四十話 クレープと金色スライム
いきなりガラス瓶を割って、こっちに飛びかかってきたスライムだけど、シールドにぶちあたってしまって、そのまま悲しそうにくっついてしまった。
「すら……」
かわいそう。だけど、なんかすごくかわいい。
「まったく。油断ができん状態だな」
ギュルディーノ様は、厚手のゴム手袋の上から金色のスライムをシールドからひっぺがした。
やっぱり、なんだかかわいそう。
「すら~。すらら~」
そしてその声もなんだか悲哀を帯びている。
「あの、ギュルディーノ様。この子は鉱石から離れても生きていられるのですか?」
そう。ほかの子はともかく、というか、大量の金色スライムは鉱石に張り付いたまま、これっぽっちも動こうとはせず、みんながみんな、こっちを見ているだけ、というシュールな絵面。
そして、例にもれずそんなスライムの大群に腰が引けているディール様もおかわいらしい。
「どうやら、そのようだな」
「もし、よろしければ、この子にクレープを食べさせてもよろしいでしょうか?」
自分でもふざけたことを言ったなという自覚はある。なにしろ、スライムにクレープを食べさせるなんて、聞いたことがないからだ。
「うむ? こやつが興味を持ったところを見ると、食べさせてみるのもいいかもしれんな。それで、ノゾミの方はクレープがムダになるかもしれんが、それでかまわんか?」
「はいっ!!」
と、いうわけで。
一匹? の金色スライムにできたてほやほやの生クリームを挟んだだけのクレープを差し出してみた。
「すら? すらすらすらら~!!」
ああ、まぁるいお目々がかわいらしいぞ、スラたん。
「す~うらっ!!」
まるで、「あ~んぐつ」とてもい言うように、大口を開けた金色スライムは、たったひと口でクレープを食べてしまった。
「すぅ~ららぁ~!!」
おいしかった、のかな?
丸い目が喜んでいるように見える。
「ほう。スライムは甘党なのか? ほかの個体はどうであろう? ノゾミ。焼いてみてくれないか?」
「はい、喜んで」
そうしてほかの子たちがよだれを垂らしている中、巨大クレープの出来上がり。
どうぞ、とばかりにギュルディーノ様が慎重に鉱石にへばりついている金色のスライムたちに巨大クレープを差し出す。
「すらすら!」
「すらら、す?」
「す~!!」
なにやら仲間同士で話し合っていた後、みんなであ~んと大口を開けて、いっせいにクレープを食べ始めた。
すごい。こう見ると、圧巻だな。
そして、ディール様はクレープだよ、なんて言いながらあとづさっている。
「あら? すると、この鉱石はあまいのかしら?」
ヒトミ様はそう言うと、魔法で鉱石の糖度を測った。
なんと、糖度百五十パーセント。
なるほど、このあまさのおかげで、毒水を処理していたということか!?
すごい大発見をしたあたしたちは、その後クレープパーティーを開いたわけだけど。
ディール様だけは、気分が悪くなったとかで、研究室を後にしたのだった。
つづく




