三十一話 カルメ焼きはお好き?
「いや、そのぉ~。カルメ焼き食べます? すぐできますので」
「そうやってまたごまかすつもりですの? ノゾミ様にとってのゾーイはその程度の男? ディール様はその程度の都合のいいお方? はっきりお答えくださらなければ、わたくしは全力でノゾミ様の結婚を阻止しますわよ?」
……結婚はしないのだけども。
あのさあ、もう少しだけ冷静になれない?
「わたくし、太りやすい体質ですの。だからお菓子なんて大嫌い。だから、ポンコツなディール様が好き。ずっと前から好き」
……あの?
うん?
告白?
すると、ゾーイはあて馬ということ?
「薄々感づいてらっしゃるでしょうけれども。ゾーイはヤキモチを焼かせるためだけの存在。ほかの男たちもそうだった」
いや。
ですから、ディール様もカレンさんのことが好きなのに?
なぜ、わざわざこじらせると?
ああ、わかった。
カルメ焼きがほんの少しだけ苦味を感じるように、恋にも苦味を感じたいタイプだったりするのかな?
しかし、ポンコツなディール様が好きって、それはあんまりなのでは?
「もちろん、今のことはすべて誰にも話さないでちょうだい。そのかわり、ゾーイのことはあきらめてあげる。だからわたくしにディール様を返してくださいな?」
カチンと、頭の中でなにかが弾けた。
どうしてカレンさんは、人間を物のように扱うことができるのだろう?
そんな風だから、ディール様が困っていらっしゃるのに、どうしてそんな簡単なことにも気づかないのだろう?
「あたしとディール様の場合は、偽装です。カレンさんは、ディール様のお気持ちを考えたことがありますか? ゾーイのやさしさに気がついていますか? あたしをバカにするだけならいい。だけど、人間をスライム以下に思うのはやめてください。そんなのは、みなさんに迷惑ですっ!!」
つい感情に任せて口を開いてしまったものだから、全部バラしてしまったけど。
「カレンさん、ディール様が好きなら好きと、はっきり言ったらいいじゃないですか!? どうして話をこじらせるのですか?」
「だってぇ。簡単に手に入ったらつまらないじゃないですか」
はぁっ!?
もう怒った。
「カレンさんなんてキライです!! お菓子を好きになるまで、ここに来ないでください」
「あらぁ? わたくしにそんなことが言える立場ですのぉ? だってぇ、わたくしたちのおかげで、ノゾミ様はここにいられるのでしょう? 養鶏場の、くっさいお嬢様」
はぁ~。
なんか、話しているだけで疲れてきた。
もしかしてカレンさんって、常にバトルしていたい性格なのかしら?
だまされたゾーイやほかの男の人もおろかだけど、それを見抜けなかったあたしもおろかだわ。
カルメ焼きを作ってすらいないのに、なんだか口の中が苦くなってきたよ。
つづく




