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三十四話 甘味料

「驚いたでしょう? ノゾミ様。ああ、わたくしのことはこれからも()()()とお呼びくださいな。ばあやの姿は世を忍ぶ仮の姿ですから、名前は極秘情報ですの。ほほほ」


 いや、この場面でほほほはないでしょう?


 でも、こう見るとばあやさん。とっても若くて美しくていらっしゃる。


 両手に持つ文化包丁だけがやけにおそろしいけども。


「「わかっていると思うが、オレ様を傷つければカレンが傷つくだけだぞ?」」


 やっぱり、そうなりますよね。でもなぁ。


「ノゾミ様、すぐ出せる甘味はありますか?」

「え~と? 角砂糖なら目の前にあります」

「では、それを頂戴いたします」


 ばあやさん? なにをなさるおつもりです?


 あたしの不安をよそに、ばあやさんはそらきた、とばかりに現在絶賛前魔王に支配されたままのカレンさんを羽交い締めする。

 

「「おのれっ。なにをする!? 離せ」」

「お断りします。わたくしの能力は、相手の魔力を中和して無効にすること。ですのでノゾミ様。今のうちにカレンさんの口の中に角砂糖をたくさんつめこんでください。それでなんとか前王を祓えるでしょう」


 ……そこは、本来塩ではないのかな?


 そして投げ捨てられた文化包丁はなんのために持っていたのです?


 まぁいいや。


 今のうち、とばかりに、みんなで嫌がるカレンさんの口の中に角砂糖を放り込む。


 さらに糖度高めのお紅茶も投入!!


 どうだっ!?


「っはっ!? ここは? わたくしは……」


 嘘のように正気を取り戻すカレンさんの声の向こうで、前王と思われる男の叫び声が聞こえて、少しずつ小さくなって消えた。


「カレン。ずっときみをたすけたかった。時間がかかってごめんよ」


 ディール様のお声で、カレンさんがわっと泣き始めた。


「わたくしは、わたくしは、なんということをしてしまったのでございましょう!?」


 そんなカレンさんをやさしく抱きしめるディール様。おわった、の?


「わかっていたよ、カレン。すまなかったな」

「ディール様ぁ~!!」


 そりゃ泣くわ。よかったね、カレンさん。そして、ディール様。


「これで地下鉱脈水系まで浄化することができるようになった。さすれば、ヒトミが目を覚ますことすら可能となろう。ノゾミよ、よくがんばってくれた。こころから礼を言うぞ」


 そ、そんなぁ。


 恥ずかしい。あたしはただ、角砂糖をカレンさんの口に放り込んだだけです。


「それで、だな。ノゾミ。オレの告白は聞こえていたんだよな?」


 はっ。どさくさでわすれてた。ごめん、ゾーイ。


「それならそれでいいんだが。だますようなマネをしてごめんな。傷つけたよな?」

「べつにいいよ。それに、本来ならもっとかしこまって言うべきだったよね?」


 ムードは大事。


 でもゾーイ。本当にあたしでいいのかな? あたしといると、虫歯になるんじゃない?


 つづく



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