二十七話 お抹茶、さすがだぜ
「あぁ~ら、やだ。失敗しちゃったわぁ~」
うん?
なにやら厨房からばあやさんの声が響いてきたぞ。
なんだろう?
と、そこにはぁ~っ!!
「すみません、ノゾミ様。昨日のレモンケーキをできたてに加工しようとしましたら、大失敗してしまいましたの」
……ばあやさん?
それは、なに?
「お抹茶の粉が余っておりましたので、抹茶味のなにがしかにしようとしましたら、これ、このとおり」
いや。
そうではなくて。
このとおりって。
どうみてもこれって、お抹茶のシフォンケーキなのでは?
「おお、これはうまそうだな」
そう言うなり、いきなりギュルディーノ様がシフォンケーキをひとかたまりわしづかみにした。
そんなにお腹が空いていたんですね。
「うむ。美味だな」
ばあやさん、グッジョブ。
あたし、今回は負けました。
てなわけで、みなさんと急きょ試食会。
お抹茶のシフォンケーキをレモンスカッシュで流し込みながら、三日前からの攻防について、話がはずんだ。
なんでも、地下水脈を調べていたら、不吉な色の鉱脈を見つけたらしい。
不吉な色っていうのは、いわゆる綺麗な色ではなくて、玉虫色に輝いているから、つまり、みなさんが嫌いな例の害虫を思い浮かべてしまうわけであり。
「その鉱脈のことは、ジー鉱脈と呼ぶことにしたのだ」
そのまんまですかいっ。
「ジー鉱脈付近の水だけが、なぜか毒を感じなかったのだ」
え?
そんな不吉な色なのに?
「なので、少しばかり採掘しようとしたところ」
と、言いかけて、ギュルディーノ様は空間魔法で玉虫色の大きな鉱石を取り出した。
で、でかいぞ。
「なんと、この鉱石の下に大量のスライムの巣があった」
ぴぃぃっ!!
と、悲鳴をあげるのは、スライムが大嫌いなディール様。
「それで、全部焼き払うのも忍びないので、数匹連れ帰った。今、出してもよいか?」
「だめです、ギュル兄様。親しき仲にも礼儀あり、です」
まさに瞬殺。
「冷凍保存してあるのにか?」
「冷凍ですか? 本当に?」
ああ、と言って、空間魔法からなにかを引っ張り出そうとしたところを、ディール様が必死に押しとどめた。
「だが、そのスライムも不思議なのだ。黄金色のスライムなんて、ここら辺で見たこともないだろう?」
黄金色のスライム?
と、みなさんで頭を抱える。
黄金色のスライムなんて、あたしは見ることすらないけど、珍しいのかな?
「ギュル様。出過ぎたまねですが、わたくしはそのスライムを見とうございます」
カレンさんは即答した。
この人、なんでもお金に変換していそう?
「オレもかまいませんぜ。よくないものならいつでも燃やしますし?」
ゾーイまでが乗り気だけど。どうしてそこで、カレンさんがゾーイの手柄を横取りするように腕を組むかな?
「み、みなかそこまで言うのでしたら、仕方ありません。ボクは後方支援ということで」
なんて、腰が引き気味のディール様が、あたしの手を素早く取って後ろに下がった。
視線で殺されそうなほどの熱を感じたのは、カレンさんからだ。
なんだよぅ。
カレンさんにはゾーイがいるじゃないですかぁ。
「では」
ピカーン。
そんな効果音がつきそうなほどに、そのスライムは凍結されていた。
しかし、金色ではなく、お抹茶色なのだった……。
つづく




