコタンは思わず吹き出してしまう。
周囲にいた人たちは一気にコタンに注目する。
コタンは咳払いをして誤魔化すと、エトロンの方を向いて、
「それだけはやめておこう。」
と進言する。
するとエトロンは不思議そうな顔をして、
「なぜじゃ?」
と尋ねる。
「あのだな、その野菜、というか山菜は口から火が出るほど辛いんだ。
冬に食べるならまだしもこれから暑くなるんだろう?」
この言葉を聞いたエトロンはというと、目を輝かせて、
「辛いじゃと!
わらわはまだ辛いという感覚を体験したことがないのじゃ。
なおさら欲しくなってしまったぞ。」
コタンはしまった、と思いながらももうすでに遅い。
「分かった分かった。買ってやるよ。」
と言ってその赤い野菜を手に取りながら忠告をする。
「買うからにはちゃんと食べろよ。」
「分かっておる。」
これを調理するときの地獄を思い浮かべながらも、嬉々としたエトロンの表情を見て、まんざらでもないコタンであった。




