三十三話 命のみなもと
そんな。水脈に毒を流し続けていたのが、前王だけでなく、カレンさんもだなんて。
でも、それとディール様のことが好きというのは話があわない。あまりにも身勝手だよ。
「あのねぇ、お子ちゃまなノゾミ様に教えてあげるわ。ディール様のこころはものすごくピュアなの」
それは、なんとなく知っています。しかも話の流れからすると、よくわからないことになっているのですけど?
「今、わたくしの体の中には二つの魂が混入してますのよ」
「え? どういう意味ですか?」
「前王は滅ぼされる寸前に、わたくしの体の中に魂だけ乗り移ったの。つまり、彼の魂は今も生き続けている。そしてわたくしは、前王の求める器をさがしている、と。これで話がわかるかしら? 好きな人を王様にする。一挙両得とはこのことよ?」
……つまり、カレンさんの結婚相手はすべて器にされる予定だった、と、そういうことですか?
そしておそらく、ゾーイでは役不足であり、ディール様が器として最適、と。
最低な女だなっ!!
「そんなことさせない、と言ったらどうします?」
「そうしたら、あなたを始末するまで。どちらにしても、ここまで話をしたからには……」
カレンさんの体がぐらりとかしいだ。
そして、カレンさんの後ろに、前王と思われる男の姿が見えた。
「「貴様なぞ、簡単に始末できるからな。言ったろう? オレ様はあまい食い物が大嫌いだと。だが、カレンはちがう。カレンの器から早く出てしまわないと、オレ様が完全に消されてしまうのだ」」
じりっと、嫌な汗がにじみ出る感じがした。
これはまずい。
カレンさんの体は、前王に乗っ取られてしまっているのか?
それと聞いたからには、あまいものでカレンさんだけをおびき出すしかない。
でも、どうやって?
ひゅん、と空間がゆがんだ。
瞬間移動?
ギュルディーノ様!?
「遅れてすまなかったな、ノゾミ」
ギュルディーノ様、それにディール様に、ゾーイ、そして、ばあやさんも!?
「何事も言質を取らぬかぎりは攻撃できんのでな」
そう、だったのですか?
では最初からギュルディーノ様は気づいていらしたと?
ゾーイも知っていて加担してたの?!
ウソでしょぉ。
って、それどころじゃないっ!!
「そういうことだから前王よ、ボクのたいせつなカレンを返してくれないか?」
ディール様。全部知っていたのに、それでもカレンさんが好きなの?
「へん。ちぃとばかしノゾミに危険なことをさせすぎちまったな。オレは最初から、ノゾミのことが好きだったんだぜ? 菓子だけじゃなく、ノゾミ自身のことをも、な」
ゾーイ!!
ちょっとお。このタイミングでなんてことを言うのよう!?
「さてと。恥ずかしがられてばかりいたのではかなわないからな。ノゾミは少しばかり下がっていたまえ」
うわっ。戦闘態勢だ。
そしてなにげにばあやさんが若返っていらっしゃる!!!
つづく




