三十八話 いちご味のマカロン
お粥を食べたら体があたたまって、気持ちが落ち着いてきた。
「どうぞ。ノゾミ様によく似合うマカロンを作りました」
丸いマカロンは、全種類あたたかなカラーでとてもおいしそう。
そんな中であたしは、いつもは一番に手を伸ばさないピンク色のマカロンを手に取った。
お菓子がかりとして魔王城にいるけれど、実際のところ、マカロンなんてめったに成功していない。
このコロンとした可愛らしいマカロンのいちご味に自ら手を伸ばすほどには、ゾーイに恋をしている。
ひと口。
外はカリッと。
内側はもちっと。
あまさの中に含まれた、ほんのわずかな酸味。
「おいしい。ばあやさん。今度マカロンの作り方を教えてもらえませんか?」
「いいですよ?」
ふふっ。と笑いがもれる。
不思議。こんなに胸が苦しいのに、頭の中は、ゾーイで埋め尽くされているのに、あまいものはきちんとあたしをしあわせにしてくれる。
だから、お菓子って大好き。
だから、お菓子を作ろうと決めたの。
ねぇ、ゾーイ。あなたが目を覚ましたら、特大のマカロンツリーで結婚式を挙げましょうね。
それまでに、ケーキづくりも練習しておかなくちゃ。
それに、落雁も。
うん。
食べたら元気が出てきた。
もしここにゾーイがいたら、現金なもんだな、なんて頭を小突かれたりするんだろうけど。
あたし、現金でもいいよ。
ゾーイが目を覚ましてくれるように、研究室のみなさんのためにも、がんばってお菓子を作らなくちゃ。
休んでなんていられないよね。
だから、ゾーイ。
少しだけ力を分けてね。
あたし、がんばるから。
「ばあやさん、研究室に行っていいですよ?」
「でもわたくしは、ノゾミ様のお側に居るのが仕事ですし?」
「そうだ!! なら、あたしも研究室に行ってもいいですか?」
自分がなんて突飛もないことを言ったのかは承知している。
だけど、そうでもしないと、孤独でこころを病んでしまいそう。
だから、あたしもいっしょに研究室に居たい。
まだ行ったこともないし、どんな研究なのかも漠然とわからないけど。
「決して邪魔になるようにはしません。だから、お願いっ!!」
ばあやさんはう~ん? と頭をひねった後、なら、いいですよ、と認めてくれた。
これで、なにかのひらめきにつながるかもしれない。
もし、スライムがあまいお菓子を好きだったとしたら?
それは、とっても素敵なことになりそう!!
そう、まずはスライムと友達にならなくちゃいけないのかもしれない。
そのためなら。
おもむろに小麦粉なんかをかき集めだしたあたしに、バアヤさんがあわてる。
「ノゾミ様、なにを?」
「あたし、研究室でお菓子を作ります!! スライムと友達にならなくちゃ」
「……なるほど。スライムと友達に、ねぇ? わかりました。ならばわたくしめのポシェットをお貸しします。空間魔法付きですので、どんな大きさのものでも無制限で詰め込むことが可能です」
「わぁ! ありがとうございます。空間魔法って、あこがれてたんですよね」
「そうなんですか? なら、このポシェット、さしあげますよ?」
「そんな、高価なものはいただけません!!」
「かまいませんよ。わたくしが付与したものですし。この程度なら、なんてことないですから」
こうしてあたしは、空間魔法のポシェットのなかに、お菓子に必要な材料を次々と放り込むのだった。
惜しむらくは……。
あたしの体も空間魔法みたいに、好きなだけ体重を取り除けたりできたらいいのにな、なんて思いもするのだった。
つづく




