三十九話 撹拌と金色のスライム
研究室にははじめて入った。
細菌などがスライムを暴走させたり、変異させてはいけないから、きちんとしたクリーンルームで、入室後は浄化魔法と手洗い、それに消毒済みのかっぽう着やビニール手袋。髪はきちんと使い捨てのシャワーキャップをかぶり、顔はフェイスシールドに覆われた状態になる。
あたしはいつもの魔法でちゃちゃっと着替えたけど、やっぱりシャワーキャップなんかは丁寧にかぶらなくちゃ気がすまないし、フェイスシールドなんかも距離感がつかめない状態でいる。
やっとのことで準備がすんだら、いよいよ研究室へ突入。
とは言っても、埃を立てないように、静かに歩く。
現在の魔王様であるギュルディーノ様までがおなじ割烹着姿に見受けられて、たまらなく母性本能がくすぐられる。目の保養完了。
ディール様も、真剣そのものだ。
金色のスライムとやらは、ガラス瓶の中で培養されているみたいに岩石の上で少しも動かない。
目を閉じたまま、なにかを考えているようにも見える。
え~と、スライムって、火炎魔法のほかになにか攻撃できるアイテムがあるんだったっけ?
こんなことなら、ゾーイにもっと色々と聞いておけばよかったな。
「ばあやさん。スライムって、なにを食べるんですか?」
なんとなく小声で聞いてみた。
ばあやさんもつられて小声になる。
「そうですねぇ? あんまり考えたことかないんですよね。それにこの、金色のスライムが毒素を吸収しているのはたしかなのですけど、ほかにどんな生態があるのか、まったくわかりません」
本当に未知の領域。
それに、今は研究の邪魔をしてはいけないから、とりあえずは隅の方でお菓子を作るためにシールドを張ってもらう。
こんな場所で小麦粉が散乱したら大変だものね。
と、言うわけで。
ついにフルーツケーキを作ることにしたんだけど、う~ん、クレープとなぜか迷っているんだよなぁ。
そんなわけで、バアヤさんに意見を聞いてみた。
「う~ん? とりあえずクレープですかねぇ? シンプルにいちごホイップか、チョコバナナあたりはどうでしょう?」
「うわ、それいいですね。やってみます。手伝ってくださいね」
「もちろんですよ、ノゾミ様」
そんなあたしたちには目もくれないギュルディーノ様とディール様。それと、ほかの研究員のみなさま。
クレープ作りは、テンションがあがる。
けど、その前に、生クリームを作らなくちゃ。
てなわけで、白身を撹拌すること数秒。
研究室の中がにわかに騒がしくなってきた。
どうしたんだろう?
「すら? すらすら! すらら!!」
金色のスライムが、目を開けた。そして喋った。
なんか、かわいいぞっ。
そして、思いっきりジャーンプしたスライムその一は、ガラス瓶を割って、こっちに向かってくるではないかっ!!
これはいったい、どうしたことかぁ~!?
つづく




